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ついにゲームスタートです。

 


 ————……今日はクラーウィス学園の入学式。

 クラーウィス学園はレイジア王国の貴族なら誰でも通うことになる学園だ。

 大好きだった母が死に、突然男爵家の娘だと連れてこられた私は急遽この学園に入学することになった。

 この間まで庶民として暮らしていた私が、この貴族の学園でうまくやっていけるんだろうか……————












 ……なんてね、ことを考えながら歩いてるわけですよヒロインは。

 ついにやってきました、運命の日。


 今日まで私は自分の地位を盤石なものにしてきた。

 このままいけばエルメライト家の当主でも王宮付き魔導師でも商会主でも、とにかく輝かしい未来が待ってるのだ。

 何があっても死ねない。死にたくない。


 いや実際ね、ありがたいことに留学の話も山程来てたんですよ。

 だからこれ幸いとシナリオから外れようとしたのに、その悉くをテオに握り潰された。

 どうやら私を舞台から降ろしてくれる気はないらしい。



 そして諦めて進学を決めたクラーウィス学園。

 今朝、高等部から支給されることになる制服に身を包んで鏡を見た私は悪役令嬢ロザリアそのものだった。

『黒の棺と白の聖女』の物語は今日から始まるのだ。

 ロザリアは私が絶対に救ってあげるからね、と固く心に誓って家を出た。



「ふぁ、眠い……」


「重い! アレン重い!! 歩きながら寄っかからないでー!!!」


「何やってんだお前ら……ほれ」


「オズ……反対側から押されても辛いものは辛いのよ……」



 そして私は一緒に入学式へやってきた攻略対象たちをぞろぞろと引き連れて歩いている。

 今まで仲良くやってこれてるけど、これから彼らはヒロインを巡って争うライバル関係になるのだ。

 私がゲームそのままのロザリアへ成長したように、みんなも私の知る彼らへと成長を遂げていた。

 特にアレンなんてぐっと背も伸びて大人っぽくなっちゃって……。

 とりあえず襟元のボタンだけはきっちり上まで閉めておくようにときつく言いつけておいた。



 さて、ゲームでは入学式でたまたまテオが目に止めたヒロインをロザリアが引っ叩き、そこから因縁が始まることになる。

 つまりテオを見ていればヒロインが見つかると思ったのだが……。



「ん? どうかしたロザリア」


 なんでずっとこっちを見てるのか。

 ヒロインを!!!探せ!!!


「なんかこう、気になる人とかいないの……」


「ああ、運命の人とやらがいるんだっけ。君以外目に入らないけどね。参考までに聞くけど、どんな人なのかな?」


「ピンクブロンドの髪をした可愛い女の子よ」



 この世界、ファンタジーなだけあってピンクだろうが水色だろうが多彩な髪色の人間が存在する。

 けれどヒロインは少し珍しい色味をしているし、何よりとびきりの美少女だから見ればすぐわかるだろう。

 なんならそのまま一目惚れしてくれても構わない。



「ピンクねぇ……結構いるけど、あの子とか」


「全っ然違う。というか、今年はどこぞの王子のせいで殆どが中等部からの持ち上がりなんだから顔見知りだってわかってるでしょ!!!」


「あはは、僕には見つけられないみたいだね」



 愉快そうに笑っているテオだが笑いごとじゃない。メインヒーローである自覚が足りない。

 ヒロインと恋する可能性が一番高いのはテオなんだから、しっかりしてもらわなきゃ。

 やっぱり私がきっかけを作らないと駄目なのかしら……こう、ビンタの一発でもパシンッて……




 パシンッ


 そうそう、こんな感じ……えっ!?

 私まだ何もしてないよ!?



「なぜ薄汚い平民がこんなところにいるのかしら?」


「そんなっ……私も、男爵家の娘で……」


「なによ、口答えする気!?」



 ああ……あれは私が極力関わらないようにしてきたロザリアの取り巻き達だ。

 そして絡まれている不憫な女の子はもちろんヒロイン。

 どうやら私の代わりはあの子達が務めているらしい。私みたいに処刑されることになるからやめときなさいよ……。



「テオ! 出番よ!! あれ助けて来て!!」


「ん?ああ、あの子が……オズ」


「へーへー」



 テオに指示されたオズはヒロイン達の方へ歩いて行った。

 待って、ここはまだオズと出会う場面じゃないのに。オズはヒロインの隣の席になる予定なのだ。

 叩かれたヒロインにテオがそっとハンカチを差し出すっていう、接点がなくなっちゃうじゃない!



「ちょっと何譲ってるのよ、テオが行かなきゃだめでしょ!」


「行かないよ。僕はもう自分からあの子には絶対に関わらない。

 僕はこの日を楽しみにしてたんだ。君のいう運命の人なんて存在しないってことを証明してあげるよ」



 そう言ったテオは本当に心底楽しそうな顔をしていた。

 まずい。私が昔余計なことを言ったばかりに、捻くれてるテオは嬉々として逆らう気満々だ。



「アレン!! アレンは!? あの子を見て感じることない!?」


「ロザリア以外どうでもいい」



 なんてこと……。

 甘やかしに甘やかしたせいでややシスコン気味に育ってしまったアレンまで、ヒロインを見ることすらせず眠そうに私に纏わりついている。


 いや、でもまだオズとユリウスがいるわ!

 ユリウスは正直……うん、あんまり頼りにならないけど、オズならやってくれるはず!!!



「戻ったぞ」


「えっオズ、早くない?」



 期待の星オズは思いのほか早く帰ってきた。

 もっとこう、式場まで送り届けるとかしてもよかったのよ?



「お前の名前出したらすぐ散ったぞ」


「……なぜ私の名を出したのか30字以内で述べなさい」


「助けに行けって言ったのお前だから」



 頭を抱えたくなった。

 わざわざそんなこと馬鹿正直に伝えてるんじゃないわよ……。


 いきなり前途多難だ。

ブックマーク1000件達成しました!

ここまでお付き合い頂き誠にありがとうございます。


ここから物語が始まります。どうぞ今後ともよろしくお願い致します。

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