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88話

 翌日、再び輿に揺られて一階の広間まで運ばれた。どうやら帰るまではお客さんということらしい。広間には乙姫がいた。竜宮城の主自ら見送りしてくれるのだろうか?


「来たか。どれ、ちょっとこっちにこい」


 乙姫が手招きしてくる。なんだろうと訝しみながらも近づくと、乙姫はどこからともなく箱を取り出してこちらに差し出してくる。箱は縦横三十センチ、高さ十五センチくらいでさほど重くない。漆塗りのような艶のある黒に金で波のような装飾がされており、朱色の紐で閉じられていた。


「これは、もしかしてアレでしょうか?」


「玉手箱、中身は開けてみてのお楽しみじゃな。ここに来た者に渡すことになっておる。おぬしが最初の一人じゃ。犬の子の分もあるぞ」


「なんだかお土産まで貰ってすみません。()()来ますね」


「クフフ、そんなに妾に遊んでほしいのかえ? よかろ、おぬしの再訪、楽しみにしておるぞ」


 扇子で口を隠しながらにやけた乙姫が、わーぷげーとはあそこじゃ、と指差す。そこにはツリーの展望台で見たのと同じ石板があった。手を触れて全員の登録を済ませ、ワープ先を見るとツリーゲートとニライカナイゲートの二つがあった。はて、ニライカナイゲートとやらには行った覚えがないが……


「ああ、ニライカナイはここを出る時に通じる場所じゃな。もし初めてここに来た時に他のわーぷげーとを登録していないと困るじゃろ? 亀子も案外と忙しいしの。竜宮城から一度飛ばなければニライカナイはたどり着けんようになっておる」


 なるほど、一度はあの亀を助けてくる必要があるわけか。それで次からはそのニライカナイか他のゲート経由で来いってことか。大方ツリーの時のような謎の見えない壁でたどり着けないのだろう。


「ほう、見てもいないのに、おぬし中々理解が早いな」


「ショートカット開通には結構よくあることですよ。それとナチュラルに思考を読まないでください」


「ふふ、ではな。あまり待たせてくれるなよ?」


 全然人が来なくて暇なのじゃ……と乙姫は最後に言い残して消えていった。まぁ、そりゃあそうだろう。皆変わり果てた世界で日々を生きるのに必死なのだ。平和な世界でモンスターも襲ってこなければ、ここは大人気な観光地になりそうだけどな。


 石版に手を触れると、青い光に包まれて一瞬意識がとぎれる。気がつくと花畑の中に立っていた。辺りを見渡すとどうやらここは小高い丘なようで、遠浅のラグーンが島の周りに広がっているのが見える。花畑には蝶が舞い、背後にある森からは鳥たちのさえずりが聞こえてくる。

 さらにモンスターの反応もない。楽園のような島だった。竜宮城には二十四時間も滞在していなかったが、緊張がとけ、気が抜けて地面に座り込む。


「ふぅー、あの最初はもてなすってルールがなければ危なかったな」


 シュナイダーが暴れなくて良かったと言っている。本当にそう思う。かなり強くなった気がしていたが、まだまだ強力なモンスターがいるようだ。タツノオトシゴや人魚は倒せたかもしれないが、乙姫だけは今までのモンスターと格が違った。こちらの心を読み、神出鬼没、しかもあの動きを封じてくる技だ。まだ他の力だってあるだろう。さらにはモンスターながら言葉を話し、まるで人間のような振る舞いまでする。

 見た目だけなら綺麗系の黒髪美人だったが、押し倒された時の、ちっぽけな物を見るような蒼く光る目、先の割れた長く赤い舌……思い出すと背筋がぞわぞわする。


「だけどアレを倒さなくちゃ、モンスター図鑑はコンプリートできないんだ。それにもっと強いのもいるかもしれないしね」


 ゼロもシュナイダーも燃えている。二人とも結構負けず嫌いだから悔しかったのだろう。頼もしくなる。


「とは言えレベルを上げるだけじゃ勝てないよな。やっぱり対策を練らないと……」


 今わかるだけでも乙姫はワープ、読心、こちらの動きを封じる何かを使う。どれか一つでも厄介なのに、さすがは隠しダンジョンの主といったところか……

 結局は地道にモンスター図鑑を埋めてスキルスクロールを集めたり、レベルを上げていくしかないか。そこで貰った玉手箱の存在を思い出した。収納から取り出して目の前に置く。開けないのかとゼロとシュナイダーに言われるも、日本人であれば大体は知っているあの結末が、開けても大丈夫なんだろうかと思わせる。

 収納の簡易説明を見ても、開けてのお楽しみとしか書いていない。さらに一点もののアイテムっぽいので、使ってなくなったら再取得できないかもしれない。


「ダメだ、一旦保留にするよ」


 今は西日本の残りを攻略していこう。マップスキルで確認すると、ニライカナイは亀子を助けた島から南東に位置していた。ゼロに乗ってひとっ飛びで戻り、お城を観光してヴォルケイオスと遭遇した火山まで戻ってきた。かなり派手に戦ったので密かに気になっていたのだ。

 幸い街には大きな被害はなさそうで安心する。次に火口を確認しに行くと、火口の中に石板の台座があった。


「あれ、石板なんかあったっけ? 前回の戦いの最中は気がつかなかったな」


 ゼロも見覚えがないという。ヴォルケイオスを倒したからか? そういえばあの硬い再生するゴーレムもいなかったな。自分は追憶のダンジョンで戦えるから良いけど、他に戦いたい人はどうするのだろうか……

 とにかく登録しておこう。これで三ヶ所目だし西側の移動は結構楽になりそうだ。北にもワープゲートがあったりしないかな……当時は存在を知らなかったし見落としてるかもしれない。今度また行ってみよう。

 石板に手を置くと、火山が震えだし地面が盛り上がりだした。

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