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攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~  作者: 月輪林檎
可愛がられる聖女

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姉妹水入らず

 そうして二人から合格を貰い、後は色々と教わるだけとなった日の夜。もう寝ようとベッドに入るクララの元にマーガレットとユーリーがやってきた。二人とも寝間着だ。


「おっ、まだ起きてたか」

「クララ。一緒に寝る」

「え!?」


 唐突に来て一緒に寝ると言われたので、クララは驚く。同じく何も聞かされていなかったリリンとサーファも驚いていた。


「お二人なら大丈夫だと思いますが、クララさんは如何ですか?」

「私も構いませんけど……」

「じゃあ、決まり」


 ユーリーはそう言うと、クララの隣に座る。マーガレットも同様にベッドに腰を掛けた。


「では、お二人にクララさんは、お任せします。行きますよ、サーファ」

「あ、はい。クララちゃん、おやすみ」

「あ、おやすみなさい」


 クララの事をマーガレット達に任せて、リリン達は自分達の部屋に戻っていった。戸締まりの方の確認は済ませてある。


「さて、邪魔者もいなくなった事だし、姉妹水入らずで、ちょっと話でもしよう」

「私、姉妹じゃないですけど……?」

「クララは姉妹。血の繋がりだけが姉妹の証と思った大間違い。絆を結べば家族になれる」


 ユーリーはそう言って、クララにぴったりとくっつく。同時にマーガレットもくっついた。


「そうそう。結婚だって、他人同士が家族になるわけだし、私達が姉妹って言っても、別に問題ないでしょ。それとも、クララは私達と姉妹になるのは嫌だ?」

「あっ、いえ! 全然嫌じゃありません!」


 前に妹みたいなものと言われた時、クララはとても嬉しかった。そんなクララが、二人に姉妹になろうと言われて、嬉しくないわけがなかった。


「それじゃあ、私達は今から姉妹って事で。誰かに苛められたら、自分の姉はマーガレットとユーリーだぞって言って良いから。私達もそこそこ有名だからね。それで怯むやつの方が多い」

「それって信じて貰えたらの話になりますよね?」

「確かに。それは穴だった。じゃあ、触れを出そう」


 ユーリーがそんな事を言い出す。


「触れは良いアイデアかも。明日、早速お母さん達に相談してみよ」

「お触れって、そんな風に使って良いんですか?」

「クララの近況なら、全然良いでしょ。かの魔聖女の情報なら聞きたいって思うだろうし」

「クララは完全に魔族の味方。そういう考えが広がっているのも、お触れのおかげ。それを強調させる事になるだろうから、普通に使って良い」

「魔王の特権だしね」


 それは本当に良い事なのかと不安になるクララだったが、いきなりユーリーに持ち上げられ膝に乗せられた事で意識がそっちに移った。


「あっ、ズルい」

「姉さんはこの前してた。これは平等」

「まぁ、仕方ないか」


 マーガレットは素直に納得した。


「それにもしても、姉さんは厳しすぎ」

「ん? ああ、課題の事? だって、そうじゃないと成長出来ないでしょ?」

「クララならそれでも成長出来る。実際出来た。努力の出来る子」

「それは分かってるっての!」


 マーガレットはそう言いながら、クララとユーリーをベッドに押し倒す。力そのもので言えば、マーガレットの方が上のようで、ユーリーも抵抗出来ず倒された。


「馬鹿力」

「魔法馬鹿」


 クララを挟んで、二人の喧嘩が始まる。クララに影響のないようにやっているが、二人の胸部分に顔があるのでマーガレットのせいで押し潰されていた。普段からサーファで慣れていなければ、どうしようもなかっただろうが、既に慣れているので普通にしている。

 そんなクララに二人が気付く。


「そういえば、クララって喧嘩したことあるの?」


 喧嘩を止めたマーガレットがそう訊く。


「喧嘩……喧嘩……」


 クララは自分の過去を振り返るが、喧嘩らしい喧嘩をした覚えが全くなかった。


「特には」

「まぁ、喧嘩弱そうだしね」

「クララは温厚」


 クララが喧嘩をしたことがないという事にマーガレット達は、あまり驚きはなかった。


「ふぁ……さすがに、三徹はやり過ぎだったかも……」

「えっ!? 三日間も寝てなかったんですか!?」


 今まで普通にしていただけに、三徹という言葉を聞いて、クララは衝撃を受けていた。そんな状態で講座も出来ていたのだから、余計に驚きだ。


「三日ぐらいなら眠いくらいで済む。五日目とかになると、若干記憶が怪しくなるけど」

「分かる。気が付いたら、服が出来上がっている時がある」

「ユーリーさんも徹夜しているんですか!?」

「私は偶に。姉さんはしょっちゅう」

「嘘。ユーリーだって、徹夜ぐらいしてるでしょ」

「してない。一、二時間でも寝てる」

「それで、ちゃんと休めているんですか?」

「問題ない。それより、クララはしないの?」


 ユーリーはクララが徹夜しないのか興味があった。もしかしたら、自分と同じかもしれないと思ったからだ。


「夜更かしはしますけど、徹夜はしないです。起きる時間が遅くなったら、リリンさんにキスで起こされちゃいますから」

「え? それって、クララには、ご褒美でしょ?」


 マーガレットにそう言われた瞬間、クララの顔は真っ赤になる。それを見たマーガレットとユーリーは互いに顔を見合わせて、目を光らせた。


「おやおやおやおや、クララは、本当にリリンが好きなのか」

「可愛い」


 クララはさらに顔を真っ赤にして、目の前にあるマーガレットの胸に顔を突っ込んだ。そうすれば、自分の顔を見られないからだ。


「もしかして、サーファも好きなの?」

「サーファさんは、その……」


 クララはマーガレットの胸の中で目を泳がせる。


「ふむふむ。一番はリリン、二番はサーファって事ね。そりゃ、あれだけ世話されたら、好きになるのは無理もないか。可愛く乙女してるじゃん」

「恋する乙女。可愛い」


 ユーリーは、クララを抱き寄せて、マーガレットの胸から出す。そのせいで、紅潮させているクララが丸見えになる。


「いつ告白するの?」

「確かに、それは気になる」


 そう言って二人が、クララをジッと見る。クララは視線を逸らす。


「今はまだ」


 クララはそう答えるとその場で回転してユーリーくっつく。マーガレットと違って顔を完全に隠せはしないが、ちょっとは見えなくなる。だが、それを許すほど、マーガレットたちも甘くない。今度は、マーガレットがクララを抱き寄せて、ユーリーから離す。普段喧嘩をしているというのに、こういうときの連携は良い。


「寿命で言ったら、クララの方が短いんだから、早めに告白してイチャイチャした方が良いと思うけど」

「普段よりも、もっと近づける。良い事づくし」

「でも、お二人にご迷惑を……」


 クララがそう言うと、マーガレットとユーリーが、同時に笑った。


「迷惑って本気で言ってる?」

「あの二人が迷惑に思っているなんてあり得ない」

「でも、二人一緒は……」

「重婚なんて珍しい事じゃないし。サキュバスやインキュバスは、当たり前のように重婚しているし」

「うぅ……」


 逃げ道をどんどんと塞がれるクララは、何も言えなくなってしまう。


「自分の気持ちに正直になった方が楽。愛しているのなら、特に」

「大好きなんでしょ? 愛してるんでしょ? なら、気持ちを伝えなきゃ。私達みたいに相手がいないわけじゃないんだし」


 二人からそう言われて頭がパンクしたクララは、そのまま意識を手放した。


「あら、寝ちゃった」

「もう日が変わりそうだし、おかしくはない」

「まぁね。ちょっと追い込みすぎたかな?」

「そうかもしれない。でも、そのくらいしないと、この子は行動に移せないと思う」

「まぁ、遠慮してる感じはあったしね。ふぁ~……私達も寝よ」

「うん……徹夜は眠い」


 二人は、クララを挟んで仲良く三人並んだまま眠りについた。

 三人が寝息を立てて少しした頃、鍵を掛けたはずの扉が開いた。扉から現れたのは、写影機を持ったカタリナだった。


(三人が並んで寝ているところを逃す私じゃないわ)


 三人を起こさない様に近づき、三人の寝顔を三枚程撮る。徹夜をしていて深い眠りに落ちていた二人とただただ深い眠りに入っていたクララは、そのフラッシュに気付く事もなく寝ていた。


(これ以上は起こしてしまうかもしれないわね)


 カタリナはそう判断して、部屋を出て行こうとする。だが、そんなカタリナをジッと見ている影があった。


「!?」


 カタリナは、思わず声を上げそうになったが、ギリギリのところで飲み込んだ。そこにいたのは、寝間着のリリンだった。

 二人は一緒に部屋の外に出る。


「一体何をされていたのですか?」


 夜中にクララの部屋に侵入していたという事もあり、リリンから質問される。


「せっかくだから、三人の寝顔を写真に撮っておきたかったのよ。親として、当然のことでしょう?」

「そういう事でしたか。ですが、あまり怪しい行動はされないようにお願いします」

「分かったわ。それよりも見て。私の娘達、可愛いと思わない?」


 カタリナはそう言って、さっき撮った写真をリリンに見せる。


「そうですね。そう思います」

「でしょ? あなたにも一枚あげるわ。クララちゃんの写真は欲しいでしょ?」

「ありがとうございます」


 リリンはカタリナから写真を受け取る。


「それじゃあ、また今度ね」


 カタリナはそう言って、楽しげに自分の部屋へと帰っていった。


(またクララさんを誘拐されるかもしれないと思いましたが、カタリナ様で良かったです)


 リリンも安堵しながら自分の部屋に戻っていった。その際、クララの寝顔写真を見て、小さく笑った。

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