35話
その日の夜は、コテージの空いている部屋に泊まらせてもらった。リビングには暖炉もあったし、部屋の作りも豪華だった。九重さんは結構良いとこのお嬢様なのかもしれない。
目が覚めて時間を確認すると、朝の6時だった。顔を洗い身支度を整え、リビングへ向かうと既に田中さん御夫妻が起きており朝食の準備をしていた。昨日のうちにお米や食材を渡しておいたので、それで料理してくれているのだろう。ご飯の炊ける良い匂いがする。
「おはようございます」
「お、佐藤さん。早いですな。おはようございます」
「あら、おはようございます佐藤さん。もう少しお休みになられていても大丈夫ですよ」
「いえ、いつもこれくらいで目が覚めるんです。こんな状況なのに、習慣ってのは中々かわりませんね」
「ふふ、そうですね。今温かいお茶をお出ししますね」
「ありがとうございます」
季節は夏。しかし高原の朝は少し肌寒いくらいなので、温かいお茶が美味しい。お茶を飲みながら田中さん御夫妻と談笑していると、女子高生四人組も起きてきた。朝の挨拶を済ませ、全員が着席すると朝食になる。メニューは炊きたての白ご飯と味噌汁、魚の缶詰を温めたものと質素な朝食だったが、久しぶりに日本人的な朝食を食べた気がした。
「ご馳走さまでした」
「炊きたてごはん久しぶりで美味しかったです」
「最近お肉ばかりでしたしね」
「佐藤さん。和風なお菓子はありますか? 」
佐伯さんが和風なお菓子をご所望なので、かりんとうを出してあげる。
「あっ、こら風花! また佐藤さんにお菓子おねだりして! ちょっとは遠慮しなさいよ」
「かりんとう美味しい」
「はぁ〜、あんたねぇ」
「はは、いいんですよ五条さん」
このぐらいのおねだりなんてかわいいもんだ。子供らしくて良いと思う。五条さんも佐伯さんを叱りながら、しっかりと自分の分は確保している。かりんとうをニコニコ笑顔で食べる女子高生たち。甘い物に飢えていたのだろう。さて、と今日の計画を話す。
「今日から皆さんのレベル上げをしたいと思います。以前、地元の避難所でもやった方法なんですが……」
コンテナで囲んで遠距離攻撃でモンスターを倒し、レベルがある程度上がったら近接戦闘も対処できるようにする。それなりに皆戦えるようになれば、首都にも連れていける。全員真剣な様子で話を聞いていた。
早速外に出て、生命感知で獲物を探して歩く。弱めの敵から徐々に慣らしていこう。キラーラビットやゴブリンで攻撃魔法に慣れた後は、少し強めのオークを探して歩いた。初めて撃つ魔法に皆興奮していた。
皆のレベルは大体6〜10だったので、オークも倒せるだろう。一番レベルが高かったのは九重さんで、運良く手に入れたゴブリンソードで今まで頑張ってきたようだ。最初は包丁や、薪割り用の斧、モップなんかで戦っていたらしい。狙うのはほとんどキラーラビットだったようだ。確かに、ゴブリンは食料を落とさないから妥当なところだと思う。
コテージから大分離れた所までやってきた。ここら辺からオークの反応が出てくる。皆オークとは戦ったことがないようだ。孤立している個体をコンテナで囲んで、魔法で倒す。しばらく狩って魔力がきれたら、コテージに帰る。そんな日々が二週間ほど続いた。
「あーちゃん! 離れて」
「はぁ! 」
ゴブリンソードでオークと切り結んでいた九重さんがオークの斧をいなし、バックステップで距離を取ると、宮藤さんの放った火球がオークに直撃する。怯んだところへ、五条さんが踏み込み斬り捨てる。辺りにはオークのドロップした豚バラ肉が数個落ちていた。
「連携もとれてきて良い感じですね」
「はい、強化魔法とレベルアップの効果のおかげで、身体の動きが全然違います」
前衛は九重さんと五条さんと誠司さん。後衛は宮藤さんと佐伯さんと恵美子さん。一応全員がレベル20を超えて、タイマンでオークを狩れるくらいにはなった。同数程度の群れなら難なく狩れてしまう。昨日は一体だけだったが、こちらのサポートなしでミノタウルスまで倒してしまった。
「これならワイバーンもテイムできるかもしれませんね」
皆がコクリと頷く。二週間前にゼロを見て腰を抜かしていたとは思えないくらい逞しくなった。
「それじゃあ、ちょっと探して連れてきます」
ゼロを呼び出し跨ると、空へと飛び立つ。絡んでくるハーピーをあしらいながら、ワイバーンを探す。中々出てこない、やはり高速道路でハーピーを狩らないと駄目なのかもしれない。高速道路に向かおうとしたその時だった。突然影に覆われて、上を見上げると巨大なマンタが空を飛んでいた。





