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友達が欲しいです。

 


 去っていったヒロインの背中を見送って、思ったことがある。


「私も女の子の友達ほしい……」


 よくよく考えてみれば、何故だか私にはいつものメンバー以外に友人がいなかった。

 一緒にいるのが楽しくて気付かなかったけど、これは由々しき事態だ。


 そもそも私は乙女ゲームのヒロインに自己投影して楽しむのではなく「この子は私が幸せにしてやるからな」とキューピッドの気持ちでプレイするタイプなのだ。

 つまり、ヒロイン大好き。友達になりたい。


 けれど今の私とルチアは悪役令嬢とヒロイン、水と油、ロミオとジュリエット……。

 悲しいかな相入れない存在なのだ。一緒にランチなんてした日には天変地異が起こる。

 ならばせめて同性の友人のひとりやふたり欲しいところだ。



「無理だな、話が合わん」


「なんでそんなことユリウスにわかるのよ。意外と盛り上がるかもしんないでしょ!」


「お前に女どもの好む話が出来るとは思えん」


 失礼な。ユリウスよりは出来るわ。

 それに私にはとっておきの話題がある。


「私を誰だと思ってるの? 今や貴族の代名詞といっても過言ではないシルクドレスの生みの親よ? ご令嬢方にも大人気なんだから。製造工程から次に来るデザインまでいくらでも語れるわよ!!」


「それは顧客と開発者の会話だな」


「……盛り上がりはするわよ、たぶん」



 確かに私がシルクについてご令嬢と話していたら顧客アンケートをとり始めそうだ。

 ふだん貴族の女の子ってどんな話してんだろ。


 私も貴族の端くれなので舞踏会などに参加することはあるが、軽い挨拶程度の言葉しか交わしたことがない。

 そもそもそういった夜会が苦手で王宮開催の中でも更に絶対行かなければならない厳選されたもの以外は仕事に逃げている。

 ユリウスはそれすら蹴ってるみたいだけどね。

 コールマン家は代々そんな感じで、その堅物っぷりを見込まれて宰相を任されてきたから許されるらしい。それでいいのか。


 なけなしの記憶を辿っていたら置き去りにしてきたテオ達がやってきた。



「あ、やっぱりユリウスのところにいたね」


「おー、機嫌直ったか?」


「直ってないしあなたには別件でまた話があるわ」



 ジトッとした目でオズを見る。

 オズが私の名前を出したりしなければ私に友達がいないことに気付くこともなかったのに!



「んだよ今度はなんだ?」


「同性の友人が欲しいそうだ」


「……なんで?」


「お前についてこれる女とかいんのか?」


「うん、無理だね」


「なによみんなして!」



 ちょっと友達が欲しいと言っただけで散々な言われようだ。

 そうよね、自分たちは男女問わずモテモテだからいいわよね!!


 私は女の子どころか男の子にも遠巻きに見られている気がするわ。

 話しかければ答えてはくれるけれど、どこかよそよそしいというか……。

 確かにキツめの顔立ちかもしれないけど私だって美人の部類なんだからモテ期くらい来てもいいのに。



「はぁ……挨拶運動でも始めましょうかしら」


「絶対ダメ」


「今でさえ牽制が大変なのに、これ以上とか勘弁してくれ……」


「あー……諦めろ、俺らがいるし、な?」



 宥めるようにぽんぽんと私の頭を叩くオズの手を払いのけた。

 この〜!! 馬鹿にしおって!! くらえ!!!



「うるさーい!! 元はと言えばオズが悪いのよ!! また私の名前出して!! 言わなくていいって言ったでしょ!!!」



 思いっきり頰を横に引っ張ってやった。

 私の気持ちを思い知るがいいわ!!



「ひはえははあほはえははえあ」


「言い訳ならもっとちゃんと喋りなさいよ!!」


「おあえおへいあろ!!!」



 ははは何言ってるか全然わからん。

 よく伸びるほっぺたですこと。



「僕も」


 だんだんオズの頰を引っ張るのが楽しくなってきたと思ったら、アレンが期待に満ちた眼差しで名乗りを上げた。



「えっアレンも……? アレンは悪いことしてないんだからやらなくていいのよ?」


「して欲しい」


「でも、アレンにそんな酷いことするなんて……」


「おい、俺のときとだいぶ態度が違うな」



 オズは不満そうに私につねられた頰をさすっている。

 当たり前でしょ、アレンとオズを一緒にしないで。アレンは誰かさんと違って繊細なのよ。



「大丈夫だから」


「そう? じゃあ……」



 そこまでいうならやってあげよう。

 ふにふに。優しくつねった。満足そうだ。可愛いなこいつめ。


「ロザリア、僕には?」


 テオまで顔を近づけてくる。何がそんなに楽しいのかしら。



「なんでテオまで……そういう趣味なの?」


「あはは、ロザリアは面白いことを言うなぁ。この口かな?」


「ひにゃー!!!」



 笑いながら私のほっぺたを伸ばすテオ。

 私はやってほしいなんて言ってないのに!!



「はぁ、もういいからさっさと帰れやかましい」


「あ、待って。ユリウスもう生徒会の仕事終わる?」


「ああ、あとはこの書類を提出するだけだが」


「なら一緒にお茶しに行きましょう。新入生を歓迎してちょうだい、ユリウス先輩」


「なんで俺が……!」



 ユリウスは思いっきり顔をしかめた。

 いつもならそんなことお構い無しに無理やり引きずっていくところだが、今日の私には切り札がある。



「人気スイーツ店フィオーラ・フィーネの新作フルーツタルトが食べたくないなら来なくていいわ」


「……そこで待っていろ」



 こちとらこの6年間ずっとユリウスの手綱を握ってきたのだ。好みくらい完璧に把握してるわ。


 見事に釣られてくれたユリウスを連れて街に繰り出す。

 こんな時間がもう少しだけ続けばいいのに、と思ってしまった。

ブックマーク&評価ありがとうございます。

誤字脱字報告も感謝しています。アホすぎる間違いをしていて申し訳ありませんでした。


テオとアレンが牽制しまくってるのでロザリアには友達と呼べる仲の人間がいません。

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