表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~  作者: 月輪林檎
可愛がられる聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/122

帰宅の日

 それからさらに一ヶ月経った。その間、毎日のようにマーガレット達が泊まりに来ていた。だが、毎回二人で来るという訳では無く、どっちか一人の時もあった。

 二人に囃し立てられてから、クララがリリン達に告白するという事はなかった。マーガレット達もあれから囃し立てるという事もなかったので、それ以上進まなかったのだ。

 それ以外で言えば、クララの美術と裁縫がかなり上達した。そして、約束通り音楽も教えてもらい、簡単な曲であれば弾けるようになった。まだ、人に聴かせられるような演奏ではないが、楽しむ分には丁度良かった。

 そして、今日はマーガレットとユーリーが元の街に戻る日だった。本当は、後一ヶ月いるつもりだったのだが、手紙で早く帰ってくるようにと言われてしまったため、帰る日を繰り上げざるを得なかった。


「せめてもう少し一緒にいたかったんだけど、これ以上空けたままに出来ないみたいで、ごめん」

「でも、また来る。あれだったら、クララが私のところに来ても良い」

「ああ、確かに、それも有りか。良いでしょ、お母さん?」


 マーガレットとユーリーは、カタリナにクララの外出許可を求める。


「まぁ、二人がいる街なら城もあるし良いかしらね」

「やった! それじゃ、寂しくなったら、いつでも私の所に来てね」

「姉さんの所より私の所の方が良い」


 そう言うと、二人は睨み合った。そんな二人にカタリナの鉄拳が振り下ろされる。


「全くくだらない事で喧嘩しない! どっちかしか行かないわけじゃないんだから」


 脳天の痛みに、しばらく二人は悶えていた。


「そ、そうだ。もし興味があったら、そこの美術館にお願いして、クララの作品を飾らせて貰ったら? そのくらいの作品は描けるようになっているし、ある意味クララ自身が溶け込んできているってアピールにもなると思う。美術館が嫌だったら、小さなところ借りて、個展でも良いし」

「うん。服やぬいぐるみを飾るのも有りだと思う。元々は趣味の範囲内って話だったけど、売り物に出来るくらいの実力になってるから」

「えっと考えてみます」

「もしあれだったら、私達と共同でも良いしね。クララがやりたいって思ったら連絡して」

「はい」


 クララとしては、趣味の範囲内で終わらせるつもりだったが、マーガレット達に誘われて、少し興味を抱いていた。だが、まだ自分の作品を不特定多数に見せるのは、緊張してしまうので踏ん切りは付かなかった。


「それじゃあ、そろそろ行くから」

「あ、はい。お世話になりました」


 クララがそう言うと、マーガレットとユーリーは、きょとんとした後、二人で揃ってクララの頬を摘まんだ。


「そうじゃないでしょ」

「お姉さんに対して言う事と言えば?」


 若干困惑するクララだったが、二人が言いたい事を理解する。


「あっ、えっと……またね?」


 クララがそう言うと、二人は満足したように笑い、二人でクララの両頬にキスをする。


「またね」

「うん。また。あ、それとこれ」


 最後にユーリーはクララに手紙を渡す。


「私達が帰ったら、読んで」


 そう言って二人は馬車に乗り込む。そして、ナイトウォーカーが動き出し、馬車が進んで行く。二人は、窓から上半身を出して、クララに手を振った。

 クララも二人が見えなくなるまで手を振る。


「久しぶりに騒がしい毎日だったわ。あの子達がいないとなると、少し寂しくなるわね」

「そうですね。でも、また会えます」

「そうね。近い内に遊びに行けるように調整しないといけないわね。でも、しばらくは、元の生活を送りなさい。しばらく運動もしていなかったんだから」

「はい。分かりました」


 クララは、嫌そうな顔をしつつも素直に頷いた。また太ってきたという程ではないが、ぶくぶくになるのは嫌だからだ。


「講義も再開するから、魔法の復習を忘れないようにね」

「あ、はい!」


 すっかり講義の事を忘れていたクララは、しっかり復習しないといけないと思い、やる気を出す。

 その後、部屋に戻ったクララは、椅子に腰掛けてユーリーから貰った手紙を読む。


『布と糸が欲しくなったら、私の部屋を使って良い。姉さんも部屋にある画材は勝手に使って良いと言っているから、気にせずに使って』


 短くそれだけ書かれているかと思いきや、手紙の下の方に、


『早く告白しちゃえ』


 と書かれていた。クララはとっさに手紙をくしゃっと丸める。


「クララさん。何が書いてあったかは分かりませんが、頂いた手紙を粗末にするのはよろしくないと思いますよ?」

「良いんです。姉妹だから、このくらい当たり前です」


 クララは頬を膨らませながらそう言って、ベッドの横にある棚に手紙を放り込んだ。


「おぉ……クララちゃんが珍しくご立腹だ」

「それだけ姉妹として打ち解けたという事でしょう。喜ばしい事です」

「そ、そうなんですかね……?」


 リリンはクララの成長を喜んでいるが、サーファは、この成長は良いのかと困惑していた。

 クララは、マーガレットとユーリーという自身の姉となる存在に出会った。この出会いは、クララの人生をより華やかに彩る事になる。

 だが、クララの知らないところで、この幸せな日々に暗雲が立ちこめてきていた。クララの人生の中で、最大規模の争いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ