40話
「痒いところに手が届かないというか、不親切というか……」
アイテムの説明はかなり簡易な感じがするので、もしかしたらアイテムの詳しい効果を調べるスキルかアイテムなんかがあるのかも知れない。まぁ持ち運びできる安全地帯は役に立つだろう。ゲームのようになったとは言え現実に起こっていることだ。攻略本や攻略サイトなんかも無いし、地道にやっていくしかない。ぐぅっと腹の虫が鳴いたので、ログハウス内で大の字に寝そべっていた身体を起こし、収納から食料を取り出して食事をする。最近気づいたのだが、この無限収納というスキルは中に入れた物の時間の経過が止まるようだ。モンスターのドロップした肉なんかも腐らずにいる。最近肉とオニギリばかりだ。今はまだ回収したレトルト食品や調味料があるが、それが無くなったら味付けのバリエーションが減ったりで悲しいことになりそうだ。
こんな状況でそんなことを考えるのも贅沢だなと思い直す。食うに困らないだけ随分とマシだ。そんなことを考えながら食事を済ませ、ミニログハウスを仕舞いゼロを呼び出して移動を開始する。
「ゼロ、市街地と山は大体探索したし次は海側を飛んでみよう」
ゼロが一声鳴く。任せろと言っているようだ。生命感知の反応を確かめながら飛ぶが、新しい反応がないまま海へ着いた。夏の煌めく太陽が砂浜を照らしている。平和な世界のままであれば海水浴客で賑わっていたであろう砂浜を、モンスターが我が物顔で闊歩していた。地上のモンスターを空から殲滅していく。そのまま海沿いを南下していくと、河口付近に新たなモンスターの反応があった。しかし姿が見えないので砂を収納してみると、人間を丸呑みにできそうなほど大きな二枚貝型のモンスターが姿を現した。
二枚貝型のモンスターは殻を開くと、水を吐き出して攻撃してくる。その勢いは50メートルほど上空を飛んでいるこちらに届く勢いだが、ゼロはヒラリと躱しカウンターの火球を剥き出しの貝目掛けて放つ。しかし殻を閉じられてしまい、火球自体は命中したものの、あまりダメージは与えられたように見えない。自分も業火球を放ってみるが、燃え上がることなく殻に散らされてしまう。どうやら火に耐性があるようだ。ならばと岩石槍を使うが、殻が硬く貫通できない。
「いや、かなり固いなコイツ」
幸いにも動き回らないので攻撃自体は当てやすい。最近使っていなかった鉄骨を貝の遥か上空に出現させ落下を見守る。こちらに攻撃が当たらず、殻を閉じて砂に潜り逃げようとするが、砂を収納し逃走を阻止する。激しい衝突音と共に貝は殻ごと中身を鉄骨群に押しつぶされ消えていく。
「まだまだ動かない敵には強いな。鉄骨も」
44番 ミミックシェル アイテム1 大粒ハマグリ アイテム2 スクロール(炎熱耐性)
一発ではドロップコンプリートできずに、しばらく潮干狩りすることになった。ミミックシェルを10匹ほど倒し手に入れた炎熱耐性は、熱にも強くなるらしく、夏の暑さも気にならなくなる。最近暑くなってきたので、身代わり人形があることもあり薄着をしていたのだが、それでも暑いのでありがたいスキルだった。
耐性スキルは自分が持つ分には良いが、敵が持っていると厄介だ。少しでも攻撃手段のレパートリーを増やしておきたい。モンスターの少ない場所へ移動し、ミニログハウスを出して中に入る。後回しにしていた中級雷魔法を取得するために追憶のダンジョンへ向かうことにした。カミナリウオはメダル持ちだったし、恐らく奴が第二階層のボスだろう。光に包まれ追憶の広間へ移動する。
「こんにちは」
「んにゃ? おー、お久しぶりですにゃ人間さん」
「お久しぶりです。わん」
ソファーに座ってゲームをしていた二人が、中断してカウンターへ入る。
「それで、今日はいかがされますにゃ?」
「ダンジョンの第二階層でお願いします」
「かしこまりましたにゃ。それでは、御武運をお祈りしておりますにゃ」
「お祈りしてますわん」
二人に見送られ、ダンジョンに入り透明化を掛けてボス部屋まで一直線に向かう。以前稼ぎに来た時にマッピングは済ませてあった。部屋の前にたどり着き、リビングソードを召喚し中に入る。ボス部屋の中はかなり広い空間になっており、下は水で満たされていて、空中に浮かぶ足場が無数にある。部屋に入ると扉が閉じられた。
(外の世界じゃなかったら遠慮はいらないよな)
足元にある水を全て収納すると、離れた所でカミナリウオがビタンビタンしている。かつて一度は撤退した相手のその姿に哀愁さえ感じる。しかし情けは無用。サクッとトドメを刺す。
(ふーむ、スクロールは落ちないか)
とはいえ、倒すこと自体は簡単だ。落とすまでマラソンあるのみ。再戦のためダンジョンを離脱し追憶の広間へと戻った。





