79話
「おうおう、あんちゃん。横入りはやめてもらおうか? そいつらは俺たちの獲物だぜ」
パンチパーマにサングラスをかけた開襟シャツの男が前に出て言ってくる。また何か勘違いされてる気がするぞ。門の中で腰を抜かしている避難所の人、大量の食料、たたずむゼロとシュナイダー。もしかして自分もたかりだと思われてる?
「業田のアニキはレベル20をこえてるんだ。 大人しくその食料を渡してどっかいきな。今ならまだ見逃してやるぜ?」
取り巻きがやんややんやと言ってくる。どうしよう面倒くさい。とりあえず食料は一旦収納しなおして、連中の手に持っている危ない物も没収しておく。ついでにちょっと埋まっておいてもらおう。頭だけだして地面に埋める。ヤバい、さらにうるさくなった。
「ゼロ、ちょっと静かにさせて」
埋まっているチンピラたちにのしのしとゆっくりゼロが近づいていき、顔をおろしてチンピラたちの顔に鼻息を吹きかけていく。
「ひぃ、どうするつもりだ」
「あにき〜」
「かーちゃん、俺悪い子だったよ……ごめんよ」
(えぇ、今更ゼロにビビるのか。なんで出てきたんだ? 見えてただろうし隠れてたら良かったのに)
ゼロが顔を近づけ口を開けたり、鼻息を吹きかけると次第にチンピラたちは大人しくなっていった。何名かは気を失っているようだ。
業田のアニキとか呼ばれていた人物は辛うじて意識がある。近づきお話ししてみることにした。
「こんにちは、まず勘違いされているようなので説明すると、自分はここの避難所の人に情報提供を求めて交渉していただけです。先ほどの食料はこちらが交換条件に渡そうとしていたものです。あなたたちのようなたかりではありません」
「けっ、なんだよ。それじゃあこっちも用はないぜ、何もしないから出してくれ。あと武器も返してくれよ」
「まぁ自分に被害はなかったので出しても良いんですが、その判断はここの人にお任せしようかと思います」
そう告げて門まで戻り、避難所の人たちにどうするか聞く。どうやらまだそれほどの被害はなく、今までは食料を少し渡せば大人しく帰っていったそうなので武器だけ没収して解放しても良いと言う。食料を渡したせいで、調子に乗って要求がエスカレートしていったっぽいな。責任の取れない餌付けはダメってことだ。
そういうことなので掘り起こして解放してやると、チンピラたちは悪態をつきながらも大人しく去っていった。
「良かったんですか? 連中また来るかもしれませんよ?」
「ええ、しかし連中を拘束しておく余裕もありませんし、さすがに殺してしまうというのも……」
「まぁそうですね。被害もまだ食料だけというなら……レベルも上がっているんだったら自分たちでモンスターを狩れば良いのに」
理解できない連中だった。邪魔が入ったが交渉の続きをさせてもらおう。
「それで情報提供に関してなんですが……」
「そうでした。佐藤さん助かりました。疑ってしまい申し訳なかったです。どうぞ入ってください」
避難所の中に案内され、会議室のような場所で門番の人やまとめ役の人たちに改めて自分の目的を説明し、ついこの間まで滞在していた避難所との間を取り持つ。食料も色々と提供すると、快く協力を約束してくれた。
「佐藤さんのおかげで希望がわいてきました。なんと御礼をしていいか。今日は是非ゆっくりしていってください」
「全国の避難所間での連携も進んでいるようですし、世界は変わってしまいましたが案外なんとかなるかもしれませんね。人間ってのはたくましいですよ」
「はははっ、そうですね。でもそれも佐藤さんのおかげだと思いますよ」
「いやー、図鑑コンプリートは自分一人の力じゃ厳しそうだったので、なりゆきでこんな感じになっただけです」
「それじゃあそのモンスター図鑑に感謝しなきゃですね」
確かに最初のスキルにモンスター図鑑がなければ、自分から積極的に旅に出ることもなかったかもしれない。ゼロやシュナイダーとも出会わなかっただろうし、各地の避難所の人たちとも知り合わなかっただろう。人生何が起こるかわからないものだ。
「そうだ佐藤さん。今日の夕飯は期待して良いですよ。ここの調理班には有名旅館で板長をしていた人がいるんです。佐藤さんにいただいた食材があるので、久しぶりに豪華な食事ができそうです」
「へー、楽しみですね」
「さらに板長さんは調理スキルというのを覚えていて、同じ食材でも人より美味しく調理できるようですよ」
「調理スキル?」
「ええ、避難してくる間にモンスターを倒したら覚えていたそうです。やむを得なかったとはいえ、仕事道具の包丁で食材でないものを切ったと嘆いていたようです」
調理スキル、そういうのもあるのか……今まで調達班なんかの戦闘する人たちにはどんなスキルを覚えているか聞いたことがあるが、非戦闘員の人には聞いてこなかった。自分も異変前は簡単な自炊はしていたが、最近はドロップのオニギリや避難所でふるまわれる食事、そして何よりチャボさんの食堂で食べる機会が多かった。これは確認しなければならない。





