指南
「まず、お前のステータス。スピード以外まるで伸びていないではないか。2年間何をしていたのだ?鍛練をまるでしていないのか」
ようやく此方に反論するチャンスが来た。
「テクニックは2伸びていますし、スタミナは…」
「待て。その程度伸びた内に入らぬ。素質のある者ならイニシャル・スコアでお前の遥か上を行く。」
僕の反論をうんざりした口調で遮った後、わずかに残る僕のプライドを正論で押し潰した。
虎白は溜め息をついた後、魔法を詠唱し中空に何かを出現させた。
「これを使え。武具に頼らせても成長はないが、今のままでは埒が明かない。」
カシャン、と澄んだ音を鳴らせて地面に落下した物はダガーだった。
「どんな武具か判らないだろうから説明する。双頭のシルバーダガーだ。双頭なので守りにも使えるし、何より唯一無二のマジックスキルが…。いや、マジックが0の御前には関係がないか。とりあえず、構えよ」
促されるままに、ダガーを拾い上げ構えるとその軽さに驚いた。
「フォームの不格好さは実戦で改善するとして、そのダガーは分かりやすく言うと血を吸わせれば吸わせる程威力が上がる。まずは、この付近のモンスターを苦もなく倒せるレベルにならないと頼み事も出来ない」
ここまでの説明を受けて、何を質問すべきか。頭の回転が早くない僕は、狼狽える以外出来なかった。
「まずは、近くの砦に棲息するビッグ・マウスを倒せ。さらばだ。」
眩しい光を放ち、僕が腕で目を覆っている間に虎白は姿を消した。