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魔法の授業です。

 


 あれから数日、私はすっかりルチアとも仲良しになっていた。



「ロザリア様! 私クッキー作ってみたんです。よかったら食べてください!」


「いいの? ありがとうルチア」



 わーいクッキーもらった。

 プロが作るのもいいけど、たまに誰かの手作りとか食べたくなるときがあるのよね。

 ちなみに、お料理に関しては私は前世ですら壊滅的だったので知識チートなど出来るはずがなかった。レシピとか言われてもわからない。



「ちょっと平民! ロザリア様になんてもの渡してるのよ! 弁えなさい!!」


 プレーンとチョコクッキーだ!どっちから食べよう……やっぱまずはプレーンだよね。


「あら、またいらしてたんですかハルオーネ様。あなたクラス違いますよね?」


 ん〜おいし、この素朴な味がいいわ。頼んだらまた作ってくれないかなぁ。


「あなたがロザリア様に無礼を働かないか監視しに来たんですのよ!! そんなものお口に合うわけないじゃない! そうですわよね、ロザリア様!!」


「え? ごめんクッキー食べてて聞いてなかった」



 急に話を振られてびっくりした。

 隣の席で一部始終を見ていたテオが肩を震わせている。席替えはまだか。


 もはや見慣れた朝の風景だ。

 あの日ルチアにガツンとやられたハルオーネ嬢だったが、めげない彼女はあれからも度々やってきては言い負かされている。



「おいしいですか? ロザリア様!」


「ええとっても。ルチアはお菓子を作るのが上手なのね」


「ロザリア様!?」


「……だ、そうですよ。安心してご自分の教室へお帰りください」


「ぐ、ぐぬぬ……!」



 勝ち誇った笑みを浮かべるルチアに悔しげな表情で歯を軋ませるハルオーネ嬢。

 ごめんね、でも本当においしいのよ。食べてみれば分かるんじゃないかな。



「……ハルオーネ様」


「ロザリア様! わたくしのこともハルオーネとお呼び捨てください!」


「ハルオーネ、あなたも一度食べてみればいいんじゃないかしら? ルチア、いい?」


「はい、もちろんです!」



 よかった、ルチアは快く了承してくれた。

 反面、ハルオーネの顔が絶望に染まる。いやそんなに嫌がらなくてもよくない?



「いえっ、その、ロザリア様、私は……」


「ま、そう言わずに、はい」


 渋るハルオーネだが私から渡されては断れまい。ほれほれ。


「う……い、いただきます」


 クッキーを受け取って恐る恐る口にした。



「……おいしい……」



 目をぱちくりさせながら咀嚼するハルオーネを生暖かい目で見守る。

 私達の視線に気付いたのか、彼女はハッとすると顔を赤らめて慌てだした。


「ちが、これはっ……! あなたのことを認めたわけではなくてよ!!! 覚えてらっしゃい!!!」



 ルチアにビシッと指をさし捨て台詞を吐いたハルオーネは逃げるように教室から駆けていった。

 うーん、同じ悪役令嬢ポジだったはずなのに彼女はなんとなく憎めない小悪党って感じだわ。



「ロザリア……1限、教室移動」


「あっごめん、もうそんな時間? んじゃ急ご」


 今日の1時間目は魔法の授業だ。高等部に上がってさらに大きく頑丈になった魔法修練場に向かわなければ。

 行きがけにクッキーを口に詰め込むのも忘れなかった。




 ◇◇◇◇◇◇◇




 入学をしてから何度目かの魔法の授業が始まった。


 アレンの指導のおかげで私は火と水なら上級、風と土も中級までなら使いこなせるようになっていた。

 オズも今では魔法剣を使った剣技を編み出し、テオも風と水属性の上級魔法をマスターしている。

 アレン様々である。



 魔法は中級、上級とレベルが上がっていくと体外に放出する魔力の操作がどんどん複雑になっていく。

 魔術で使う式を魔力で構築するようなものだと認識しているが、なにぶん一瞬でやらなければならないので頭で考えてるとパンクする。

 なので普通は高等部の3年間を使っても中級魔法のうちひとつかふたつを覚えるのが限度だろう。


 そもそも大きな魔法になるほど使用する魔力の量も増えるので中級と上級の間には高い壁がある。

 センスと魔力を兼ね揃えたひと握りの人間だけが上級へと手をかけることができるのだ。



 魔力量はともかく、私達がさくさく魔法を習得していったのはひとえに魔力の感知に優れていて具体的な指示を出せるアレンがいたからだ。とんだ教師泣かせである。

 肝心の魔法の先生は「僕が生きてる間に4属性を使える人間に2人も出会えるなんて……」と別の意味で号泣していたが。



 というわけで、うちのクラスの授業はアレンの指南を受けてきた私達と、この国でも珍しい火と土の2属性使いである担当教師オリヴァー先生で分担している。


 他のクラスに比べてどう考えてもパワーバランスがおかしいよね。

 普通こういう使える生徒は各クラスにばらけて配置するものだ。

 テオに何かしたんでしょうと聞いてみたら笑顔で今頃気付いたの? と言われた。こわ。



 騎士を志している人にはオズが魔法剣の使い方を、風属性をテオが、水属性を私が、土属性と火属性を先生が、そしてアレンが総括という名の見学である。

 1番指導に向いてるのに誰とも口を利かないんだから、勿体ない。



 水属性といえば、本来ならルチアの担当も私なのだ。

 けれどルチアは初級魔法の習得をしていないため、現在はオリヴァー先生のもと特別メニューをこなしている。


 だけど折角仲良くなれたから、この機会にルチアにも4属性の使い方をレクチャーしようと思う。

 アレンに付きっ切りで教えて貰えばアレンルートに進むかもしれないし、そうでなくてもマスターすれば魔導師エンドを迎えることができるからだ。まさに一石二鳥!!


 それに光属性の魔法を使える素質があるルチアなら、全属性使い(パーフェクト)も夢じゃない!



「ねぇねぇルチア」


「はい、なんでしょうロザリア様」


「あのね、4属性使いになることに興味は……もが」


「ごめんね、ちょっと回収するね」



 アレンに口を塞がれテオとの連携プレーにより回収された。

 そして私は正座させられている。というか自主的にした。



「ロザリア……母様に喋るなって言われたの忘れたの?」


「忘れたわけじゃないけど……」


「君が彼女を贔屓にしているのは知っているけど、言っていいことと悪いことがあるのはわかるよね?」


「でも……」


「「でも?」」


「なんでもないですごめんなさい」


 土下座が板についてきた気がする。

 いい考えだと思ったんだけどなぁ……。

ブックマーク&評価ありがとうございます。

感想も嬉しいです。頑張ります。



ルビの使い方を覚えました。

ルビは使えるようになったけど魔法を使ったことはないのでどうやって使うのかイメージするのめちゃくちゃ大変ですね。

自分でも何言ってるのか分からなくなる時があります。

魔法使えたらいいのに。

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