67話
「呪いの装備か……ゲームだったら効果は強力だったりするけど、現状じゃ使えないな」
ガシャドクロのドロップは見事に呪われていた。呪骨面なんて外せないと書いてある。果たしてこの説明を見て、装備する人間はいるのだろうか。
呪骨槍は投射で飛び道具として使えなくはないといったところか。
今日の夜の探索はここまでにして、ミニログハウスを出して休むことにする。ゼロもシュナイダーも消耗しているし、自分も疲れた。
翌日からは山地の探索を始めた。森の上空を飛んでいると、カラスの顔と翼をもった山伏の格好をしたモンスターが三体現れ、中級風魔法の竜巻で攻撃してきた。
ゼロが竜巻の間をくぐり抜ける。すれ違いざまに追尾をかけた弓で攻撃するが、カラスの持つ剣で切り払われてしまう。
「殴ったほうが早いかも。ゼロ、突撃だ」
カラスはスピードを上げたゼロの速さについてこられず、一噛みで粉砕される。
そのまま残りの二匹もゼロにモグモグされて倒された。ゼロの口内に残ったドロップを回収する。
72番 烏天狗 アイテム1 スクロール(剣術) アイテム2 スクロール(中級風魔法)
うーん。どちらも取得済みのスキルだ、シュナイダーは剣術を覚えていないので渡してみる。取得できたようなのだが、どうやって剣を待つのだろうか? 疑問に思ってシュナイダーに聞くと、剣を貸してと言われ、収納からゴブリンソードを取り出して差し出す。
シュナイダーは剣の柄をくわえて、なんだかかっこいいポーズをとると、どう? と聞いてくる。
「おー、なるほど。かっこいいよ」
ただすごくアゴが疲れそうだ。ゼロもやりたいというので、身体のサイズ的にデカイ鬼斬り包丁を渡す。それをくわえてポーズを決めるゼロ。シュナイダーも良いねと褒めている。
「たしかに決まっているんだけど、ゼロだったら噛みついたほうが強そうだね」
そう言うと、カランと口から包丁を落としうなだれるゼロ。しまった。バッドコミュニケーションだ。
シュナイダーもそれはいかんでしょといった顔で見つめてきた。
「あー、いやなんというか。ゼロはそのままでかっこいいというか、生まれ持ったワイバーンとしての魅力が強いから、武器が負けちゃってるんだよ」
ついつい率直な感想をのべてしまい、ゼロを落ち込ませてしまい反省する。わりと繊細なところもあるのを忘れていた。
なんとかフォローしつつ探索に戻る。次の目標は山頂にある大岩だ。あそこから未登録のモンスターの反応がある。
烏天狗たちを倒しながら大岩にたどりつくと、赤い顔で鼻の長い、いかにも天狗ですといった感じのモンスターが手に杖を持ち、胡座をかいて座っていた。
こちらが近づくと、どこからか取り出した法螺貝を吹き、取り巻きの烏天狗を呼ぶ。シュナイダーが烏天狗は任せろと言うので、こちらは天狗に集中することにする。
とりあえずの追尾魔法を放つが、天狗にあたる直前で軌道が不自然に曲がり、大岩に着弾する。
(なんだ? 相殺とか撃ち落とされるでもなく、軌道をかえられた?)
接近して叩くしかないか、と突撃する。スピードを上げ天狗めがけて飛ぶゼロだったが、今度は噛みつく直前で天狗の姿が消える。
生命感知にも反応がない。いったいどこへ消えたのかと周囲を警戒する。直後、生命感知に反応が復活する。
(後ろか!)
振り向きざまに鬼斬り包丁を振り抜くが、天狗の持った杖で受け止められる。力が拮抗する。
(まじか、こっちはレベル100を超えてるうえに強化魔法とチャボさんの料理も食べてきたんだぞ!)
ガシャドクロ戦でもハンマーの一撃で地面にクレーターを作るほどの力なのに、なんだこの天狗は。あらかじめかけていた反雷がきいている様子もない。
武器を奪えないかと、杖に収納をためしてみる。すると、天狗の手から杖が消え隙ができる。その隙を見逃さずすかさず斬りつける。
天狗の右肩からわき腹にかけて斬りつけるが、手ごたえが浅かった。しかし確実にダメージは与え、武器も奪えた。
追撃しようとするが、現れた時同様天狗はこつぜんと姿を消す。再び反応が戻ると、天狗は大岩の上で手で印のようなモノを組み始めた。
あたりに強風が渦巻き、空には雲が立ち込める。段々と風は強くなり周辺の木々や石、を巻き込んでついには周囲をとりかこまれてしまう。
まるで竜巻や台風の中心に閉じ込められてしまったようだ。このままではマズイ、止めようとまだ印を結ぶ天狗に魔法を放ちながら突撃する。
天狗は他のことに力をさく余裕がないのか、先ほどとは違って魔法の直撃を受けている。しかし決定打にはなっていない。
(間に合え!)
ナイトランスを構え突撃する。あと少しで天狗を串刺しにできる、その瞬間。空から光の柱が降ってきた。





