43話
強烈な光が収まると、王冠とマントを身に付けたグリーンスライムが現れた。王冠とマント以外は光る前と全く変わらない。
「ゼロ! 無駄じゃなかったぞ! 早速やろう」
ゼロが何か言っているが、スライムっていうのは合体して変身する物なのだ。予想は正しかった。強化魔法をかけ上空からゼロの火球と、業火球で攻める。今までのグリーンスライムならばそれで決着が着いたが、王冠スライムは魔法に合わせて溶解液を吐き出し相殺してきた。さらに、その巨体から触手のように身体を伸ばしこちらを捕まえようとしてくる。
「意外と素早いぞ。ゼロ、もうちょい高く飛ぼう」
無数の触手を躱し、一旦上空に退避する。王冠スライムを見ると、触手をウネウネさせながらこちらを警戒している様子だ。足元ならどうだと岩石槍を使ってみるが、王冠スライムに突き刺さるもののすぐに溶かされてしまう。何度かチクチクと岩石槍を試していると、王冠スライムは怒ったのか無数の触手をこちらに向け、レーザービームさながらの勢いで溶解液を吐き出してきた。あまりにも数が多く、ゼロの機動力でも躱しきれなかった。翼に被弾した溶解液は、岩石鎧を貫通してゼロにダメージを与える。ギャァと悲鳴をあげるゼロに急いで回復魔法と岩石鎧をかけ、さらに距離をとる。
「参ったな、結構強いぞ」
ゼロが呆れたように、いらんことをするからだと言ってくる。
「初見はこんなもんさ。誰だって初めてはある」
それにどの道モンスターは全種類倒して図鑑に登録するのだ。グリーンスライム自体は、火炎系の魔法で普通にダメージが通ったし、当たりさえすれば火でなんとかなるはずだ。
「いや、別に魔法を直接当てなくても良いのか」
幸いにも王冠スライムの移動速度自体は遅い。溶解液でどうにもならないほどの炎で焼いてしまえば良い。そうと決まれば材料調達だ。
近隣のガソリンスタンドを巡り、大量のガソリンを収納して戻ってきた。王冠スライムは元の場所で蠢いている。先ずは王冠スライムの足元の土を収納して、深い穴に落とす。次に穴にガソリンをたっぷりと注ぐ。王冠スライムは触手を伸ばして這い上がろうとするが、かなり深く掘ったため出てくることができない。後は充分に距離を取り、穴目掛けて業火球を放つ。
穴に業火球が到達した瞬間、気化したガソリンに引火し凄まじい爆発が起きる。穴は弾けて広がり、炎が吹き出している。さすがにこの爆発と炎なら助からないだろう。念のため直ぐには炎を消さず、鎮火するまで待つことにした。
次の日の朝ミニログハウスから外に出ると、ポツポツと小さなグリーンスライムがポップしている。この様子なら王冠スライムは倒せているだろう。モンスター図鑑を確認する。
46番 カイザースライム アイテム1 帝王の証 アイテム2 カイザースライムメダル
まだ燃えている炎を土で埋めて鎮火し、再度掘り起こしてドロップを回収した。帝王の証は装備していると、全てのスライム族から敬われ攻撃されないらしい。その代わりこちらからも攻撃ができなくなるようだ。便利なような、あまり意味がないような……一方的に攻撃できれば最高だったのだが。帝王の証を装備すると王冠とマントが装備された。グリーンスライムに近づくと、ペタンと地面に溶けるように広がる。もしかして敬われているのだろうか。楽にして、と言ってみるとぷるんっと丸い形態に戻る。
「おお、テイムしていないのにこっちの言葉が通じる」
さらに手を伸ばして触ってみると、溶解液で溶かされることもなく、もちっとした手触りが返ってくる。ひとしきりスライムの手触りを堪能した後、穴を埋め直し移動をすることにした。





