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攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~  作者: 月輪林檎
可愛がられる聖女

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マーガレットの美術講座(3)

 マーガレットの部屋に戻ったクララ達は、彫刻エリアの前に並べられた椅子に座る。マーガレットは、その前に立っていた。


「さて、彫刻に関しては、最初から初心者に任せると、怪我する恐れもあるから、まずはしっかりと見てもらう。分かった?」

「はい」

「今回は、このクララとほぼ同じ大きさの石を削って、クララを作る」

「わ、私ですか!?」


 何を作るか気になっていたクララだったが、まさか自分とは思っておらず驚いた。


「まぁ、せっかく見学してもらう訳だから、喜んで貰えるものにしたいから。一体くらいなら良いでしょ?」

「そうですね」


 リリンからの許可も得た事で、今回作るクララはクララへのプレゼントという事になった。


「何か、自分大好きみたいに思われませんか?」

「クララさんの部屋に来る方は限られているので、大丈夫だと思います」

「それじゃあ、許可も出たから早速彫っていくよ」


 そう言って、マーガレットはノミとハンマーを持って、石を彫っていく。一回で、かなり大きく削られているのを見て、クララはさっきよりも驚いていた。


「あんなに削れるものなんですね」

「あれは、マーガレット様だからですね。龍族の力は、身体強化したサーファよりも上になりますから」

「えっ!? そうなんですか!?」

「うん。そこは最強の種族だからね。私達獣族の強い人が身体強化して、素の状態の龍族に並べるって感じかな」

「へぇ~……じゃあ、サーファさんでもあそこまでは削れないんですね」

「うん。多分、無理かな」


 マーガレットが最初から大きく削れる所以は、龍族の膂力にあった。だが、その他にリリンすらも気付かなかった事がある。それは、マーガレットの感覚だ。どこをどの方向から打てば、どのくらい削れるのか、それを感覚で感じ取り、自分が削りたいように削っているのだ。何かを計算しているわけではないので、本当に感覚だけでやっている事だった。

 これを知れば、やはりマーガレットもユーリー同様天才の分類だと再認識出来ただろう。だが、クララ達の中で、これに気付ける者はいなかった。

 ただマーガレットが石を削る姿を二時間見続ける。だが、それでもクララ達は退屈することなく、段々とクララの形に整っていく石を見ていた。


「そういえば、マーガレットさんは、ユーリーさんと違って、魔法を全然使わないんですね。魔道具も見当たりませんし」

「ん? ああ、魔道具は、向こうのアトリエにはあるけど、確かにあまり使わないかな」

「何か理由があるんですか?」

「う~ん……自分の感覚でやっている感じだから、手を通してやった方が良い物が出来上がるって感じかな。後は、一つの作品に入れ込むからってのもあるかも。ユーリーは、自分の頭の中を全部形にしたいってのがあるから、魔法で数を作っているんだと思う。それでもあの精度で服を作れるのは、かなりおかしいけど」


 ユーリーの場合、魔法での大量生産をしても、品質が一切落ちない。マーガレットが作品に魔法を使えば、ある程度の品質低下は免れない。


「私ももう少し器用だったらねぇ」

「十分器用だと思いますけど……」


 もう既にクララの形は完成していた。現在やっているのは、最後の仕上げである研磨だ。


「器用と言えば、やっぱりクララかな。今のところ、裁縫も絵画もちゃんと出来ているしね。ちょっと器用貧乏になりそうだけど、趣味の範囲内だし、別に良いか」

「そうですね。マーガレットさんやユーリーさんみたいに商売にする気はないので、大丈夫だと思います」

「その内売れるようにはなると思うけど。まぁ、それは置いておいて、これで完成」


 そう言われて、クララは椅子から立ち上がり自分の石像に近づく。


「おぉ……私がもう一人いる」

「凄い。石なのに、肌がクララちゃんみたいに柔らかそう」

「そこにクララさんがいるようで、不思議な気分です。さすがです」

「褒めてくれて嬉しいけど、私としては六十点くらいかな」

「えっ!?」


 クララとしては百点なのではと思っているのだが、作った本人の評価は低かった。


「どうしてなんですか?」

「まず、現実のクララの可愛さを表現し切れてない。これは、私が選んだポーズとかのせいもあるから、そこ再考出来る。それとこの石像は服が分厚すぎる。道具と時間の問題だから、これはすぐに解決出来る。本当はこのローブの内側もある程度彫りたいところなの。出来ればパンツまで表現出来れば最高って事。これが、点数が低い理由かな」

「最後以外は理解出来ました。じゃあ、これは未完成品という事ですか?」

「そういう事。ただ、これでも十分に売れるけどね。そのくらいの作品ではある」


 マーガレットとしては、もっと拘れる部分が残っているが、商品としては十分な品質がある。


「こういうところが、大量生産に向かない理由かな。性格的に、完璧にして出したいっていうのが強くてね。このクララは、気になる場所を全部直してから贈るから」

「はい。パンツまでは再現しないで良いですよ」

「そこは贈った時の楽しみね。それじゃあ、今日はここまで。これ以上やると遅くなるから。今回は自由にやって貰ったけど、練習するなら自分の部屋を描いてみると良い。角度によって、見えるものが違うから、練習になる。その時は鉛筆を使ってね」

「分かりました」

「今日はお疲れ様。彫刻に関しては、最初から今日みたいな事はさせないから安心して」

「あ、はい。分かりました」


 クララ自身、こんな風に作れるのか不安になっていたが、最初は石じゃないと聞いて安心した。それでも彫刻に関しては、これまでと別物という印象を受けていた。


「じゃあ、また」

「はい。ありがとうございました」


 こうしてマーガレットの美術講座初日が終わった。

 ユーリーとマーガレットから一日ずつ習ったクララは、美術と裁縫どちらも気に入っていた。こうして、クララの趣味に、この二つが追加されたのであった。

 その日の夜中に、マーガレットがクララの石像を仕上げて届けてくれた。マーガレットの部屋で見た時よりも精巧になっており、再現しなくて良いと言ったパンツまで再現されていた。ただ、台座も一緒にあったので、見ようと思わないと見えないのが救いだった。

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