85話
やっぱりダメだったよ……。結局自分の最終的な順位は三位だった。おかしいなぁ、運が良くなるはずのウサギの尻尾を装備してまでプレイしたのに、次から次へと危険なイベントマスに止まることになるとは。最後はスラム街の住人になってしまった。
一位はねこさんで、行商中モンスターに襲われてもベテラン冒険者に助けられたり、手に入れたアイテムがことごとくレアアイテムで、それで国の危機を救って英雄になって王子と結婚したりと、見事なまでのシンデレラストーリーを駆け上がっていった。
二位はいぬさんで看板娘として宿屋を盛り立て、常連のイケメン冒険者を捕まえて子宝にも恵まれ幸せな生涯を送った。
そして一番強そうなキャラメイクができたチャボさんは、まさかの最下位だった。最初に運を使い果たしてしまったのか、その後は怒涛の転落人生を送ることになった。最初のイベントマスではオークキングにくっころ展開になりかけ、冤罪を着せられたあげく国を暴走した魔力で滅ぼしかけた。最後は魔力を封じられて王城の塔に幽閉である。
「どうしてこうなったの……」
「やりましたにゃ! 一位ですにゃー」
「普通に暮らしてたら、二位になったわん」
「いやー、結構面白かったですねこれ。たまにはアナログも良いもんだ」
上位二人は手を取りあって万歳して喜んでいる。一方で強キャラ感をあふれさせていたチャボさんは、両手を地面につきまさかの敗北にダメージを受けている。
まぁ結構意地悪なマスが多かったからな、チャボさんのスタート地点周辺は。生まれや能力が良いとハンデとしてなのか厳しいマスが多い。そうやってゲームバランスをとっているのかもしれない。
しかしやたら姫騎士を失墜させようとする意思を感じるマスが多かった。もしかしたら製作者の趣味なのかもしれない。
さて、良い時間だしそろそろ戻って寝ようかな。勝利の勝鬨をあげるねこさんいぬさんと、その二人を見てハンカチを咥えるチャボさんに別れの挨拶をする。
「キリも良いし、自分はそろそろ戻って休みますね。今日は楽しかったです」
「おやすみなさいですにゃ」
「また来るわん」
「おやすみなさい、またご飯食べに来てくださいね」
三人に見送られミニログハウスに戻る。どうやらシュナイダーも謎空間でそのまま眠りについたようだし、今日は夜の探索はせずにこのまま休もう。布団を敷いて潜り込み目を閉じた。
次の日の朝、支度を済ませて簡単に朝食をとり今日の予定を立てる。市街地は昨日行ったし、今日は他の場所でも探索するか。
ゼロに乗って探索をすると、丘の上に黒いオークがいるのを発見した。急降下して強襲し蹴散らしていく。
95番 ブラックオーク アイテム1 ラフテー アイテム2 ミミガー
黒いオークか、ノーマルオークは進化の宝玉で変化がなかったけど、これは上位種とかじゃなくて親戚みたいなものなのかな。
次に遭遇したのはパイナップル型のモンスターだ。生命感知でモンスターだと気づいたが、見た目はそのまんまパイナップルの木で畑のように綺麗に整列して並んでいる。アップルトレントのように歩き回っていないので、感知スキルがないとモンスターだとわからないだろう。
こういう擬態しているモンスターはだいたいカウンターを仕掛けてくる。上空から魔法で攻撃すると、弾けた外皮がこちらまで飛んできた。ゼロの硬い鱗と甲殻は貫けなかったようだが、上空まで届く弾け具合だ。中々のスピードだろう。生身の人間が食らえばただでは済まない威力だ。
距離を取って上空から魔法でパイナップルを処理していく。
96番 パインボム アイテム1 ゴールドパイン アイテム2 手投げ弾
パイナップルは好きだが、手投げ弾は使うことあるかな……小型ミサイルの威力は凄かったが、魔法もあるし今となっては黒龍剣もあるからなぁ。試しにブラックオークに投げてみると、一撃で倒せた。威力はそれなりにあるな。
そのまま休憩を挟みながら夜までモンスターを狩ってまわったが、特に夜限定のモンスターには出会わなかった。あとは明日から海と離島を探索して、せっかくここまで来たし有名なお城でも見て帰ろうかな。





