46話
マイお皿に乗せたウサギ肉を食べるシュナイダーに、水を出してやりながら考える。あと少しで出てきそうなんだが……
「ポメ……ポメラニアン。そうだポメラニアンだ。あースッキリした」
急に声を出したので、シュナイダーが何よ? とこちらを見てくる。食事の邪魔をしてしまったようだ。
「ごめんごめん。シュナイダーがどんな犬種だったか思いだしてさ」
自分も収納からだしたオニギリを食べつつ、ウサギ肉にワイルドに噛み付くシュナイダーを観察する。タテガミのように伸びたもふもふとした毛がまるでライオンのようだ。このジャングルで生き延びてきたのだ、頼りになるだろう。しかし安全マージンを考えるならもう少しシュナイダーを強化しておきたい。最近ゼロに油断を咎められたばかりだ。あまっているスクロールを取り出して床に寝転がってるシュナイダーに差し出す。
「シュナイダー、これ使えるか? 新しくスキルを覚えることができるんだけど」
屋内でスキルを試しても問題なさそうな空中浮遊のスクロールを渡した。スクロールの匂いを嗅いだり、前足でツンツンとしていると、スクロールが消える。どうやら使用できたみたいだ。スイーと天井近くまで浮かんでいくシュナイダー。そのまま犬掻きの動きで空中を移動し始める。尻尾がブンブンなので楽しいらしい。
「他にも色々あるぞ。ちょっと降りてきてくれ」
まだあるの? と寄ってくるシュナイダーに下級魔法や剛力、生命感知、中級魔法スクロールなんかを渡してどんどん覚えさせる。魔法は家の中では使わないように言う。
「ちょっと試しに行くか。他のスクロール集めもかねて」
一旦シュナイダーには謎空間に戻ってもらい、追憶の広間へと移動する。光が収まると、二人がいつものように出迎えてくれる。
「いらっしゃいませですにゃ」
「いらっしゃいですわん」
「こんにちは、追憶のダンジョンに行きたいんですが」
「かしこまりましたにゃ」
それから現在手に入るスクロールを求めてモンスターを狩りまくった。主な被害者は魔力の結晶狙いでのアップルトレントだったが……さすがに一日では集まりきらず、シュナイダーの家を拠点に何日か費やした。
「す、凄いぞシュナイダー! 」
スクロールで数々のスキルを覚え、狩りでレベルの上がったシュナイダーは、恐らく世界最強のポメラニアンと化していた。強化が終わりシュナイダーの家周辺を探索していると、空虎という虎型の新モンスターが現れた。何も無い空中を蹴り、巧みにフェイントをかけて襲いかかる空虎の攻撃を瞬足でかわす。シュナイダーが追憶のダンジョンでテイムしたロケットフィッシュの一号、二号に強化魔法と反雷をかけて突撃させ、痺れたところを剛力と鋭刃で強力になった顎で噛み殺した。強い。こちらも負けていられないと、空虎を探し仕留めていく。
49番 空虎 アイテム1 タイガークロー アイテム2 スクロール(空歩)
二人分のドロップが集まり、空歩を覚えタイガークローを装備する。どうやら装備は装備者の身体にフィットする仕組みなようで、シュナイダーにも装備が可能だった。さすがに手に持つ剣などの装備は無理だった。代わりといってはなんだが、飛竜のマントを巻いてやる。カッコよくなった。
頼もしい仲間になったシュナイダーと、ジャングルを探索していく。もう少しで川の西側エリアの下半分を探索し終わる。自身の周りにロケットフィッシュを漂わせ先行するシュナイダーが、敵発見と伝えてくる。確かに前方から反応がある。しかし姿は見えない。アサシンリザードのようなモンスターだろうか? リビングソードを呼び出し強化と反雷をかけて反応の有る場所へ飛ばしてみる。すると木に咲いている花がサッと動きリビングソードへ攻撃し、反雷によって麻痺する。すかさず岩石槍とリビングソードで攻撃し仕留める。身体に花を咲かせた大きなカマキリが消えていく。どうやら花に擬態していたようだ。生命感知があって良かった。
50番 フラワーマンティス アイテム1 スクロール(鋭刃) アイテム2 花カマキリの大鎌
花カマキリの大鎌はそのままでは装備できないようだ。交換所で使うのかもしれない。これで南側の探索は完了した。今日はシュナイダーの家で休んで、明日からツリーのある北側の探索を始めよう。





