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攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~  作者: 月輪林檎
可愛がられる聖女

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課題の結果

 それからの一ヶ月間。マーガレットとユーリーの講座と薬室での作業の日々を送っていた。薬室に関しては、新しい薬草もないので、これまでの薬の量産が主となった。そして、何よりもアリエスが一人でも十分に薬室を回せるようになったのが大きかった。これ以上の業務が増えれば、さすがに回らなくなりそうだが、現状は大丈夫そうだった。

 マーガレットとの美術教室は、かなり順調に進んでいる。最初の方は、自分が好きな風景を模写していく。カタリナから許可を貰い、街の外に出ての講座となった。講座という名目がなければ外出許可は出ないが、それでも街の外に出られたので、クララのテンションはかなり上がっていた。

 そして、後半は人物模写をしていった。基本的には、リリンやサーファ、マーガレット、ユーリーがモデルとなっていたが、時折カタリナやガーランドもモデルになった。クララが描いた自分達の絵を貰ったカタリナとガーランドは、額に入れて執務室に飾った。

 彫刻に関しては、版画から始める事になった。マーガレットが下書きした板を削るというだけだったが、それでもクララは楽しそうにしていた。

 風景画も人物も彫刻も、順調に上達していた

 ユーリーとの裁縫教室も順調に進んでいた。マーガレットとの美術教室の成果がここでも発揮される事になった。それは、服のデザインを考える時に発揮された。最初は、ユーリーがデザインした服をクララが縫っていくという方式だった。ユーリーが一から丁寧に教えて、付きっ切りで見てくれるので、大きな失敗はなかったが、ユーリーが作るようにはいかなかった。

 それでもどんどんと上達はしていき、後半はクララ自身がデザインして服を作るようになった。デザイン自体が初めてなので、そこまで良い物にはならなかったが、自分が描いた物が現実になったので、クララは嬉しそうにしていた。

 ユーリーからのアドバイスと貰った服を見て、勉強していき、そこそこ良い服に見える物を作れるようにはなっていた。

 ついでに、ぬいぐるみ作りも教わって、小さなぬいぐるみも作った。これは、ちょうど薬草を届けるついでにクララに会いに来たサラにプレゼントされた。

 そして、マーガレット達が帰るまで、一、二ヶ月と迫ってきたところで、クララは本格的に課題に取り掛かる事にした。


「う~ん……不合格!」

「うぅ……」


 課題に取り掛かって、二週間。クララは、マーガレットから合格を貰えていなかった。


「リリンとサーファらしさが薄い。ただ見た目の特徴だけ再現しても駄目。クララから見た二人は、本当にこんな感じだった?」

「そう言われると、少し違う気もします」

「二人だって分かるくらいにはなっているから、後は、二人を完全にここに閉じ込めないと。クララにとっての二人を意識してみる事」

「はい」


 マーガレットは、ただ不合格というのではなく、きちんと駄目だと思った事を口にしていた。おかげで、段々と改善はされているのだが、それでも不合格なのだった。

 ただ、ユーリーの課題であるリリンの服に関しては、早々に合格した。クララが作ったのは、白い半袖のワンピースだった。特徴的なのは、白いフレアスカートの上を黒い布が軽く覆った二層構造になっている。リリンにただの白いワンピースというのは、物足りないと考えたクララは、敢えて反対の色をスカートに混ぜる事にしたのだ。それでも普段のリリンとは雰囲気が異なるが、リリンの魅力を引き出していた。


「うん。良い。丈もぴったり。二重になってるのと黒で涼しげな感じが薄れるかと思ったけど、そこも工夫してある」


 上から覆っている黒の布は、ワンピースよりもかなり薄い生地になっている。そのため、下の白が少しだけ透けている。


「リリンは何かある?」

「いえ、特には。動きの阻害などもありませんし、風が通りやすいからか、涼しいです」

「要望にもしっかり答えられてる。合格。良く出来ました」


 ユーリーは、優しくクララを撫でる。リリンが喜んでくれた事に加え、ユーリーからも褒められたので、クララはとても嬉しかった。


「それじゃあ、どうせだから次はサーファの服を作ろう。リリンのよりも難易度は高い」


 一つの課題が終わったと思えば、新たな課題が出て来た。リリンとは身体のサイズが違うサーファの服を作る。特に一部分は本当に大きな差があるので、クララも苦戦するであろうと思われる。


「頑張ります!」

「うん。それじゃあ、サーファの身体を隅々まで調べよう。リリンにもやった採寸をして」

「はい」


 クララは、サーファの採寸を行っていく。胸のサイズを調べた瞬間、若干悲しくなったクララだったが、それでもちゃんと調べていった。


「サーファさんは、どんな服が良いですか?」

「う~ん……リリンさんやクララちゃんと同じような白いワンピースが良いな。私らしさある感じで」

「サーファさんらしい白いワンピースですか? う~ん……」


 クララは早速サーファの服を考え始めた。デザインを書き起こしていく度に、ユーリーからアドバイスを受ける事で、少しずつ形にしていった。

 そうして、一週間掛けて、サーファの服も完成する。胸の部分をゆったりとさせて、サーファでもきちんと着られるようにしてある。さらに、胸元はきちんと覆って外に出さないようにしていた。半袖で暑い日に着られるようにしてある。そして、全体的にフリルを付けて、可愛さを強調している。ただ、あまり付けすぎると子供っぽくもなってしまうのでは、少し控えてはいた。


「わぁ……可愛い! ありがとう、クララちゃん!」


 部屋の姿見で自分の姿を見たサーファは、自分好みの服に喜び、クララを力強く抱きしめた。


「わぷっ……き、気に入ってくれて良かったです」

「サーファも気に入ったのなら、合格。後は、数を作ってもらう。寒い日に備えた物から」

「分かりました」


 裁縫に関しては、これで完全に課題が終わった。ここからは、ユーリーが教えられる事を詰め込むという事になる。

 後は、マーガレットから合格を貰いたいところだが、マーガレットはそこまで甘くなかった。段々と良くなっているとは言われるのだが、まだ合格まではいかないのだ。


「もっと、クララの中の二人を表現してみて。クララにとって、二人がどういう存在なのかそれが分かるように」

「二人がどんな存在か……」

「この表現力が一番重要だから。クララには、それが出来る。これまでの絵で、それは分かってるから」

「分かりました」


 クララは、マーガレットから言われた事を反芻しながら、紙と向き合う。


(私にとっての二人……私にとっての二人……恩人。友人。好きな人? 傍にいて欲しい人。家族みたいな人。掛け替えのない人。うん。私とっての二人が分かってきたかも。でも、それをどうやって絵にしたら良いんだろう? 笑顔の二人? それは描いた。でも、駄目だった。後は……何があるかな? 私にとっての二人。いつもの二人……)


 そこまで考えたところで、クララの筆が動く。今日こそ、マーガレットから合格を引き出すために。

 それから二時間後。クララは出来上がった作品をマーガレットに渡す。マーガレットは、それをジッと見る。クララに緊張が走る。


「う~ん……合格!」

「やった!」


 クララは嬉しくて隣にいたサーファに抱きつく。


「良かったね」

「はい!」


 サーファは、優しく抱きしめ返しながら頭を撫でてあげた。


「まさか、ここまで完璧な形で仕上げてくるとは思わなかった。本当に良い作品」


 マーガレットはそう言うと、絵をリリンに渡す。受け取ったリリンは、サーファと一緒に見る。そこには、クララの後ろ姿とそのクララを抱きしめるリリンとサーファの姿があった。

 それを見て二人は、無言でクララを抱きしめる。


「無事課題に合格した事だし、後は色々な技法とかを教えつつ、私が出すお題を絵にしていってもらうから。今回よりは厳しくないから、そこは安心して」

「楽しみです」


 ようやくマーガレットからも合格を貰えた。実は、この後、裏でリリンとサーファのどっちがクララの絵を貰えるかコイントスで勝負していた。結果、絵を獲得したのは、サーファだった。厳正な勝負の結果なので、リリンも文句は言わなかった。

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