31話
次の日からは追憶のダンジョン第ニ階層に潜り、破邪の経文や初級土魔法スクロール、魔力の結晶(小)なんかのアイテム集めに費やした。最近追憶の広間に行くと、ねこさんもいぬさんも常にゲームをしている。たまに漫画を読んでいる時もある。一応自分が訪ねるとゲームを一旦やめて対応してくれるのだが、もしかしたらこの二人、自分が居ない時はずっとゲームをしているのかもしれない。
今日で追憶のダンジョンの稼ぎも4日目、大分アイテムも溜まってきた。いぬさんに頼んで中級土魔法スクロールを交換する。それともうひとつ、身代わり人形というアイテムを交換した。身代わり人形は人形と肉系アイテム、骨で交換できるアイテムで、人形一体につき一度だけ致命傷を回避できる素敵アイテムだ。連日の狩りでレベルも上がり40になった。
新しく覚えた中級土魔法は岩槍、土中探知、岩石鎧の三つだ。岩槍は対象の足元から岩でできた槍が飛び出して串刺しにする魔法で、複数ターゲットにでき、発動も早く使い勝手がよかった。土中探知は地面に潜っているモンスターを探知できる。一番嬉しかったのが岩石鎧で、着ている服や自分の身体にかけると一定量のダメージを肩代わりしてくれる。身代わり人形と岩石鎧のおかげで防御面が大幅に改善された。
「うにゃにゃ、良いところで終わっちゃいましたにゃ。人間さん、この漫画の続きをお願いしたいですにゃ」
「こっちも、お願いしますわん」
二人は今漫画タイムのようで、この間置いていった漫画をソファーに寝転んで読んでいる。どうやらお気に召した漫画があったらしい。
「あー……その漫画はまだ完結していないので、そこまでしか無いんですよ。続きは外の世界があんな状況なので無理ですね」
こちらの言葉に、二人は絶望したような表情を浮かべて固まっている。完結してる漫画だけ置いていくべきだったかもしれない。
「なんという、なんということですにゃ……この続きが読めないにゃんて……」
「……わん」
「あの……今日はこれで帰りますね。また来ます」
魂の抜けた二人を放置して、追憶の広間を後にした。ここ数日滞在している宿に戻る。窓の外を見ると、もう夜になっていた。
(そういえば、夜のモンスターをチェックしていなかったな)
外に出てゼロに乗り、生命感知を使いながら辺りを探索していく。闇耐性で少しは夜目が利くが、やはり生命感知があると探索が捗る。山の方に見たことのない反応を見つけたので、行ってみることにした。
(この先か……霧がはれてる?)
以前来た霧の掛かっていた山の門前に辿り着くと、霧がなくなっていた。探索しやすくなるのは良いのだが、夜なのでめちゃくちゃ怖い。
暗いので浮遊松明を使い、リビングソードを召喚する。ゼロには松明を目印に空からついてきてもらい、危なくなったら回収しにきてくれるように頼んだ。反応に近づくにつれて、松明で照らせる範囲が狭まってきている気がする。
(ホラーはあんまり得意じゃないんだ。勘弁してくれ……)
道なりに進むと、広場のような空間に辿り着く。薄っすらと奥に大きな像が見える。反応はこの広場にある、上を見上げると黒い衣をまとったガイコツが浮かんでいた。先手をとり、業火球を放つと黒い球をぶつけて相殺してくる。さらに紫色に光る魔法陣が広場に広がると、無数のモンスターが現れる。スケルトンや浮遊霊などのアンデッド型のモンスター達ばかりなので、破邪の経文を使い消し去る。黒いガイコツにも効いているようで、苦しんでいる。
出し惜しみせず、破邪の経文を使いきる勢いで使用し、業火球も放つ。経文に苦しむ黒いガイコツは、こちらの攻撃を相殺する余裕も無いようでまともにくらっている。何度目かの業火球でガイコツは燃え尽き、チリとなって消えていった。
34番 リッチ アイテム1 骨 アイテム2 魔力骨
怖い思いをした割に、たいした物が出ずにガッカリしながら宿へと戻り、眠りについた。





