95話
追憶の広間を後にしてミニログハウスに戻り、ため息をつく。危うく悲劇が生まれるところだった。まさかモンスター百種類登録の特典が倉庫機能だったとは……
無限収納がなければ、非常にありがたい機能だっただろう。チャボさんの機転に感謝である。ロバさんも新たな目標ができて、やる気ができたようだしなんとか一件落着といったところか。
倉庫は元々アイテムを保存しておく場所なので、環境なんかも本に適した状態にできるようだったし、意外とありなのかもしれない。
あとはもう少し図書館らしくなるように、ちょこちょこ本を追加していってあげよう。
それにしてもチャボにねこ、いぬにロバか。なんだかブレーメンの音楽隊みたいだな。思い返せば、竜宮城や妖怪とか童話や昔話を元にした変化が世界に起きている気がする。
出てくるモンスター全てがそうではないが、この先の攻略のヒントになるのかもしれない。
(あの鬼だらけの島も、もしかしたら鬼ヶ島だったんじゃないか? 全く開く気配のなかった扉も、オトモが三匹必要だったとか……いや犬雉猿じゃないと開かないのかな、これは試してみないとわからないか)
カッパの相撲と言い、亀を助けたら竜宮城に連れていかれた件と言い、条件ドロップや隠しダンジョンへのヒントが昔話や童話、はたまた歴史や神話なんかにもあるかもしれない。
有名な話は知っているが、さすがに世界各地の細かいところまでは分からなかった。現実世界には攻略本がないと思っていたが、ヒントは人類の歴史にあったのだ。
もちろん、まだ確定したわけではないがロバさんの図書館のことを考えると、本を集めたりするのは無駄ということもない。これからは本屋や図書館も巡って、情報を集めていこう。
そして攻略に行き詰まったら、ロバさんにも協力してもらうこともできる。まぁレアポップのようなところは地道な活動が必要だろうけど、そういうゲーム的な部分は根気と運でなんとかなってほしい。
「よし、そうと決まればとりあえず本屋だ」
ミニログハウスを出てゼロに乗り、本屋や図書館を巡って片っ端から本を集めていく。それをロバさんの図書館へ持っていき、自分の考えを伝えると役に立ちそうな情報をまとめるのに協力してくれることになった。
追憶の広間には電気がきているようなので、筆記用具のほかにパソコンやプリンター、コピー機なんかもどんどん運びいれていく。
「うーん、大分いっぱいになってきましたね」
「本ってこんなにいっぱいあるんですね、これから忙しくなりそうです」
やる気に満ち溢れているロバさんだが、まだまだこんなものではない。しかし倉庫のスペースも有限なので、本の取捨選択は必要だろう。まぁ入れ替えは無限収納で簡単にできるし、まずは童話や昔話、日本の歴史を優先的に配置してまとめてもらおうか……
「まだまだここには収まりきらないほど本はあるんですよね……順次入れ替えが必要かもしれないです」
「そんなにあるんですか?! うー、でももうすぐいっぱいになっちゃう」
驚き、すぐにしょんぼりとするロバさんだったが、追憶のダンジョンや闘技場で戦えるモンスターが増えるように、モンスターを倒してアイテムの種類が増えていけば倉庫も広がる可能性がなくもないと自分は考えている。
「そうです! あたしもお手伝いするので人間さんはもっともっと、モンスターを倒してアイテムを集めてください!」
「もちろんですよ、元からモンスターだけでなくアイテムも全部集めるつもりです」
くくく、各地の避難所の協力にロバさんの図書館。そしてツリーを解放したことによって回復した通信網。段々と攻略の基盤が整ってきたぞ……
思わず笑いが溢れる。それにつられてかロバさんも、くふふと含み笑いをしている。
「なんだか邪悪な気配が漂っていますにゃ……」
「人間さん、怖いわん……」
「うふふ、楽しそうねぇ」
はっ、見られていたのか。なんだか恥ずかしくなる。ここは誤魔化しの一手だ。
「なんだかお腹がすきましたね、チャボさん何かお願いします」
「うーん、今日のおススメはハントンライスですね」
「お、最近食べてなかったなぁ。ハントンライス。食堂に行きましょうか」
「にゅふ、腕によりをかけて作りますよー」
食堂でチャボさんの美味しいハントンライスをいただいた後、追憶の広間に戻るとねこさんといぬさんがスススと音もなく近寄ってくる。
(追憶の広間の人の人間離れした動きはなんなんだ……まぁそもそも人間ではないのかもしれないが)
しかしお世話になっているのも事実だ。いや逆に結構お世話してるか? 持ちつ持たれつといった感じか。それより二人のこの顔は何かおねだりする時の顔だ。
「ん? どうしたんですか、二人揃って」
「んにゃー、人間さん。ロバがパソコン使わせてくれないんですにゃ」
「えこひいきは良くないわん」
どうやら二人ともパソコンがしてみたいらしい。そうか、ツリー解放の影響で何故かここもネットが繋がったからな。
喧嘩になっても良くないので、ここは渡しておくか。
「わかりました、でもやり過ぎ注意ですよ」
「もちろんですにゃ」
「大丈夫わん」
本当かなぁ。まぁ世界がこんな状況だし利用できるコンテンツは限られるだろうけど、ネットの中毒性は半端じゃないからな。漫画やゲームに夢中になった二人は少し心配である。二人がのめり込み過ぎないように、一応チャボさんにも気を配るようお願いしておこう。





