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94話

 ミニログハウスを取り出して追憶の広間に移動する。ねこさん、いぬさんがいつものように出迎えてくれた。


「いらっしゃいですにゃ」


「わん」


「こんにちは、何やら新しい機能が追加されたとか。さっそく来ました」


 まぁさっそくと言っても三日経つわけだが、何が追加されたのかと広間を見渡す。お、交換所側にとびらが一つ増えている。あの先に何かあるのか。

 するとその扉が開き、中から小さな女の子が出てきた。灰色の長い髪をポニーテールのようにまとめ、耳がピョコンと生えている。手には手袋をしてつなぎのような服を着ていた。

 こちらに歩み寄ってきて全身を観察するように見てくる。また図鑑の中に住人? が増えたようだ。


「あたしはロバ、あなたが人間さんですね」


「はじめまして、佐藤と言います。それでロバさん、新しい機能というのはなんなのでしょうか?」


「ふふ、ご覧にいれましょう。ついてきてください」


 そう言うとロバさんは先ほど出てきた扉へと歩いていく。言われたとおりついていき、ロバさんに続いて部屋に入る。

 部屋の中は結構な広さで三十畳くらいはあるだろうか。棚がいくつか置かれている以外、特に何もない。


「あのー、ロバさん。何もないんですがここはどんな部屋なんですか?」


「ふふ、百種類もモンスターを倒して、アイテムも大分たまってきたんじゃないですか?」


「そうですね。大分あります」


 各避難所で配るくらい大量にあるな。ドロップ率アップと無限収納のおかげだ。


「今まで、持ちきれずに諦めたアイテムはありませんか? 持ち運ぶ装備の取捨選択に困ったりしてませんか? しかし! この倉庫があれば、大量のアイテムを持ち運ぶことが出来、さらにモンスター図鑑からいつでもアクセスできるのです」


 腰に手をあて、ドヤという感じで胸を張るロバさん。どうしよう、凄く気まずい。確かに無限収納が無ければ非常に良いと思う。そう、自分には無限収納があるのだ……誤魔化してもいずれバレてしまうだろうし、ここは正直に話すとするか。


「あの、ロバさん。言いにくいんですが自分には無限収納というスキルがありまして……」


 説明すると、次第にロバさんの顔が哀しげに歪んでいく。うぅ、別に悪いことをしたわけではないが罪悪感が凄い。


「倉庫、いらない? あたしは、必要ない? うわぁーん!」


 とうとう泣き出してしまったロバさんは部屋を飛び出していき、追いかけるといぬさんに抱きついてわんわんと泣いていた。泣きじゃくるロバさんの頭を撫でながら、いぬさんが口を開く。


「はなしちゃったわん?」


「はい……いずれバレるでしょうし、下手に嘘はつかないほうが良いかと思って」


「しょうがないですにゃ。たまたま人間さんが無限収納を持っていただけのことですにゃ」


「あらあら、どうしたの?」


 なんとも居た堪れない感じになっていると、食堂からチャボさんが出てきた。事情を説明すると顎に人差し指をあて、んーと考えるポーズをする。

 しばらくすると何か思いついたのか、手のひらをポンと叩き、手招きしてこちらを呼ぶ。

 良い案が浮かんだのだろうか。近づくと耳に手をあててきてごにょごにょと囁かれる。ふんふん、なるほど。確かに良いかも。


「あー、そういえばここに持ち込んだ本も大分増えてきましたね」


「んにゃ? そうですにゃぁ。けどまだまだスペースはありまふぐ」


 は、速い。一瞬でねこさんの背後に回ったチャボさんが口を手でおさえ、代わりに喋り始める。


「うふふ、いつもありがとうございます。でも倉庫ができたおかげでまだまだ本が置けますね」


「本当ですね。そうだロバさん、本の管理をお願いしても良いですか? まだまだいっぱい本があるんですよ」


 ロバさんが泣くのをやめて、こちらの話に耳を傾けている。


「外の世界には図書館という場所があってですね、そこでは司書さんという職業の人が本の管理をしているんですよ」


「なる。あたし司書さんになる」


 ぐしぐしと涙を拭い、司書になる宣言をしたロバさんはさっそく本棚を倉庫に運びいれる。そのあとは追加で収納から本を出したり、どんな風に本を並べて管理するかを皆で話し合った。

 自分は司書の仕事といわれてもそんなに詳しくはないので、五十音順や出版社別、ジャンル別に並べたらどうかくらいしか提案できなかった。

 今度本の管理に関する情報を仕入れておこう。漫画や小説だけでなく、技術書や歴史書なんかも持ってこようかな。

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