61話
数日間過ごしたホテルを後にして探索を再開した。ジェットシュリンプを倒して以降、特訓のためにホテルと追憶の広間を往復する日々だったので久しぶりに外に出る。太陽が眩しい。
いつものようにゼロに乗って上空から探索していくが、生命感知には中々新しい反応はない。寄ってくるジェットシュリンプを倒して飛んでいると、人が集まっている所を発見する。どうやらこの街の避難所のようだ。
立ち寄って物資の提供とこちらからの情報提供をし、代わりにモンスターの情報提供を求めると受け入れてもらえた。物資の提供も感謝されたが、特に有り難がられたのが他のコミュニティとの連絡を取れることだった。
今まで食べるのにやっとで、行き詰まった空気が流れていた。いつまで待っても助けは来ず、もうこの世には自分たちしか居ないのではないか? そんな中に自分が現れて希望が湧いてきたと言われ、随分と気まずい思いをした。
(まあこちらはモンスターの情報提供で助かるし、あちらも物資や情報で助かるだろうし良いよね)
これからもマイペースでやっていこう。避難所で聞いた情報と、空から探索した範囲では新しいモンスターも居なさそうだったので次に移動することにした。湾を渡って西に飛べばすぐに次の県だ。
新しい街に着くと新しいモンスターの反応がある。しかし目視で姿は見えなかった。また姿を消したり隠れたりするタイプのモンスターだろう。しかし反応がする場所をよく見ると、地面から竹筒が突き出ている。
おもむろに地面を収納してやると、竹筒を口に咥えた黒装束を着た人型のモンスターが姿を現した。いきなり周りの地面が消えて慌てる黒装束に矢を放ち倒す。
61番 下忍 アイテム1 兵糧丸 アイテム2 手裏剣
仲間がやられて反応したのか、隠れていた忍者たちが現れてこちらに手裏剣を投げてくる。どうやら土の中や建物の壁に擬態して隠れていたらしい。探索のために高度を下げて飛んでいるとは言え、空を飛んでいるゼロにまで手裏剣が届く。
「肩強いな。でも悲しいことに全然効いてない……」
岩石鎧と硬い鱗に覆われたゼロに手裏剣が刺さることはなく、弾かれて落下していく。頑張る下忍に弓でトドメを刺していく。ドロップを回収し引き続き街を探索していくが、どうやら下忍ばかりのようだ。
(下忍ってことは上位の忍者も居そうだけどなぁ。条件ポップか、ここには居ないか……とりあえず違う場所探すか)
忍者と言えば隠れ里だと山を探索にやってきた。木々が生い茂る奥深い山中に、下忍に混ざって未登録の反応がある。追尾をかけて弓を射るが、防がれているようで図鑑には新しいモンスターが登録されない。
降りて直接戦うことにする。シュナイダーと共に森の中へと降りていき、ゼロには一旦謎空間に戻ってもらう。
木々の合間を縫って降り立つといきなり忍者が切り掛かってくる。風斬りの短剣で忍者の刀を受け止め放電で反撃しようとすると、忍者はそれを察知したのか背後に飛びすさる。
中々やるようだ。よく見ると下忍とは見た目が若干違う。武器を構えて忍者とにらみ合う。シュナイダーは周りの下忍や、犬型の新モンスターの相手をしてこちらを援護してくれている。
刀忍者と睨み合う間にもシュナイダーが次々に敵の数を減らしていく。残りは刀忍者だけだ。こちらから攻めようとした瞬間、刀忍者は懐から取り出した何かを地面に素早く叩きつける。すると辺りに物凄い勢いで白い煙が立ち込め視界が悪くなる。
強化防風で煙を吸い込むことは避けられたが、生命感知から刀忍者の反応が遠ざかっていく。煙が収まるのを待ってドロップを回収する。
62番 忍犬 アイテム1 クナイ アイテム2 忍者頭巾
なんで犬がクナイと頭巾なんだと図鑑を確認すると、黒い頭巾を頭に巻いた犬がクナイを咥えた絵が載っている。なるほどと思っているとシュナイダーに追いかけないのかと突っ込まれる。
しかし初めて逃げるモンスターに遭遇した。ゲームなんかではプレイヤーが相手より圧倒的に強かったりすると、モンスターが逃げたりすることはあったが現実では初めてだった。
今までのモンスターは隠れたり身を隠そうとするものの、基本的にはこちらを倒そうとしてきたが、刀忍者は不利を悟ったのか一人になると撤退していった。
これは何かあるかもしれないと慎重に逃げた刀忍者を追うことにした。





