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学園初等部入学です。

 


 私に前世の記憶が蘇ってから早2年。

 10歳になった私たちはクラーウィス学園初等部へ入学した。

 通称学園。そう、散々学園、学園と言ってきたがちゃんとした名前があるのである。

 この国に貴族の学校はここしかないのでフルネームを呼ぶ人は誰もいないという悲しき学校だ。



 クラーウィス学園は初等部・中等部・高等部と分かれていて、ゲーム開始時に入学させられる高等部は貴族なら必ず入るようにと国で定められている言わば義務教育になる。


 初等部・中等部の各3年間は任意で入学を決めることができ、大抵は自宅に専門の家庭教師を呼ぶお金がない下位貴族の学びの場だ。

 高位の貴族ともなると教師を家に招いた方が早いので高等部までは自宅で勉強に励む人が殆どとなる。



 私もお母様に魔法を教えてもらっている今となってはもう行かなくていいかな〜とか思っていたのだが、初級以上の魔法が使いたいのなら行ってこいと命じられ入学する運びとなった。

 ついでにアレンも少しは社交性を身に付けるようにと言われていた。寂しいけど、いつまでも私の後ろに引っ付いてるわけにはいかないものね。


 それから私が行くならとテオが入学を決めテオが来るなら当然オズもと、結局みんな揃って仲良く1年生だ。

 余談だが、今年は王子が通うということでこれはチャンスとばかりに入学人数が跳ね上がったそうだ。



 あれからゲームのシナリオに変化があったことといえば、テオに弟が出来た。

 名前をエドワード君という。

 なんでもテオのたっての希望で王様と王妃様が頑張っちゃったらしい。

 アレンのことをいつも嫉しそうな目で見ていたから、兄弟が羨ましかったのかな?

 赤ちゃんなんて見るのは久し振りで王宮に遊びに行くたびに構っていたらテオが昔のオズの気持ちが分かったと少し落ち込んでいた。



 私のエルメライト領改革も進展し、少しずつだが平民の小学校への入学率も増えている。

 絹産業もシルクで作ったドレスが王妃様のハートを見事に打ち抜き、今では貴族のご婦人方に大人気の品となった。

 他国からの注文も来るようになり生産が追いつかないくらいだ。

 これはシルクロードが出来ちゃうんじゃないか!


 魔法についてもオズがアレンの指導のもと魔法剣を極め新しい戦法として国に認められた。

 3人で表彰までされてしまったのだけど、私は剣を燃やした前科しかないからなんだか申し訳ない。

 注意深く魔力と剣を扱わないといけないから実用化はまだまだのようだが、いずれこの国に魔法騎士団ができると思うと楽しみだ。

 ちなみに、誰でも使える4属性魔法の本は絶対に世に出すなと屋敷の金庫に封じられた。



 ……いやぁ、きちゃってるよね私の時代。

 6年後に処刑される運命なことを除けば、まさに順風満帆!!!


 そしてノリにノっている私は浮かれながら図書室までやってきたのだった。

 次のターゲットは魔道具だ。

 この世界、冷蔵庫やオーブンなど生活に必要な道具は魔力を込めた魔石を使って作られている。


 ことの発端はアレンと考えた『ドライヤー魔法』だった。

 髪を乾かすのにもせっせとタオルドライするしかなく、時間の無駄だし髪も痛むよね?と思った私は前世でも愛用していたドライヤーを再現することにしたのだ。


 風魔法を火魔法で温めて噴射。発想自体は単純なものだが気を抜くと火炎放射になって大変だった。

 危うく髪を焦がしかけた私は未だにドライヤー魔法使用の許可がおりずアレンに髪を乾かしてもらっている。


 このままでは駄目な人間になると危機感を感じ、それならいっそドライヤーを本体ごと作ってしまおう!と思ったのだ。

 ふつうは火魔法と風魔法の両方が使える人なんていないし、一般販売したら結構売れるんじゃないかとも目論んでいる。



 そのための第一歩として、魔道具を作るときの回路となる魔術の勉強に来たというわけだ。

 家や王宮にも馬鹿でかい図書室はあるけどここは初等部だし、『やさしいまじゅつのほん』みたいなのがあればいいな!


 それではいざ! オープン!!!


「……………」


 ピシャリ



 扉を開けるとそこには4人目の攻略対象がおりました。びっくりして閉めちゃったよね。

 いやぁ、やっぱり人って調子に乗っちゃいけないね。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 決して忘れていたわけではない。

 けれど、彼はここにいるはずがないのだ。

 深い緑の髪を一つに束ね、銀縁の眼鏡から黄緑色の瞳を覗かせる偏屈そうな少年。

 最後の攻略対象ユリウス・コールマンだ。


 ユリウスは私達よりも2つ年上で、エルメライト家と並ぶこの国の筆頭公爵家の息子だ。

 そしてロザリア唯一の天敵である。

 家柄もさることながら、1言えば100倍にして理屈を重ねて人の神経を逆撫でしてくるような男なのだ。

 間違いなく感情的になった女と一番争わせちゃいけないタイプだと思う。



 そんなユリウスは幼い頃からとにかく頭にあらゆる知識を詰め込んでいる。

 アレンが魔法の天才ならユリウスは秀才、といったところだ。

 暇さえあれば本を読んでいて滅多なことでは外にすら出てこない変人である。

 だから学園の初等部になんて用はないはずなのに、なんでここに……。


 落ち着け私。まだ顔も合わせていないのだからこのままここを立ち去ろう。

 1・2・3、せーの。



「ひゃあっ」


「お前……エルメライト家の者だな」



 落ち着けてたら扉が開きました。

 しかも完全にロックオンされている。詰んだなこれは。



「……ロザリア・エルメライトと申します。コールマン家のご子息がなぜこんなところに?」


「……お前が入学すると聞いて、父上に行けと言われたんだ」


「私……ですか?」


「お前は図々しくも当主の領地経営に口を挟んでいると有名だからな。いい刺激になるからと強引に編入させられたが……無駄足だったようだ」



 あぁー、そういうことか。

 ユリウスの父はこの国の宰相を務めている。

 そんな忙しい父親の役に立ちたくてユリウスは勉強にのめり込んでいったのだ。

 けれど父である宰相が彼に領地を任せることはなかった。

 父は父でユリウスにはのびのびと育って欲しいと思っていたからだ。

 しかしそんなことを知らないユリウスは自分は必要とされていないのだとどんどん捻くれて内向的になっていった。

 子供らしく育てたい父親と早く大人になりたい息子。

 なんてことはない、お互いに言葉が足りていないだけなのだ。



 そこで白羽の矢が立ったのが私、と。

 ……宰相様、藁にも縋りすぎでしょうよ。

 ヒロインに恋したあとですらこの調子だったのにどうにか出来るかこんなもん。

 むしろヒロインの方が仕方のない人ね、と折れていた。

 攻略掲示板におけるユリウス推しのファンも「1日一回ユリウスに罵倒されないと気が狂う」と言っていた猛者たちばかりだ。

 なので宰相様もとっとと諦めて親子喧嘩に私を巻き込まないでくれ。



「……それはご期待に添えなかったようで、申し訳ありませんでした」


「全くだ。今年は王子とその側近や天才魔法使いまで入学すると話題だったが、この分だとそちらもどうせ取るに足らない凡骨だな」



 カッチーン


 大人の対応で流してやろうと思ったけどやめた。

 私はいいけど、みんなのことまで言われるのは許せない。

 悪役令嬢ロザリアの天敵は私にとっても天敵だったようだ。


 こっちはあんたが意外と甘いもの好きでそれを隠してるとかも知ってるんだからね!! 覚悟しなさい!!!


ブックマーク&評価ありがとうございます。

頑張れます。


はい、決して学校の名前を考えていなかったとかではなくてですね、はい。


おかげさまで4人目まで登場させることが出来ました。

まだ完結まで先は長いのですが全速前進致します。

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