34話
「佐藤さん、食料を提供していただいてありがとうございます」
「久しぶりにお米を食べました」
「ありがとうございます〜」
「お菓子はありますか?」
「ありますよ。でも佐伯さん、さっきすごい食べてましたよね? お腹に入りますか? 」
最近はゼロや、感知スキルのおかげで狩りの効率も上がった。さらにドロップ率アップの効果もあって、食料には大分余裕があった。なので今日はおにぎりやいなり寿司だけではなく、大トロや霜降り肉なんかも振る舞ったのだ。最近ウサギ肉や野草しか食べていなかったそうで、皆それはもう良く食べていた。
「佐藤さん。別腹なんです」
「なるほど。食べられるのであれば出しますよ。ついでにお茶やコーヒーもどうぞ」
「ちょっと、風花! 図々しいわよ。すみません佐藤さん」
佐伯さんを諌める宮藤さんに、いっぱいあるのでとお菓子を出してテーブルに並べていく。異変が起きて初期の頃には食料を回収していたが、最近はモンスターのドロップで賄えるので、かなり食料は余っていた。普段は自分一人だけが食べるので、どんどん食料が増えていくのだ。
「最初はびっくりしましたけど、凄く便利そうですよね。佐藤さんのそのスキル」
「ズルイです。お煎餅もください」
「コラ」
五条さんにチョップで突っ込まれている佐伯さんに苦笑しつつ、煎餅も出す。コテージの人たちとも大分打ち解けてきた。やはり人間お腹がふくれると、心が穏やかになるのだろう。田中さん夫婦もニコニコと笑顔で、女子高生四人組のやりとりを見ている。
「無限収納が最初から使えたのは大分助かりましたね」
「私たちでも覚えることができるのでしょうか?」
「おそらく存在するスキルは、皆さん全員取得できると思うんですけど、条件さえ分かればですが」
レア枠に分類されるスキルは、今までスクロールでドロップしたことがない。武器スキルなんかは、使っていれば取得できるので分かりやすいが、無限収納なんかは取得条件がまったく想像もつかない。
「無限収納は無理でも、役に立つスキルは色々ありますよ。皆さん良かったら使ってください」
収納からスクロールを出して渡していく。ここの人たちを、首都まで送ることは可能か不可能かで言えば可能だろう。しかし、首都が無事かどうかはまだ分からない。何があるか分からない現状、連れて行くにしてもある程度自衛できるようになってもらいたい。スクロールの説明をし、スキルを覚えてもらうことにした。
「よろしいのですか? 貴重な物なのでは……」
「自分はもう覚えているので、大丈夫です。それに使い道もあるにはありますが、必要になったらまたモンスターから取りますよ」
話を聞くと、何度かゴブリンメイジも倒したことがあるらしいが、一度もスクロールを落としたことはないという。地元の調達班の時にも思ったが、食料系のアイテムはそれなりに出る。しかし武器やスクロールとなると、かなりドロップ率は下がるようだった。ドロップ率アップは実はかなりチートなのかもしれない。
「皆さんを送ることはできると思います。しかし行った先で何があるかは、自分には保証できません。こんな異変が起きてからもう数ヶ月経ちます。救助が来ないことから、政府や自衛隊も機能していないでしょうし、自分にも目的があるのでずっと一緒というわけにもいきません。もしかしたらここに居た方が安全かもしれません」
「それでも、家族が心配なんです。もしかしたら生きていないかもしれません。けど、ここで何もせずいたらきっと後悔すると思うんです」
「佐藤さん。足手まといかとは思いますがお願いします。連れていってください」
「お菓子なくなっちゃった……」
「風花……あんたはこのシリアスな時に……私のあげるから静かにしてなさい。佐藤さん、私からもお願いします」
どうやら一名を除いて女子高生四人組の決意は固いようだ。
「田中さん御夫妻はどうされますか? 」
お二人は子供たちだけ行かせるわけにはいかない。ついていくという。
「分かりました。では明日から皆さんを鍛えます。自分にできる範囲でお手伝いしましょう」
久しぶりのパワーレベリングの開始だ。少なくともワイバーンをテイムできるくらいには鍛えよう。
 





