表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雑貨屋「夜露堂」

雑貨屋「夜露堂」 #3

 ああ、こら。狭い所で走り回るんじゃありません。おとなしくしないと、おやつ抜きにしてしまいますよ。まったく。

 ……おや、いらっしゃい。今日も素敵な雨の日ですね。三度(みたび)あなたに会えるとは……いやぁ、嬉しいものですねぇ。

 ところで、今日はどういった御用でいらっしゃったのでしょう? いえ、素敵な傘を持っていらっしゃるので、今回は雨宿りではないのでしょうが……やっぱりお買い物ですかね? うちは雑貨屋ですので。

 でも、もし、私とおしゃべりするために来てくださったのなら、とっても嬉しいなぁ。なんて、思ってしまうのです。

 ……フフ、そうでしたか。いえいえ、ここに来る理由なんてなんだっていいのですよ。どんな理由でも、大切なご縁ですから。

 さぁさぁ、せっかくいらしたのです。今日もゆっくりしていってくださいな。飲み物をお出ししましょう。何がいいですか? ……わかりました。すぐに用意しますね。

 それにしても、今日は一段と素敵な雨の日ですねぇ。わからない、ですか。それは残念です。あなたはなかなか頑固な人ですねぇ。私はそう思います。

 はい、どうぞ。今日は私もご一緒していいですか? ……ありがとうございます。では、失礼して。

 これですか? これはよもぎのお茶です。ええ、ハーブティーというやつです。綺麗な色でしょう? さっき摘んだもので入れました。植物を育てるのは私の趣味でして。

 味、ですか? 美味しいですよ。おや、微妙な顔をなさる。フフ、いいのです。誰だって、未知のものは恐ろしいものですから。


 はぁ、子ども、ですか? ……あぁ、もしかして、外まで聞こえてしまいましたか? やんちゃなのがいまして。人見知りするので、すぐ引っ込んでしまいましたが……。いや、お恥ずかしい。

 あぁ、いえ。私には子どもはいませんよ。お客さん……まぁ、そんなところです。

 おやつ抜き。おや、そんなことまで聞かれてしまいましたか。この頃言うことを聞いてくれなくて、困っているんですよ。どうしたらいいのでしょう?

 ……罰が軽すぎる? そうでしょうか。おやつ抜きは悲しくありませんか? 全然そんなことない、ですか。そうなんですね……。私、ちょっと驚いてしまいました。

 でも、それならどうすればいいのでしょう。……え? それは……ちょっと厳しすぎないですか? そんなことない? それが普通、なんですか? なるほど……気は進みませんが、一度試してみることにします。気は進みませんが……。


 ……それにしても、今日は本当に素敵な雨の日ですねぇ。雫をつけた紫陽花を見たくなりませんか? 実は、うちの裏にも咲いているんですよ。綺麗な蒼色の紫陽花が……。別に見たくない? ……そうですか。ちょっぴりもったいなく思えてしまいます。


 今日は、いつ雨が止んでしまうのでしょう。止んでしまったら、あなたは帰ってしまいますよね。

 止まなくてもそのうち帰る、ですか。フフ、それもそうですね。

 それでも、時間が許す限り、私はあなたとお話ししていたいです。……なんて。

 でも、あなたとのお喋りが楽しいのは、嘘ではありませんよ。

 雨が降ったら、あなたはまたここに来てくれるのでしょうか。


 雨の日がもっと楽しみになってしまいますね。

 夜も更けに更けた時間の投稿ですが、みなさまこんにちは。夜露堂の3話目はお楽しみいただけたでしょうか。

 私は雨が好きなのですが、それでも実際に降ると感傷的な気分になってしまいます。それがまたどこか心地よく、創作意欲も不思議と湧いてくるのですが、そんな時に生まれた物語達はやはり桔梗色に染まってしまいます。

 それもまた気に入ってはいるのですが、肌に合わない、なんて方もいるのかもしれませんね。

 とはいえ、それが私の描く物語なので、どうすることもできないのですが。


 だいぶ唐突な語りが入ってしまいましたが、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

 読んでいただけるだけでも十分嬉しいのに、評価までつけてくださる方がいらっしゃって、心からありがたく思っています。創作をする者として、評価をいただけるというのはやはり嬉しいものなのだと、毎度実感しています。

 読んでくださる方々のために、もっと腕を磨いてまいりますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。


 またいつかの雨の日に、あなたに出会えることに期待を込めて。

 夜露堂は、あなたのご来店をいつでも心より歓迎いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ