4話
物陰から10匹のゴブリンを視界に収め、収納、と念じる。すると、システムメッセージが流れた。
<ゴブリンナイフ×2を入手しました>
<ゴブリンソード×2を入手しました>
<ゴブリンボウ×2を入手しました>
<ゴブリンロッド×2を入手しました>
<ゴブリンの棍棒×4を入手しました>
(良し! 成功した! )
突然、手にしていた武器が消え慌てるゴブリンたちに容赦なく建築現場で仕入れてきた鉄骨を大量に落とす。
為すすべも無く、黒い霧になり消えていくゴブリンたち。鉄骨を収納し、ドロップを回収する。
<敏捷の結晶(小)を入手しました>
<体力の結晶(小)×2を入手しました>
<木の矢(10)×2入手しました>
<スクロール(初級火炎魔法)を入手しました>
かなり大きな音が立ったので、モンスターが寄ってこないか、しばらく様子見してからモンスター図鑑を確認する。
2番 ゴブリンシーフ アイテム1 ゴブリンナイフ アイテム2 敏捷の結晶(小)
3番 ゴブリンファイター アイテム1 ゴブリンソード アイテム2 体力の結晶(小)
4番 ゴブリンアーチャー アイテム1 ゴブリンボウ アイテム2 木の矢(10)
5番 ゴブリンメイジ アイテム1 ゴブリンロッド アイテム2 スクロール(初級火炎魔法)
ドロップ率アップさんが仕事をしたようで、一度の戦闘でアイテムが揃った。棍棒以外の武器の入手も嬉しいが、何より気になるのがスクロールだ。説明を読むと、どうやら初級火炎魔法が覚えられるらしい。
「あるかな、とは思っていたけど、マジであるんだな魔法」
効果が気になるところだが、ここのゴブリンたちのリポップ間隔が分からないので、先に物資の調達を優先することにした。
ホームセンターは開店前なので、当然鍵が掛かっていた。ドアを収納しようと試みると、あっさりとできてしまった。無限収納様々である。
食品、衣類、家具、アウトドア用品、工具類、建材、園芸用品、とにかく色々な物を収納して回った。一通り回収が終わったので、時間を確認するとまだ昼前だった。
(思ってたより早く済んだな、せっかくだし、スーパーにも寄ってから帰るか)
駐車場を確認すると、まだゴブリンたちはリポップしていないようだ。外したドアを元の場所に戻し、スーパーを目指した。
道中には、疎らに普通のゴブリンが存在していたが、奇襲からの棍棒で一撃だったので特に苦もなくスーパーにたどり着いた。
スーパーの駐車場には、ゴブリンファイター、アーチャー、メイジが一体ずつ居たので、ホームセンターの時同様に武器を奪い、その隙に鉄骨を落とし処理した。ドロップを回収し、スーパーのドアを収納して中に入る。
生鮮食品はほぼ駄目になっていたが、一部日持ちする野菜、お菓子類、缶詰や乾物、レトルト食品を回収していく。勿論、後から来た人のことを考えて、根こそぎは回収しなかった。
(回収作業が、視界に入れて念じるだけだからラクチンで助かるな。無限収納が有能過ぎる)
手ぶらで行動できて、無限に収納することができて、戦闘にも役立つ。正直このスキルが無ければ生きていける気がしない。
ふと、他の人たちはどうしているのかと思った。そろそろ異変発生から10日ほど経つ。屋内に居れば、今のところモンスターが侵入してくることは無いが、インフラも止まってきたし食料も尽きてくる頃だろう。
帰ったら同じアパートの人たちぐらい安否を確認してみるか。偶に挨拶を交わすぐらいの関係だが、少しぐらい食料を融通しても良いだろう。情報交換もできるかもしれない。
帰り道、リポップしていたゴブリンをお掃除しつつ、なんの問題も無くアパートまで戻ってきた。駐車場に湧いていたゴブリンをサクッと倒し、一度自分の部屋に戻る。
休憩もそこそこに、気になっていた、スクロール(初級火炎魔法)を使ってみる。すると頭の中に、3つの呪文が浮かび上がる。1つ目が<着火>これは小さな火種を出すことができるらしい。2つ目が<火球>、こぶし大の火の玉を飛ばせる。3つ目が<小力>一定時間力が上昇する。
「ふーむ、特に詠唱とかは要らないのか」
試しに、部屋の中で使っても大丈夫そうな着火と小力を使ってみる。着火と念じると、指先から百円ライターの倍くらいの火が出る。
「おぉ、熱くない」
自分の指先から火が出ているのに、不思議と指先は熱くない。しかし、左手を近づけてみるとしっかりと熱を感じた。
小力の方は、ほんのりと力が湧いてくる気がしないでもない。ホームセンターから回収してきた鉄パイプを握ってみると、手型が残った。小力を使う前よりはっきりと残ったので、結構効果があるのだろう。
火球は今度のお楽しみに取っておくとして、ご近所さんの様子を見てくるとしよう。