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事件発生です。



今日はルチア達を連れてアメリア孤児院を訪れている。

折角の夏休みなので遊びに行こうと誘ったら、ルチアがうちの領地の視察に着いて来たいと言ったからだ。



「でもルチア良かったの? 私の視察のついでになっちゃって……」


「はい!ロザリア様の治める街をちゃんと見てみたかったんです!」



私は口を出してるだけで正式に治めてるのはお父様なんだけど……ルチアが楽しそうだからいいか。

エルメライト領は私の前世の知識によって大分改造されてるしね。

特に教育の強化と医療の充実の成果は大きく、他の領地でも経営基盤として採用されることとなった。


まだ働けない年齢の子供達への教育しか義務には出来ていないが、中学生くらいまでの子には毎日じゃなくても学校へ通って貰えている。

そのうち専門学校なんかも建てたいと思う。

孤児院や学校、病院なんかには段差の低い階段や手すりをつけるなどバリアフリー化を進めた。

この世界では建築に対してあまりそういった意識はなかったようで、こちらも徐々に広まっていけばいいな思っている。



「オズ兄!! また剣教えて!!!」


「おー、ちゃんと素振りしてたか?」


「してたよー! 俺もオズ兄ちゃんみたいな騎士になりたい!!」



相変わらずオズは大人気だ。

私と一緒にちょいちょい顔を出しているのですっかり慣れたものである。

ちなみにテオも変わらず女の子に囲まれている。

アレンは私に引っ付いたまま殆ど口を利かないせいで、背後霊か何かかと思われてる気がする。



「ロザリア様おともだちできたのー?」


「ロザリア様はおかおこわいけどやさしいから大丈夫だよ!」



そして私はというと、またこの扱いだ。

どこの孤児院や小学校に行っても敬遠されがちなのよね。

せっせと足を運んでいる甲斐あって子供達とは仲良くなれたが、やっぱり私の顔は近寄り難いらしい。

ルチアは早々に子供達の輪に入って楽しそうにお喋りしてるというのに……。



「ルチアは小さい子にも人気なのね……何を話してたの?」


「あのねー、ロザリア様は気高くてうつくしいの!」


「たいりんのばらなのよー!」


……なんだろう、ルチアと話していた子供達が何か良からぬ洗脳を受けている。


「……ルチア?」


「ロザリア様の学園での様子が聞きたいというので、お話しさせて頂きました!」



ルチアはやりきった感のある笑顔を浮かべて満足気だ。

一体私のどんなエピソードを語ったら気高いとかいう単語が出てくるのか。



「……なんか大輪のバラとか言ってるけど」


「あっすみません! バラくらいじゃ足りないかなとも思ったんですけど……ロザリア様を表現するに相応しい言葉が他に思い付かなくて……」



蝶……いや、月……? と呟きながら難しい顔をしているルチア。

薄々気付いてたけど、時々トチ狂ったことを言うよね。

シナリオから外れた影響なんだろうか。


「……とりあえず、あのお姉ちゃんの言ったことは覚えなくていいからね」




◇◇◇◇◇◇




夕方、そろそろお暇しようかとシスターセレッサに挨拶に行くと、子供達数人と不安げな様子で何かを話し込んでいた。



「何かあったんですか?」


「それが、キリルがまだ帰ってこなくて……いつもならもうとっくに帰っててもおかしくない時間なんです……」



キリルは今年10歳になる男の子だ。

たまに近所のパン屋で仕事の手伝いをしているのだが、いつもなら昼のピークを過ぎたら帰ってきているらしい。

うちの領地は他よりも警備を強化しているとはいえ、監視カメラのひとつもない街では大きな犯罪も少なくない。

寄り道をしているだけならいいが、何かに巻き込まれた可能性もある。



「すぐに衛兵に連絡してください、私も探してみますので」


「ロザリア、僕達が行くから君はここで待ってて」


「嫌よ、うちの領地で起きた問題だもの。むしろテオの方が来たらまずいんじゃないの?」



割とお忍びでふらふら出歩いているテオだが、一応この国の王子なのだ。

犯罪に巻き込まれてるかもしれない少年を探しに行くなんて、そっちの方が問題だ。



「……それを言われると何も言えないけどね……」


「危ないことはしないから、お願い!」


「……はぁ……約束だからね」


「ありがと、テオ。ルチアはここに残ってもらってもいい? もしキリルが帰ってきたら衛兵に伝えて欲しいの」


「わかりました。お気を付けて下さい、ロザリア様」


土地勘のない他所様のお嬢さんを連れて行くわけにはいかないので、ルチアには連絡係を頼んだ。

渋々承諾してくれたテオとオズ、アレンと共にキリルの捜索へ向かう。



キリルが仕事を手伝っているパン屋に行ってみたが、いつもの時間には店を出たと言っていた。

周囲に聞き込みをしても有力な情報を得ることは出来なかった。

しらみつぶしに探すしかないかと思っていたら、気になる人物が目に入る。


「……ねぇ、あれなんか怪しくない?」


道の端で人目を気にしながら歩く、大きな麻袋を持った男。

考えたくはないが、子供1人くらいなら余裕で入りそうだ。



「取り押さえるか?」


「うん……あ、だめ! 見失っちゃう……!」


「ロザリア……っ!」


男が細い路地へと入っていってしまった。

急いであとを追いかける。

ここで見失って取り返しのつかないことになったらと思うと、体が勝手に動いていた。



「ロザリア!! アレンまで……っ!」


「俺が行く、テオは衛兵に連絡してくれ」


「……任せたよ」

ブックマーク&評価ありがとうございます。

今日から更新再開です。頑張りますのでよろしくお願いします。


ルチア(将来はここに永住しよう……)


こんなこと言わせてる場合ではないですね。

ここから少し長めの話になったらいいなと思います。

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