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記録02 問題のご令嬢方

 さて、今回の問題になっております事件の(かなめ)は、このメイサ嬢の妹君、リサ嬢でございます。


 恐らく、リサ・レンドール子爵令嬢は、候補者としては足りぬ部分も多く、メイサ嬢がいらっしゃらなければ、教会側も推薦されなかったのではと思われます。

 なぜならば、貴族家ご出身の第三級聖女様は他にもいらっしゃいますもの。

 とは言え表面的に見れば、メイサ嬢と同じ第三級聖女、同家の出自、年齢的にも候補として問題のないリサ嬢を推薦しないのであれば問題になると、教会内で声が上がったのではないでしょうか。

 ……なるほど、彼女たちの母君、レンドール子爵夫人のご要望でしたか。納得致しました。


 リサ嬢は、十三歳と言う年齢もあるのでしょうが、まだまだ天真爛漫に見える少女でいらっしゃいました。

 初めてお茶会にご参加された時には、わたくしも配膳の総指揮を取るためその場におりましたが、王太子殿下に一目惚れなさったのが、遠目でもわかりましたよ。

 王太子殿下は、本当に絵に描いたような王子様。あの方に惚れないご令嬢はいらっしゃいません。リサ嬢のような夢に恋をしてしまうようなご令嬢であれば尚更でございましょう。もちろん彼女の他にも……(数ページに渡るので、省略)



 そして以降、他のご令嬢を無視して、王太子殿下について回るようになられました。

 本来であれば、メイサ嬢が候補であり、リサ嬢はおまけでしかなかったはずですのに。

 ……そういえば、メイサ嬢はあまり乗り気ではなかったのかも知れませんね。お茶会では常に静かに控えていて、行動に出るのは、時折羽目を外しすぎる妹を窘めている時のみ。

 そのたびにリサ嬢は、姉が虐めると泣き真似をしては王太子殿下の腕に縋り付いておりましたが……。


 リサ嬢は、聖女としてのご教育を受けていらっしゃる最中だとお聞きしておりましたが、その割に、お茶会の他にも頻繁に王宮内に足を運ばれ、王族や官僚しか入れない場所にうっかりと足を踏み入れたり、下働きの者たちの通路を使って普段公開されていない庭園へと迷い込んだりと、問題行動に枚挙に暇がございませんでした。

 王宮の開放区画では、遭遇した他のご令嬢と諍いを起こし、そのたびに泣き真似をなさっては、お相手のご令嬢を悪者に仕立てている始末でございます。


 ……え?他のご令嬢が虐めたから泣いてしまったのではないかですって?

 虐められて泣くような気弱な方が、立ち入り禁止区画に何度も立ち入りませんよ。

 知らなかったのだろう?

 一回だけならばその(げん)も信じましょう。しかし気弱な方であれば、二度目以降は怯えて慎重に行動されます。一度目の間違い時に、王宮の開放区画とそれ以外の取り扱いについては、忠告されているはずです。毎回「間違えました。気が付きませんでした」と言って泣いて済ますのは、泣けばどうとでもなると思っているからですよ。気弱なのではありません、図太いのです。

 ご令嬢方にマナーを指摘されて泣くのは、泣けば同情して貰えると理解しているのです。

 これですから殿方は。そもそも女性に対して理想を見すぎでございます。女性と言うのはですね……(数ページに渡るので、省略)



 ですからね、そうやって男性には涙と無邪気さで擦り寄り、女性にはひと目につく場所で喧嘩を売られるように行動している、そういう強かさをお持ちなのがリサ嬢だったと言えましょう。

 王太子殿下も、未成年であり妹君と同じ年齢であるリサ嬢には、強く出ることがお出来になりませんでしたので、尚更彼女の行動に拍車がかかってしまったようです。

 その点につきましては、王太子殿下も反省していると仰っています。過去を省みてまっとうに反省することが出来る、王太子殿下の美徳でございますね。教育係の一人と致しまして、誉れの高いことでございます。


 そうは申しましても、お茶会に参加されているご令嬢方で、総合的に評価の高かったのはリサ嬢の姉君であるメイサ・レンドール子爵令嬢とユーレティシア・シュルメーナ侯爵令嬢のツートップ。

 リサ嬢の評価はかすりもしておりません。ええ、ひとつも!むしろ総合的にはマイナス評価でございましたわ。

 え?評価していたのは誰かですって?

 宰相様を筆頭とした王宮官僚の方々と政務宮の女官たちでございます。

 彼らは王太子殿下の婚約者選定やお茶会の指揮と運営を行っておりましたからね、お茶会後に必ずヒアリングをしておりました。

 後日に、王宮騎士団の騎士団長様を筆頭とした騎士の方々と王妃宮及び王女宮の女官たちの評価が抜けていると指摘されて、これはわたくしの落ち度であったと反省しております。

 とは言え、事件後に皆様方に確認しましたところ、高評価こそわたくし共とは違う方につけておられましたが、リサ嬢の評価が最低であったことは間違いございません。

 なにせ側近の方々は政務中に、護衛騎士の方々は護衛中に、スケジュールの邪魔をされていますからね。侍女たちも王太子殿下の居ない場所での彼女の態度は許せないと申しておりました。


 これらの評価調査については、両陛下からのご命令でもございます。最終的に両陛下と王太子殿下でお決めになることとは言え、わたくし共が今後敬意を払ってお仕えする相手としてふさわしいと思う方をそれぞれに聞き出すようにと。その通りにさせていただいた結果でございます。

 その結果を纏めた書類は、そちらの束に。そうそう、そちらでございます。


 つまり、王宮内の者たちは、誰もリサ嬢を王太子妃に、と推薦していなかったのでございますよ。


 まあ、一部の“無邪気”だとか“天真爛漫”だとか“儚げ”というキーワードと女の涙に弱い方々には、随分と好評だったようですけれどもね。

 しかし実際のところ、理想を体現するようなお嬢さんはね、王太子妃候補としては早々に脱落しています。

 暴走気味のご令嬢方に、比喩ではありますが、踏まれ殴られ蹴飛ばされてしまいますから、王太子殿下の傍で居続けられるはずがございません。

 理想がそのような方でしたら、お茶会で初期に脱落したお嬢さん方にアタックしてみてはいかが?もしくはお茶会会場の壁際を御覧なさい。

 少なくとも王太子殿下の傍にぐっと寄っているようなご令嬢は、そのように偽装しているだけで、間違いなく真実の姿は理想から外れておりますよ。


 ああ、今の文面、削除しようとなさらないでくださいね。

 リサ嬢に加担した方々へしっかりとお灸を据えて、今後のアドバイスを残さねばなりません。

 そもそも、王宮で王族の方々を護りつつ、国民を良き方向へと導くべき仕官が、女の涙にほださr(数ページに渡るため、省略)

ここまでお読みくださってありがとうございます。

女官長も大喜びしていると思われます。

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