74話
一旦赤龍狩りをやめて、レッドカープの湧く滝の側にミニログハウスを取り出し中に入り追憶の広間へとむかうと、いつものようにねこさんたちが出迎えてくれる。
「今日はどうするんですにゃ?」
「追憶のダンジョンの第一階層に行きたいんです」
「かしこまりましたにゃ」
ダンジョンへと続く扉が開かれ足を踏み入れた。すぐにゴブリンを見つける。今さら第一階層で何をするんだ、アイテム集めかとゼロとシュナイダーに問われる。
「いや、モンスターに進化の宝玉を使ってみようと思ってね。進化したゼロはめちゃくちゃ強そうだろ? きっと倒したら良いアイテムを落とすと思うんだ。でもかなり強そうだし、弱めの敵からお試しでってこと」
もちろん効果の無いモンスターもいるだろうし、野性のモンスターには宝玉が使えないかもしれない。しかし試すだけならただみたいなものだ。上手くいけば図鑑も埋まるし、新しいアイテムも手に入る。
ということで早速、第一の協力者のゴブリンには実験体になってもらおう。
「シュナイダー、もしかしたらゴブリンでもかなり強くなるかもしれないから、油断しないようにね。ヤバそうだったら煙玉投げるから撤退しよう。ゼロは大部屋以外は待機になると思うけど、よろしくね」
二人に説明し終え、透明化をかけてゴブリンに接近する。棍棒を収納で奪い、慌てるゴブリンを足払いで転ばせて進化の宝玉を当てると、使用するかどうか聞かれる。
どうやら野性のモンスターにも使えるようだ。イエスと答えると、ゴブリンの身体が光り輝き進化が始まる。
進化したゴブリンは、乱れた長い髪の生えた頭に赤い帽子を被って手には斧を持ち、足にはブーツのようなものを履いている。
血走った目でこちらを見つけると、奇声をあげながら斧を振りかぶり走ってきた。
追尾と蓄雷をかけたトライデントを、十本ほど強化投射で放つ。赤帽子は斧でトライデントを何本か弾くも、さばききれずに直撃を受けて倒れ消えていく。
82番 レッドキャップ アイテム1 血染めの帽子 アイテム2 体力の結晶(中)
「ゴブリンだと進化してもこんなもんか……しかしアイテム名が物騒だな」
血染めの帽子は被ると、痛みに強くなり力と敏捷が増すと書いてあるが、名前的になんだかヤバそうなので装備するのは保留しておく。
他の協力者を求めて第一階層をうろつくも、ゴブリン系のモンスターは、棍棒を持ったゴブリン以外進化することはなかった。
しかし意外だったのはキラーラビットで、ラッキーラビットになるのかなと思いつつも進化の宝玉を使ってみると、黒い身体に赤い瞳を持つ姿に進化した。
「お、ラッキー……って」
一瞬何が起きたかわからなかった。目の前から黒ウサギが消えたかと思うと、首に痛みが走る。岩石鎧を貫通し、首が浅く切れ血が流れていた。
咄嗟に動かした右手には暴れる黒ウサギがいる。とんでもない速さだ。放電でトドメを刺し、治癒で傷をふさぎ岩石鎧をかけなおしておく。
83番 ブラックリッパー アイテム1 上質なウサギ肉 アイテム2 敏捷の結晶(中)
ブラックリッパーは防御や耐久は大したことがなかったが、あの速さと攻撃力は恐ろしいものがある。できればあまり相手にしたくないな……あれが普通にポップしている地域があるのだろうか?
幸いドロップは一発で回収できたので気を取り直して作業を再開した。
結局、第一階層での収穫はレッドキャップとブラックリッパーの二体だけだった。一旦ダンジョンを出て、良い時間だったのでチャボさんの食堂で晩御飯を済ませる。
満腹になり広間に戻ると、ねこさんといぬさんがこの間来た時に置いていった映画を観ていたので、つい一緒になって観てしまう。
チャボさんも食堂から出てくると映画を観始めた。主人公がジョッキに生卵を大量に入れて飲むシーンで、なぜかチャボさんがはぁはぁと息を荒らげていた。
やがて映画が終わるとねこさんが拍手をしながら立ち上がる。
「うにゃー、面白かったですにゃ」
たしかに名作だ。そのままやたらとキレのある動きでシャドーボクシングを始める。パンチが速すぎて見えない。
そんなねこさんをよそに、いぬさんは次の映画をセットして再生を始めた。
「次はわたしの番」
いぬさんの好みはファンタジー映画のようで、指輪を捨てにいく物語を選んだようだ。面白いけど結構長いんだよな。
時計を確認すると結構いい時間になっていたので、三人に明日も来ると告げミニログハウスに戻り休むことにした。





