《閑話 ユリウスと躾》
商会始動にあたりお互いの家同士で親交を深めましょうと招待された私とお父様はコールマン家の応接室を訪れていた。
ノストラダムスにも会いたかったし丁度よかったな、ユリウスはめちゃくちゃ渋ってたけど。
「ロザリア嬢のおかげでユリウスと歩み寄ることが出来た。感謝している」
「父上……!」
わぁ、めちゃくちゃ嫌そうな顔してる。
商売するならユリウスもポーカーフェイスくらい覚えた方がいい気がするわ。
いや、そもそもこの性格じゃ商談なんてさせられないか。
「そうでしょう、自慢の娘です」
「お父様!!! ……私は何もしておりませんわ。こちらこそユリウス様にはいつも助けられております」
「ははは、ユリウスは私に似て仕事だけは出来るからな。上手く使ってやってくれ」
なんかだんだん保護者会みたいで居た堪れなくなってきた。
というかこれは子供自慢大会だ。お父様同士で勝手にやってくれ。
うぅ、癒しがほしい……、早くここから解放されたい……。
「あの……ノストラダムスを見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだったな。ユリウス、案内してやりなさい」
「……はい、父上」
ユリウスは一瞬こちらを見て行くぞ、と促した。
いや違うわ、あれは表出ろやお前、だわ。
ユリウスも気まずかったのかな、あとで私が文句言われそうだと思いながら素直に退室をした。
「……ところでエルメライト卿、どうですかな、ロザリア嬢をうちの嫁に」
「ご冗談を。ロザリアはどこにも嫁がせません」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ノストラダムス……太ってる!!!」
「おい失礼だぞ」
失礼なものか。
太ってる。2倍くらいにはなってる。
もう野生では生きていけないわねノストラダムス……。
これじゃ猫というよりお餅だわ。
「も〜……どうせ甘やかしてばっかりいたんでしょ」
「そんなことはしていない。芸も覚えたしな」
「えっ芸? 猫が……?」
犬ならわかるけど……猫ってあんまり芸をするイメージはないなぁと思っていたら、ノストラダムスがユリウスを片足でちょいちょいとつついて上目遣いでニャーニャーと鳴いた。
「見ろ、餌が欲しいときはこうして鳴くようになった」
「それは芸じゃない!!! 舐められてるのよ!!!」
すっかり強請ればおやつを与えられるものと学習しているようだ。
これは絶対宰相様の仕業だわ。あとで注意しとかなくちゃ。
この間やっとお留守番を覚えさせたと思ったらすぐこれだ。
ノストラダムスは一生懸命スリスリして甘えた声を出している。
「……あげちゃダメだからね」
「……わかっている」
あーあ辛そうだこと。
でも可愛いからってほいほいあげていたら太るのも当たり前だ。
ノストラダムスの体にも良くないしここは心を鬼にしてもらわないと。
「とにかく、ノストラダムスにはダイエットさせるわよ!!!」
「そうか、精々頑張れ」
「ユリウスも頑張るの! 飼い主でしょ! いっぱい遊んで運動量を増やしてあげて」
「……もっと具体的に言え」
だめだわ本人が遊ぶってことをまるで分かってない顔をしている。
今度チェスとかトランプとか教えてあげようかしら。凄い嫌なハマり方しそうだけど。
それにしても具体的にかぁ。
偉そうなこと言ったものの私もちゃんと猫を飼ったことがあるわけじゃない。
前世にあった猫用おもちゃの類ってこの世界にもあるんだろうか。
「うーん……やっぱりねこじゃらしとか? あとキャットタワーとか……自動で動くねずみのおもちゃとかあると楽だと思うけど」
「また訳の分からない単語を……行くぞ」
「え、どこに?」
「決まってるだろう俺の部屋だ。さっさとしろ」
「ちょっ、待って! せめて理由を説明してから行動に移して!!」
「先程お前が言ったものを全て作る。一から説明しろ」
言うが早いか、スタスタと背中を向けて歩き出すユリウスを急いで追いかけた。
呆れるほど仕事が早いわ。まぁでも、完成したらこれも売れるかな。
その後、真剣な顔でねこじゃらしを作るユリウスがなんだか面白くて笑ってたらまた頭を締められた。
いつもブックマーク&評価ありがとうございます。
誤字脱字報告もありがとうございました。気を付けます。
最後は自分に厳しく他人にも厳しいけど猫には甘いユリウスでした。
ユリウスは絶対にどうしても必ず誰か1人を選ばなければいけないなら非常に、物凄く不本意ながらロザリアってくらいには認めています。
明日からはやっとゲーム本編に入ります!
よろしくお願いします。