9話
翌朝、目覚まし時計を止めて起きる。時刻は午前7時。顔を洗い、朝食を済ませなんやかんやしていたら丁度いい時間になった。
そっとドアを開けると、お馴染みのゴブリンがポップしていた。もはやパターンと化した手順で消えてもらう。
(ノーマルゴブリンは弱いわりにドーピングアイテムを落とすし、実は結構美味しい相手なのかもな。棍棒はこんなにいらないけど)
2人と合流し、ゴブリンがポップする度に狩る。そんな日々を2人がレベル5になるまで繰り返した。
「うーん、まさかそに君がこんなに強いとは思いませんでしたね」
それは訓練に、武器を持ったゴブリンと戦いたいと木下さんが言った時だった。ゴブリンの攻撃を受けて、転んでしまった木下さんを助けようと、そに君が丸まって体当たりしたかと思うと、針を伸ばして串刺しにして倒してしまったのだ。
それからは、宮田さん木下さん、そに君パーティでゴブリンを倒すのを見守るだけだった。
(人間2人より強いハリネズミとはいったい……)
そして、2人のレベルが5になり避難所へ向かうことになった。
「それじゃ、行きますか」
「「はい」」
避難所の学校は、街中の方にあるためホームセンターとは逆方向になる。異変が起きてから向かうのは初めてだ。
警戒しながら進むと、街の中心部に向かうにつれてゴブリンたちとの遭遇率が増えてきた。
「なんか、一度に出てくる数も増えましたね」
「私1人じゃ絶対無理でした」
「避難所は大丈夫なんでしょうか?」
敵には、アーチャーやファイター、シーフ、メイジも混ざってきているが、武器没収でかなり戦力ダウンさせられるので今のところ問題無い。唯一メイジだけが素手でも火球を使ってくるため、自分が優先的に倒している。
(しかしここら辺は本当にゴブリン系しか居ないな、敵の分布が分かるスキルってないかな)
レベルが上がった2人も、ゴブリン系の敵には苦戦することなく対処できていた。
しばらくすると、学校が見えてきた。校門に2人の男性がいる。あちらも気付いたようだ。
「こんにちは、避難してきたのですが、中に入れてもらえますでしょうか? 」
「君たち! 外は危険だ、中に入りなさい」
「あんたたち良くここまで来られたな。とりあえず、入ってくれ。大変だっただろう」
「ありがとうございます」
すんなりと受け入れられる。校庭にはテントが張られ、結構な人数が居るように見える。気になって聞いてみる。
「ここには、どれくらいの人が居るんでしょう?」
「今は、1000人くらいだな」
刺又を持った50代くらいの男性が答えてくれる。この街の人口が15000ほどなので、かなりの人数が避難できているようだ。
「現在も警察、消防、有志の方々で救助活動を行っているのですが、物資の調達も必要ですし中々捗っていません」
警棒を腰に挿した、30代くらいの男性が教えてくれる。こういう避難所に指定されているところには、災害時に備えての食料が備蓄されていると聞く。しかし人数が多いので、いつこの異変が解決するかわからない今、食料の確保は死活問題だろう。後もう一つ、気になったことを聞いてみる。
「皆さん、テントを張られて生活されているようにみえますが、モンスターは大丈夫なんですか?」
「最初は屋内が安全ってことで、校舎や体育館で過ごしていたんだがな、どうやら奴らこの学校の敷地内にはでてこんらしい」
「人数も多く、皆さんストレスが溜まるようで、揉め事が起きるよりはと外で過ごされる方もいらっしゃいますね。もちろん、万が一に備えて見回りは行っています」
屋外ならどこにでもポップするわけではないのか……さしずめ、この避難所はゲームでいうモンスターの出ない街の中って感じか。侵入もしてこないようだし、本当にゲームみたいだ。
そうやって話しながら歩いていると、校舎内の会議室に通された。何人かが忙しく動き回っている中、机に座り書類に目を通しているメガネをかけた男性の前に案内された。
「後藤警部、外から来られた新しい避難者の方を案内しました」
「吉田君、ご苦労様。田中さんもありがとうございます。持ち場に戻ってください」
「はっ!」
「おう」
そう言うとここまで案内してきてくれた2人は、来た道を戻っていった。自分たちも案内のお礼を告げ、後藤警部と呼ばれた男性と向き合う。
「どうぞ、お座りください。避難されてきた方々にはここでまず名前と住所を登録してもらっています」
そう言ってノートを差し出す後藤警部。順番に記入して返すとチェックし、結構ですと言う。
「さて、外からやってきてお疲れかとは思いますが、話を聞かせていただきたい。あなたがたはあのモンスターと戦うことができるのですか?」