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シルク村へやってきました。

描写は殆ど無いですが虫が出てきます。

苦手な方はお戻り下さい。

 


 最近はいつものメンバーにルチアが加わって一緒にいることが多くなった。

 今日も昼ご飯を食べにみんなで食堂に来ている。


 しかしテオは当初の宣言通り必要最低限の会話しかしないし、オズも隣の席のくせに私の話しかしていないようだし、本命のアレンはルチアをライバル視しているように見える。「あいつは油断ならない」とまで言っていた。

 ルチアは魔法の飲み込みが早いようなのでライバル認定されたのかな?

 アレンの教え方が反則技なせいもある気がするけど……。


 一見和やかそうに見えるが、これではまだ私は抜けられそうにない。

 好感度は最初より上がってると思うんだけどなぁ。



「そういえば、この間初めてシルクを見せて頂いたんですがとっても綺麗でした! さすがロザリア様が携わっている品ですね!」


「ありがとうルチア。でも私は指示を出してるだけよ。あの布を作ってる村の人達が凄いの」


「大量生産の出来ない貴重なものだとお聞きしました。その村の方々がどうやってあんな綺麗な布を作ってるのか気になります! …………え、あの、私、なんかまずいこと言ってしまいましたか……?」



 ルチアの言葉に全員がカトラリーを置きシン……と静まり返った。


 絹は今もあの村でしか作っていない。

 専属のデザイナーに専属のバイヤーを雇って絶対に製造方法がバレないようにしている。

 規模を大きくするとそれだけで秘密が漏れるリスクが上がるからだ。


 彼らが無言になったのは、その秘密を知っているが故である。



「…………見たい?」


「ロザリアっ!! 正気か!?」


 テオが珍しく大きな声でガタンッと椅子を鳴らし立ち上がった。


「あら、テオったらどうしたのかしら? 声を荒げるなんていつものあなたらしくないじゃない。一緒に来たいの?」


「たとえ君の頼みだとしても、もうあそこに行くのはごめんだ……!!」



 わざとらしく聞いてみれば、テオは拳を握りしめて苦悶の表情を浮かべた。大袈裟。

 初めて連れて行ったときは立ったまま気絶しそうになっていたっけ。

 あんなテオを見たのはあれっきりだ。



「そ、そんなに恐ろしいところなのですか……!?」


「いや……俺なんかは平気だけど、テオみたいな温室育ちとかお嬢様方には刺激が強いっつーか……」


「私は結構好きだけどね、可愛くない?」


「可愛くはないだろ……そんなこと言う女はお前だけだ……」


 オズまで渋い顔をしている。

 私の前世なんかだと小学生の時に体験させられたりしたくらいなのに。


「刺激が強いけど可愛いですか……全く想像がつかないのですが……」


「まぁ来ればわかるわ、どう?次のお休みの日にでも」


「ロザリア様が気に入ってらっしゃるなら……私行きます!」


 気合い十分に頷いてくれたルチアに、テオとオズは同情の目を向けた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




「ロザリア……何故よりにもよってあの村に……やっと、やっと女の子の友達が出来たと思ったのに……うぅっ……」


「考え直してロザリア!! まだ間に合うわ!!!」


「お父様、お母様、いい加減行かせてください……」


 約束の日、うちに来たルチアとさっさと馬車に乗り込もうとすると、半泣きのお父様とお母様に捕まってしまった。



「何があるのかは存じ上げませんが、私はロザリア様と一緒ならなんだって大丈夫ですよ」


「ルチア嬢……さすが私達のロザリア……いい友人をもったなぁ……ぐすっ」


「ルチアさん、どうか何があってもロザリアとお友達でいて頂戴ね!!」


「はい! 喜んで!」



 駄目だ。ルチアまで巻き込んでヒートアップし始めた。

 こうなると長いのよ……だから早く行っちゃいたかったのに……。



「いいかいアレン、怪しい人間がいたら遠慮はいらない。最大火力で消し飛ばせ。始末はこちらでするから心配しなくていいぞ」


「うん」


「お父様!! アレンに変なこと吹き込まないでください!! アレンも返事しない!!!」


「そうよアレン、まずは四肢を拘束して誰の差し金か口を割らせなさいと言ったでしょう。こういうのは元から断たなきゃ駄目よ」


「ん、了解」


「ははは、流石はセレーネだ。一本取られたね」


 ははは、じゃないよ!!!

 物騒な会話をにこやかな顔でするな!!!


「アレンにそんなことはさせません!! もう行くからね!!」




 追い縋る両親を振り切って、なんとか馬車を走らせることができた。行く前から疲労したわ……。


「はぁ……全く、いつまで経っても過保護なんだから……」


「ふふふ、素敵なご両親ですね。私も母を思い出します」


「あっ……ごめん、私……」


 ルチアは最近お母さんを亡くしたばかりだということを失念していた。それなのに私ったら……!


「あっ違うんです! そういうつもりじゃなくって!むしろ、ようやく懐かしいって思えるようになったというか……」



 落ち込む私を慌てて止めたルチアは本当に辛そうには見えなかった。

 それどころか幸せな思い出を噛み締めているように見える。



「私、ロザリア様と出会ってから毎日とっても楽しいんです! 今なら私は本当に幸せだよ、安心してって自信を持ってお母さんに伝えられます!」


「ルチア……ええ、そうね。私もルチアのお母さんに娘さんのことは私に任せてくださいって言わなくちゃだわ」


「ロ、ロザリア様……! 勿体無いお言葉です……!」


「ふふ……どぅあ!? アレン!? なに、どうしたの!!」


 ルチアと談笑していただけなのに、横から伸びてきたアレンの腕の中で締め付けられている。

 なに、なにがあったの!!


「まぁ……アレン様、大人気ないですよ」


「……ロザリアが減る」


「離して!!減る前に潰れるからー!!!」





「お嬢! 女の子の友達出来たんですか!」


「うわ、ほんとだ! おーい! お嬢が女の子連れて歩いてるぞー!!」


 その名の通りのシルク村に到着した。が、途端にこれである。

 みんな私のことをなんだと思ってんだ。

 やめろ人を呼ぶな。


 誘拐事件の直後は様付けに敬語で呼ばれていたけれど堅苦しいのも嫌なので今の状態に落ち着いてもらったわけだが、いやフランクが過ぎるわ。


「分かったから早く案内して……」


「いやぁ、悪いな嬢ちゃん。みんな嬢ちゃんが来るってんではしゃいでんだ」


「学校もあるからたまにしか来れないものね……夏休みに入ったらもう少し顔出せるようにするわ」


 誘拐犯の1人だった頭領さんとも今では立派なビジネスパートナーだ。

 アレンには製糸工場の方のお手伝いをお願いしてルチアと目的の場所へやってきた。


「ふふふ……っじゃーん! シルクを作ってるのはこの子達です!!」


 小屋のドアを開けると一面に広がる緑。


「わぁ……! これは……葉っぱ? いえ……何かが動いて……!虫、ですか」


「そ! 蚕っていうのよ。この子達の繭から糸が取れるの……連れてきておいてなんだけど、大丈夫だった?」


「はい! 私は平民育ちでしたのでそこそこ耐性は……ですが、みなさんが言っていた意味がわかりました」


「……バレたらマズイことになるから他言無用でよろしくね」


「もちろんです! ……確かに、失神してしまいそうですものね」



 昔のヨーロッパの貴族達もシルクが何で作られてるか知らなかったらしいしね。わざわざ教える必要もあるまい。



「こんなに可愛いのにね〜」


「えっと……よく見たら白くてかわいい……ですね……?」


「でしょ!! わかってるわねルチア!!」


「はい! ロザリア様!!」


 流石ルチア、聖女と呼ばれるようになるだけのことはある。懐が広い。

 やっぱり連れてきてよかった!!


「……あのね、学期末に舞踏会があるじゃない?よかったらその時のドレスをこのシルクで一緒に作らない?」


「だっ駄目です! こんな高いもの……!」


「いいからいいから。私がしたいの。ね?お願い」


 ちょっとズルいけど経営者特権だ。

 この学園には一学期の終わりに一年生限定の歓迎舞踏会がある。

 ゲームのようにルチアのドレスが破られることはないと思うが、この機会にルチアに手を出したらエルメライト公爵家が黙っていないぞアピールをしよう。


 ルチアは可愛いから楽しみだわ!!!

ブックマーク&評価ありがとうございます。

いつも励みにして頑張っております。


虫という単語を打つことすらしんどかった私です。

私の小学校では蚕の飼育をやっていたのですが今は無いところもあるみたいですね。

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