92話
山小屋に帰りつくと山田さんとシュナイダー、他何名かが渡したランタンをつけて、自分の帰りを待ってくれていた。
「おかえりなさい」
「すみません、遅くなりました」
「いえ、大丈夫ですよ。まだ九時過ぎですからね。とは言え、最近は暗くなったら灯りの節約のために早々に寝てしまっていたので少し眠いですね」
「今丁度これまでの生活の話をしていたんですよ」
「かえって山の中で良かったかもって」
「確かにこの山は日中、モンスターもそれほど多くなかったですね」
異変当時はもっと人が居たようだが、人が減ったおかげで、今の山小屋の人たちが生き延びられたというのもあるだろう。
「そういえば、佐藤さんは何故旅をされているんですか?」
「確かに。あんなに強そうなモンスターを従えているなら、どこの避難所でも頼りにされそうだ」
「お話を聞く限り、政府の方とかではないんですよね?」
そういえば旅の目的は話してなかったか、自分の目的を説明すると皆ポカンとした顔をしている。大体の人が初めて説明すると、こんな顔をしたり、呆れたり戸惑った感じになる。
でも自分以外にも結構いるとは思うんだよな。モンスター図鑑のあるなしはわからないが、ゲーム好きならレベル上げやアイテム収集して楽しんでいる層は一定数存在するはずだ。
「まぁでも、そのおかげで私らも助かりましたからな」
「そうですね、今の世の中では佐藤さんのように積極的にモンスターと戦ったほうが、生き延びられるのかもしれません」
雑談も日付が変わる前にお開きとなり、明日に備えて寝ることになった。
翌朝、荷物を収納で預かりゼロに乗り込んでもらう。うーん、ちょっと安定性に欠けるか?
三十人を超えると、どうもバランスが悪い。万が一落ちたら一大事だ。見栄えは悪いが粘着糸で固定しよう。
ゼロは嫌がったが安全のためだと説得すると、渋々納得してくれた。ここから目的地までは、ゆっくりとんでも今日中に着けるだろう。
お昼過ぎ頃、目的地の避難所にたどり着いた。山小屋の皆を下ろし、荷物を収納から取り出して渡していく。
最近来たばかりなので、避難所の人たちも自分のことを覚えてくれていて声をかけてくる。
「あ、龍のお兄ちゃんだ!」
「佐藤さん! 銭湯にエルフのお姉さんがいるって本当なんですか?!」
「あーほんとだ。佐藤さんじゃん。ねーねー、シュナイダーちゃんは?」
「エルフについて詳しく!」
大体の目的が笹の湯のことかシュナイダーで、ゼロは男の子たちに群がられている。まずは用件を済ませたいので、山小屋の人たちを案内してから対応することにした。
「すみません、新しく人を連れてきたので先に案内させてください」
事情を話すと、避難所の人たちが山小屋の人たちを歓迎してくれる。そのまま会議室まで案内をして、まとめ役の中井さんに引き継ぐ。この後は名前と住所を書いたり、聞き取りをして仕事を割り振られたりだろうし。
「佐藤さん、後は任せてください」
「お願いします中井さん。山田さん、自分はこれで失礼しますね。皆いい人たちなので、安心してください」
「佐藤さん、本当にありがとうございました」
会議室から出るとシュナイダーと遊びたがる女性たちと、エルフにやたら食いついている人たちに捕らえられる。もてもてのシュナイダーに女性の相手を任せ、自分はエルフスキーたちの質問に答えていった。皆仕事は良いのだろうか……お昼休憩中だから大丈夫だそうだ。
休憩時間も終わったようで解放される。女性たちは笑顔で、エルフスキーたちは何やらやる気に満ちあふれた様子で去っていった。
建物を出てゼロのところに戻ると、若干疲れた様子でこちらを見てくる。律儀に子供たちの相手をしてあげていたようだ。
「ゼロおまたせ、ありがとうね。みんなーそろそろ行くから離れてね。危ないよ」
「えー、もう行っちゃうの?」
「もっと遊びたいー」
「ブレスー! ブレスはいてー」
いや、ブレスはいかんでしょ。大変なことになるよ。飴ちゃんを渡してまた来る約束をし、子供たちを解散させると、ゼロに乗り南西を目指して飛び立った。





