51話
たまに襲いかかってくるハーピーをあしらいつつ、マンタの後を付いていく。九重さんたちも腕を上げたようで、ハーピーくらいなら問題にもならないようだ。慎太郎さんの屋敷は都内にあるとは思えない豪邸で、屋敷の周りは高い塀に囲まれていた。屋敷の大きさもそうだが、家の中に林や小さな池、家庭菜園の畑のような物まで見える。庭には、テントやプレハブの仮設住宅のようなものも建っている。物凄いお金持ちのようだ。
広い庭に着陸すると、屋敷の中へ案内され応接間に通される。電気がついている。あれ、と思い聞くと、災害時に備えて自家発電機とソーラー発電なんかもしているそうだ。向かい合ってソファーに座ると、慎太郎さんが切り出す。
「どうぞご自分の家だと思って寛いでください。今お茶を持ってこさせます」
「いえ、お構いなく」
慎太郎さんがメイド服を着た女性に目配せすると、女性はお辞儀をして出ていく。メイドさんは実在するらしい。なんだか住む世界が違う。くつろげる気は全くしないので、用事が済んだら出ていこう。
「それで佐藤さんはあそこで何をされていたのでしょうか? あの光は危険は無いのですか? 」
まぁ気になるよなぁ。順を追って説明して危険が無いことを分かってもらう。ワープゲートとやらが解放されたこと、マップスキルが使えるようになること、そのためにはジャングルを抜けて石板に触れる必要があるのではないかということを伝える。全世界で電波が使えるようになったことも伝える。
「なるほど……そんなことが」
「ええ、ワープゲートは双方のゲートに触れなければ使えないみたいなので、いきなりあそこから大量に何かが出てくるということも無いと思います。慎太郎さん、スマホはお持ちですか? 」
「ええ、電波も無かったので充電されていませんが」
了解を取ってから慎太郎さんのスマホを充電する。すると電源が入る。電波も来ているようだ。慎太郎さんにスマホを返す。受け取ったスマホを見て目を見開く慎太郎さん。
「一瞬で充電を、そして本当に電波が来ている……」
自分の番号を教え、電話をかけてもらう。無事に繋がったようだ。これでお願いもできる。
「それで慎太郎さん、無理にとは言わないのですがお願いしたいことがありまして」
「なんでしょうか? 貴方は娘の命の恩人です。出来得る限りお聞きしましょう」
「珍しいモンスターを見かけたら、その時の状況や場所を教えてほしいんです。食料調達の行動範囲とかでも構わないんです」
「ふむ、そういえば佐藤さんは色々なモンスターを探して歩いていると娘から聞いております。そんなことでよろしければ、現在ここにいる食料調達のメンバーや救出隊にも周知して情報を集めましょう」
「本当ですか?! 助かります。無理に戦わなくても良いので、情報だけでもありがたいんです。あ、これ携帯のソーラー充電器です。後で今まで戦ったモンスターの情報もお渡ししますね! 」
「は、はい。分かりました」
いかん、つい嬉しくなってテンションが上がってしまった。やはり自分一人だとモンスターを探すのにも限界があるので、目撃情報だけでも助かる。そうしてしばらく、談笑をしていると扉がノックされる。
「旦那様、お茶をお持ちいたしました。それとお嬢様方がおいでです」
「入りなさい」
扉が開きメイドさんがワゴン? を押して入ってくる。その後ろから女子高生四人組が入ってきた。無事家族と再会できたお礼を告げられ、シュナイダーと遊んでもいいか聞かれる。お目当はシュナイダーのようだ。どうするかとシュナイダーに聞くと、しょうがないなぁと女子高生を引き連れて外に出ていった。
「佐藤さん、娘たちが申し訳ない」
「いえ、こんな状況ですからね。あの子たちも家族と再会できて嬉しいんでしょう。楽しそうに笑えるのは良いことですよ」
慎太郎さんに聞くと、彼女たちはこちらへやってきてからも食料調達や逃げ遅れた人の救出に頑張っているらしい。息抜きも必要だろう。その後はモンスター図鑑をコピーするために慎太郎さんの書斎でコピー機を借りたり、食事やお風呂を御馳走になったりともてなされ、泊まっていくことになった。





