63話
次の日、闘技場で口寄せを使ってみた。すると気がついたら追憶の広間に立っていた。
「あれ? おかしいな。まだ戦闘中で口寄せを使ったばかりなんだけど……」
ゼロやシュナイダーに聞いてみても、何も覚えていないという。どういうことだろう。もしかして負けてしまったのだろうか。
ねこさんが闘技場の様子を見ていたはずなので、何が起こったのか聞いてみるか。広間を見渡すとねこさんといぬさんは、ソファーの上で抱き合って震えている。
「あのー、ねこさん。気がついたら広間に戻ってたんですけど、もしかして自分は負けてしまったんでしょうか? 口寄せの前後の記憶がないんです」
問いかけてみるが反応が返ってこない。二人はブツブツと何かを呟きつづけている。よく聞きとれない。
(なんだろう。ドン引きするほどエグいやられ方したのかな。でもクイーンワスプ相手だったし、後れはとらないと思うんだけど……)
もしかしたら、口寄せでこちらの不利になるモノを呼び出してしまったのかもしれない。しかし何が出たかと思い出そうとするが、記憶にモヤがかかったように思いだせない。負けた後遺症だろうか。
とりあえず二人をこのままにしておくのもアレなので、チャボさんに報告だけでもしておこう。
食堂に居たチャボさんに事情を説明すると、広間にやってきて二人の様子を見てふんふんと頷いている。
「話しかけてもずっとこの調子なんです」
「何かに怯えているようです。とにかく呼び戻して話を聞いてみましょう」
そう言うとチャボさんは、二人の背中に手を当てて活を入れる。
「覇ァッ! 」
「ごふっ……あれ? チャボねぇ。どうしたの? 」
「お姉ちゃん、痛い」
二人共ショックのせいか語尾がない。事情を説明して闘技場で何があったか聞くと、二人はまた震え出した。
「怖い、いけない、あれは呼んではいけないモノですにゃ……」
「クゥーン」
何やらもの凄く怯えている。正気を失ってしまった二人をチャボさんが再び呼び戻す。
様子を見るに、なんだかとても恐ろしいモノを見てしまったようだ。自分はいったい何を呼んでしまったのか気になるが、思いだせないし見ていた二人もこの有様だ。口寄せのことは聞かないことにした。
「チャボさんありがとうございました。お二人にも何か可哀想なことをしてしまったようで、申し訳ないです」
ねこさんといぬさんは、記憶を上書きするかのように二人でゲームを始めてしまった。しばらくそっとしておこう。
気にしないでと言うチャボさんに礼を言って追憶の広間を後にした。
気を取り直し、新たなモンスターを探して空を行く。結局闘技場で何が起こったのかは分からなかったが、口寄せはしばらく封印した方が良さそうだと判断した。
未登録のモンスターの反応を見つけて近づくと、公園に馬くらいの大きさの鹿が大量に群れていた。
遠距離攻撃で空から仕留めていく。鹿は遠距離攻撃手段を持たないらしく、こちらに寄ってはくるもののゼロの下で満員電車の乗客のように押し合いをしている。
こうなるとただの的で、公園の鹿が全滅するまで楽な狩りが続いた。空から一方的に攻撃できたので楽だったが、地上で戦うことになればあの物量は厄介だろう。
65番 ウマシカ アイテム1 鹿せんべい アイテム2 鹿肉
ウマシカのドロップはどちらも食料のようだが、鹿せんべいは鹿系モンスターの注意を引きつける効果もあるらしい。
試しに鹿のリポップを待つ。現れたウマシカたちは、再びゼロの下に集まってぎゅうぎゅうになっている。収納から鹿せんべいを取り出すと、さらに動きが激しくなる。
その様子に怖くなり鹿せんべいを遠くに放り投げると、大量に群がっていたウマシカはせんべいに向かって一斉に走っていった。
様子を見ていると、争奪戦を制して鹿せんべいを食べたウマシカの身体が金色に輝き、大きくなっていく。ノーマルウマシカより三倍はデカイ。
金色のウマシカはこちらに再び狙いを定めたようで、ノーマルウマシカと共に駆け寄ってくる。
しかし、悲しいことに金色のウマシカにも遠距離攻撃手段は無いようで、こちらの一方的な攻撃になすすべなくやられていく。
66番 黄金鹿 アイテム1 黄金の鹿角 アイテム2 黄金の鹿皮
黄金鹿のドロップは交換所用のアイテムのようだった。しかしこのウマシカたちはリポップが早い。倒したら十五分で再び出現する。
地上なら悪夢だろうが、空から攻撃できれば安全に一方的に倒せて食料も落とすし、結構美味しい相手なのでは。そう思いオススメ狩りポイントとしてメモしておく。
それから数日間、鹿狩りを続ける。気がつくとレベルは101になっていた。ゼロは70、シュナイダーも90を超えていた。
「99で止まらない感じかぁ。これどこまで上がるんだろう……」
あんまり数値が高すぎてもカンストさせるのが大変なので、それなりにしておいてほしい。レベルの上昇にも時間がかかるようになってきたので、そろそろ移動することにした。





