44話
首都への道中、新たに呪いの藁人形というモンスターと出くわした。強さ自体は火炎魔法で楽に倒せる程度だったのだが、消滅する際こちらに呪いで強制的にダメージを与えてくるという、非常に厄介な特性を持っていた。ゼロは単体に火炎で攻撃しただけなので即死は免れたが、爆炎陣でまとめて焼き払った自分は岩石鎧さえ貫通する強制ダメージで身代わり人形を消費するほどのダメージを受けてしまった。身代わり人形が無ければ即死だった。
47番 呪いの藁人形 アイテム1 藁納豆 アイテム2 スクロール(呪い耐性)
呪い耐性を手に入れてからは、一体ずつ処理していけばさほど気になるダメージは受けなくなったが、あまり気分が良いものでもないのでスルーすることにした。それほど強くないというところが、逆に恐ろしいモンスターだった。現在はゼロのお叱りを受けながら空を飛んでいる。
「悪かったよ。初見のモンスターは範囲攻撃しないようにするから、許してくれよ」
こっちにも言い分はあるのだが、非常に心配をかけたようで申し訳なく思い、甘んじてお説教を受け入れる。最近ではレベルも上がって、ボスクラスの敵でなければ早々苦戦することもなく倒せてきたのだ。慢心があったかもしれない。この間のスライムの時もわざわざ自分から強敵を作って、とゼロのお叱りが過去にまで遡り始めてしまった。段々とゼロが母さんみたいになってきている。
「あっ! ほら、首都が見えてきたぞ。ゼロ」
前方を指差し、ゼロの背中をペシペシと叩く。しかし様子がおかしい。こんなに緑溢れる場所だっただろうか? 高さ600メートルを超える有名な観光名所を中心に、熱帯雨林さながらのジャングルが広がっている。今まで巡ってきた街や都市は、異変時の事故や火災、モンスターとの戦闘によって多少は変化があったものの、ここまでの異常は見られなかった。第一、数ヶ月でこんなに自然が繁殖するわけが無い。何かあることは間違いない。とりあえずあちこちから木の枝が突き破り、文字通りツリーと化した観光名所へと近づく。しかしツリーの100メートルほど手前までやってくると、ゼロがこれ以上進めないと言ってきた。
「ん? 」
前方へ投石を放ってみる。すると見えない壁に阻まれた投石は、跳ね返りもせず落下していく。なんだかやばそうだ。一旦ここを離れてジャングルの外周を調査することにする。ジャングルは東側に大きく広がっているようで海にまで届いている。外周に沿って飛ぶが、ツリーにあったような謎の壁に阻まれて中に入れない。唯一入れたのは河口からだった。
木漏れ日が降り注ぐ川面を、ゼロに乗っていく。上陸できそうな地点を探すが、まだ見つからない。ジャングルの中からは、まだ登録していないモンスターの反応もある。時折現れるサハギンを倒しつつ、奥へ向かってゆっくりと飛んでいく。すると前方に新たなモンスターの反応が現れた。水面から目を出して、こちらへ向かって泳いでくる。川の水を収納すると、モンスターの全容が明らかになった。
15メートルはあるであろう大きなワニ型のモンスターは周囲の水が無くなり、川底へ着地する。そのままこちらへ走り寄ってくると、大きな口を開けて飛びかかってきた。頭上はジャングルの木の枝で塞がれており、上空へは逃れられない。寸前のところで横に回避し、距離を取り旋回する。ワニの背中目掛けて魔法とゼロの火球を放つが、火に強いのか燃え上がることなく消えていく。すかさず岩石槍を放つと、効果があったのか身悶えするワニだったが、一撃とはいかないようで川の水が戻り姿が見えなくなる。
「やりづらいな……」
今度は周りの水を収納し、水流操作で川の水が戻らないように洗濯機のようにグルグルと回す。かなり魔力を消耗する感じがする。長くは持たなそうだ。
「ゼロ、反雷を掛けるからいい感じに組み合ってくれ。ワニが麻痺したら離れて。その隙に仕留める」
ゼロから飛び降り、川底に着地すると走り寄るワニに向かい、ゼロが飛びかかっていく。ワイバーンと巨大なワニが絡み合う様は、さながら怪獣大決戦だ。背中をゼロに踏みつけられ、足の鉤爪で切り裂かれたワニが身体を回転させ暴れる。拘束が解けたワニが低空をホバリングしているゼロの尻尾へと噛み付く。その瞬間、反雷が発動しワニの巨体がビクビクと痙攣する。走り寄ってワニの尻尾を掴み、放電を放つとさらに激しくワニの身体が震える。手につかんでいた尻尾が消えていく。どうやら倒せたようだ。水流を操作するのも魔力の限界だ。川の水が元に戻る前にドロップを回収しゼロに乗り飛び立ち、上陸地点を目指すのだった。
48番 メガクロコダイル アイテム1 ワニ肉 アイテム2 クロコレザーアーマー





