48話
園内を着ぐるみを倒して歩くが、一向に鍵は手に入らない。既に着ぐるみ6種類もコンプリートしてシーズンパスも手に入れている。着ぐるみはネズミ、アヒル、クマ、ウサギ、ブタ、イヌの6種類で、耐寒性があり打撃に強いらしいが、今は夏だし寒い地方に行かなければ出番はなさそうだった。着ぐるみを着たシュナイダーは可愛らしいのだが、良い年をした成人男性がこれを着るのは躊躇われる。おそらく視界の確保のためなのだろうが、着ぐるみの口の部分から顔が出るのだ。人気の無い場所でしか着られない。
「いやぁ、わからん。鍵はここじゃないのかな? 」
もう全部見て回ったね、とシュナイダーが水を飲みながら返してくる。現在はシーズンパスを首から下げて、大通りのカフェのベンチに座り早めの夕食をとった後だった。そろそろ夜になるし、一旦引き上げようとすると。園内アナウンスが流れ始めた。
「これよりメインストリートにて、ナイトメアパレードが始まります。ご来園のお客様は、是非メインストリートにお集まり下さい」
メインストリートとは現在いるここのことだ。少しすると行進曲のような音楽と共に、楽器を演奏する大量の着ぐるみと共に、着ぐるみに引かれた大きな馬車が現れた。馬車の座席はオープンになっており、着ぐるみたちとは違う反応のモンスターが乗っている。王笏を手にし、王冠を被り豪奢なマントを羽織った若い王様風の男性が座っている。一見人間の男性に見えるが、生命感知の反応からモンスターであることがわかった。
透明化をかけ、奇襲を仕掛けようと建物の陰から様子を窺い待ち構える。空中には透明化したゼロと、ロケットフィッシュ一号に跨ったシュナイダーも待機している。あと少しというところで王様風の男が王笏を掲げると、パレードの行進が止まる。男の視線は明らかにゼロたちを捉えていた。男が立ち上がり、獣のような咆哮を上げる。その咆哮は耳を塞いでも鼓膜が破れそうなほどの大音量だった。更に、こちらの透明化や強化魔法の効果まで掻き消されている。
(まずい、これ絶対強いやつだ)
強化魔法をかけ直し、取り巻きの着ぐるみたちに爆炎陣を放ち攻撃して自分に気を引きつける。シュナイダーはその間に、自身とゼロに強化魔法をかけ直していた。馬車の男がうずくまり、身体を震わせる。すると骨が軋む音と共に筋肉が隆起し、身体中から茶色い毛が伸びていく。変身が終わった男、いや獣は足元の馬車を踏み潰し二本の足で大地に立つ。赤く光る眼光と鋭い牙、顔はライオンのようなタテガミで覆われており、長い爪を生やした腕、胸板も茶色の毛で覆われてゴリラのように太くてたくましい。体長は10メートルはあるだろう。獣は身体同様に大きくなった王笏を地面に打ち付けると、辺りに黒い霧が立ち込め次々とジャングルで遭遇したモンスターたちが大量に現れた。
獣が号令するように咆哮を上げると、着ぐるみやジャングルのモンスターたちが一斉に襲いかかってくる。あのデカイ獣だけでも厄介だというのに、物量でも攻めてくるのか!
「ゼロ! あのデカ物を押さえてくれ! シュナイダー、雑魚を頼む! 」
二人から任せろと返事が返ってくる。ゼロは火球を吐きながら獣に向かっていき、鋭い後ろ脚の鉤爪で襲いかかる。獣は腕をクロスさせ、攻撃をガードする。長い剛毛と筋肉に阻まれ、浅い傷が残るのみだ。ゼロは空中を旋回し勢いをつけ、再度獣に突撃していく。獣はゼロを受け止めようとしたものの、押し負けて地面に倒されゼロに押さえ込まれる。地面に降りたゼロは獣を押さえつつ、背後から襲いかかるモンスターを尻尾で薙ぎ払う。
その間に自分とシュナイダーは取り巻きの雑魚たちを片付けていく。爆炎陣で広範囲を焼き払い、コンテナや鉄骨を落としてダメージを与えつつ障害物にしていく。シュナイダーはロケットフィッシュ一号に跨り空から、空中を蹴って飛び掛かってくる空虎を魔法で撃ち落としていく。コンテナが宙に浮いたと思うと、川で遭遇したメガクロコダイルが咥えて持ち上げている。首を横に振るとこちら目掛けてコンテナを放ってきた。
(器用だな! )
飛んでくるコンテナを収納でしまい込み、お返しにメガクロコダイルの上に大量に出してやる。メガクロコダイルの動きが止まり、大量のコンテナが邪魔で他のモンスターたちもこちらに来られない。
「ゼロ、飛べ! 」
獣と格闘していたゼロが、空へ飛びたつのを確認し、追憶のダンジョンのカミナリウオ戦と川で収納した水を辺り一面にぶちまけ、放電を使う。コンテナに押し潰されたメガクロコダイルや雑魚モンスターたち、地面から起き上がった獣も纏めて放電の餌食になる。生命感知に雑魚の反応は無くなったが、獣はまだ健在のようで、こちらを振り返ってくる。身体からは煙を上げている。こちらを物凄い形相で睨むと、今までで一番の雄叫びを上げ走り寄ってきた。





