全面対決致します。
「アレン、あのね、アレンさえ良ければなんだけど……うちに来る気はない?」
「え……」
「エルメライト家はアレンに酷いことなんてしないって約束するわ」
お父様もお母様もわけを話せば喜んで歓迎してくれるだろう。
自信を持って笑いかけたが、アレンはあまりいい顔をしなかった。
それどころかなんだか泣きそうな表情になってしまう。
「……でも……僕は、人と違うから……みんな気持ち悪いって……ロザリアもきっと、僕のこと嫌いになる……」
「はぁ!? なにそれ、誰に言われたの!!!」
「……お屋敷の人たち……」
「信じられない……! アレン、ちょっと見てて!!」
こんっな可愛い子にそんなことを言うなんて許せない。ミリオン家絶対潰す。
けどその前にアレンの不安を取り除いてあげないと。
心を落ち着けて深呼吸をする。
絶対失敗するなよ私〜〜〜! ここで決めなきゃどこでやる!!
1人でもくもくと練習はしていたが人前で使うのは初めてだ。
若干緊張しながらも気合を入れて、風、火、水、土と順番に魔法を使っていく。
「いまのっ……ロザリアが……!?」
「はぁ〜〜…成功してよかった! へへ、誰かの前で使ったの、実はこれが初めてなんだ……ね? 私もアレンと一緒だよ、だから嫌いになんて絶対ならない……私と、来てくれる?」
「……っ、うん、」
堪え切れなくなった涙をぼろぼろとこぼしながら何度も頷くアレンを抱きしめて頭を撫でる。
なんだか弟が出来たみたいで嬉しい。兄弟って憧れてたのよね。
そしてそれと同時にアレンを泣かすような人間に怒りが湧いてきた。
首を洗って待ってなさいよミリオン伯爵家! アレンは私が絶対幸せにするからね!
◇◇◇◇◇◇
しばらくして、落ち着いたアレンの手を引いてお茶会会場まで戻ってきた。
さて、どうしてやろうかしら。
「ロザリア……姿が見えないと思ったら……何をしていたのか、説明してくれるかな?」
「テオ! いいところに! ねえ、ミリオン伯爵家について知ってることがあれば教えてくれない?」
とりあえず、まずは情報を集めよう。
敵を知り己を知れば百戦危うからずとは昔の人の言葉である。
アレンの傷をあまり人目に晒したくはないし、かといって家の力で強引に引き離すのは流石に他の貴族も黙ってはいないだろう。
「どうしたの急に……ミリオン伯爵家といえば、君が連れているその子のことが一番有名だよ。4属性を使いこなせる人間なんて他国を探しても見つからないからね、本当は王宮で保護したいんだけど……伯爵が首を縦に振らないんだよ、アレンの意思を尊重したいって」
「アレンの意思……」
「そう言われたら無理に引っ張ってくるわけにもいかないからね。屋敷に怪しい人間が出入りしてるとかの噂もあるからあんまり信用したくないんだけど……まぁ、あくまで噂だし。いずれは国の管轄である学園にも入学することだしってことで今は要観察中。あとは……3つ上に実子である長男がいるけど、そっちもあまりいい話は聞かないかな。」
「そっか……ありがと、テオ」
なるほど。流石テオよく知ってる。
初めから家の名前を上げるためだけにアレンを引き入れたってことで間違いないかな。
大方、あまり優秀ではない長男に家督を継がせるためにアレンを利用し甘い汁だけ吸おうとでも思ってるんだろう。救いようがないな。
「ところでロザリア」
「ん?」
「それ、いい加減離したらどうかな?」
それ、とさされた指の先にはアレンと繋がれた私の手。
なにか問題あるのかな? と思って顔を上げると、不安げな顔をしたアレンの手に力がこもった。
「あっごめんね、テオは味方だから怖がらなくて大丈夫だよ」
よしよしと頭を撫でる。ふわふわのくせ毛が気持ちいい。永遠に撫でていたい。
アレンも照れてはいるようだが嫌がってはいないみたいだ。かわいい。
代わりにテオがどんどん不機嫌になっていってる気がするがこの際気にしないことにする。
「随分懐かれてるみたいだね?」
「ほんと? そう見える? よかった! 実はアレンをエルメライト家で預かろうと思って!!」
「はぁ……また、突拍子もないことを……」
「おいテオ! お前!!! 俺を身代わりにしてんじゃねー!!! ……って、頭抱えてどうしたんだ?」
そういえばオズの姿が見えなかったなと思ったら、テオに全部押し付けられていたらしい。不憫な。
しかし丁度良いからオズにも巻き込まれてもらおう。
「あのね、2人にもちょっと手伝ってもらいたいんだけど……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お母様」
「あらロザリア、新しいお友達?」
私がアレンを連れてお母様のもとに行くとそれを目敏く見つけたミリオン夫人がこちらへやってきた。
向こうからやってきてくれるとは好都合だ。
「まぁ、ロザリア様、うちのアレンを気に入ってくださるなんて光栄ですわ。よろしければこの子の兄とも仲良くしてやってくださいませ」
「ロザリア嬢、アレンはあまり喋らないしつまらないだろう? そんな奴はほっといて私と向こうでお茶しましょう。……おいアレン、下がれ」
気安く私の肩を抱いてアレンを睨みつける馬鹿息子。名前は忘れた。覚える必要もないだろう。
親がこんなんでも子供に罪はないかもしれないなんて思っていたが、蛙の子は蛙だったようだ。
というか、こいつほんとに伯爵家の息子なの? 礼儀作法がなってなさ過ぎない?
「気安く触らないで。あなたとは親しくするつもりはないわ。私はアレンと一緒にいたいの」
「な、何故ですか…!? なんでアレンなんか……!」
「ロザリア様…!? 息子が何か粗相を致しましたでしょうか!?」
肩に添えられた手を払い除けた。不愉快だ。
是が非でも私と長男をお近付きにさせたいミリオン夫人が慌てだしたが、それならそれでせめてマナーくらい叩き込んでおけと言いたい。
喚く2人を無視し、意を決してお母様に向き直った。
「お母様、今まで内緒にしててごめんなさい。私もアレンと同じで4属性の魔法が使えるの。だから同じ境遇のアレンには公爵家に来てもらって、私のそばにいてほしいんです」
そう言った途端、会場は騒然とした。
ただでさえ貴重な4属性使い。それが同じ世代に2人もいるというのだから当然である。
私の言葉を全て信じたわけではないだろうが、それでも立場のある家の子供がまるっきり嘘をついているとも思ってはいないだろう。
さぁ、悪役令嬢ロザリアの本領発揮と致しましょう。
ブックマーク、評価などありがとうございます。
思いのほか長くなってしまったので切りました。
今日中に決着がつけられるよう頑張ります。