29話
今日は1話です。
それから魔力の結晶(小)を集めるためにアップルトレントを狩る日々が続いた。500個ほど集めたところで、一旦稼ぎをやめた。一週間はかかっただろうか、ドロップ率アップが無ければもっと時間がかかっただろう。さっそく、交換するために追憶の広間に向かう。
「こんにちはですにゃ。人間さん」
「いらっしゃいませですわん。人間さん」
「こんにちは。やっとアイテムが溜まったので交換に来ました」
交換所のカウンターに向かうと、リストを渡される。
「何と交換されますかわん? 」
「えーと、火炎と水と風の中級魔法スクロールをお願いします。受け渡しはどうすれば? 」
「かしこまりましたわん。支払いはこちらに手を置いてくださいわん」
差し出された台に手を置く。これで良いのだろうかと思い、無限収納のリストを見ると、確かにアイテムが減っていた。そして中級魔法スクロールが3つ増えていた。取り出して使用してみる。
中級火炎魔法は業火球、爆炎陣、温熱付与。中級水魔法は水流操作、水面歩行、水中呼吸。中級風魔法が竜巻、強化投射、強化防風を覚えることができた。
「ありがとうございます。次は闘技場の第二試合に挑戦してみようと思います」
「かしこまりましたにゃ」
ねこさんが手をかざすと、闘技場の扉が開かれていく。闘技場に入り、強化魔法をかけリビングソードを呼び出す。門が開き敵が現れた。
数十分後、闘技場で新たな魔法とレベルアップの効果を体感し追憶の広間へと戻る。ねこさんといぬさんが拍手で出迎えてくれる。
「いやー、人間さん中々お強くなられましたにゃ」
「グッジョブわん」
「ありがとうございます」
群れているモンスターは、爆炎陣や竜巻で薙ぎ払い。ハーピーの羽やリビングソードの攻撃も強化防風で逸らせた。強化投射は今までより重い物を飛ばせるようになっており、ゴブリンソードや鬼斬り包丁も飛ばすことができた。あいにく中級水魔法は、水のある所でないと効果が無いので試すのはまたの機会になった。人間さん。とねこさんが話しかけてくる。
「このゲームというのは面白いもんですにゃぁ」
「お、気に入ってもらえましたか?」
「今やってるのが終わったら、新しいのを持ってきてくれると嬉しいですにゃ」
「あれ? 三本くらい渡しましたよね」
「もう二本クリアしてしまいましたにゃ。これで最後ですにゃ」
長編のRPGも渡したのだが、もうクリアしたらしい。結構な廃プレイだ。
「分かりました。それじゃあ、またおススメのを三本置いていきますね」
「有り難いですにゃ〜」
嬉しそうにしているねこさんに、新しくソフトを渡す。こちらも好きなゲームが気に入ってもらえて嬉しい。するといぬさんが、いつのまにか目の前まで来て上目遣いに言ってくる。
「ねこばかりズルイですわん。えこひいきですわん」
「そっか、いぬさんも暇なんですね。それじゃあ……」
もう一台あるサブの携帯ゲーム機を渡し、簡単に操作方法を教える。段々とゲームの布教が進んでいる。
「ありがとうございますわん」
「いえ、気に入ってもらえると良いんですけど……そうだ、漫画も置いていきますね」
収納からおススメの漫画と本棚を取り出して設置する。しかしこの広間、テーブルやイスもない。
本棚の横にテーブルとソファー二つを出して置く。これで快適に漫画を読めるだろう。
「人間さん。それはなんですわん? 」
「あ、勝手に出してすみません。ソファーとテーブルです。くつろげるかと思いまして」
「おー、これは良いですにゃ」
さっそくソファーに寝転がりながらゲームを始めるねこさん。いぬさんもこちらへ来てソファーに座る。ソファーの感触を確かめるように小さく跳ねている。
「フカフカですわん」
「良かった。またそのうち来るので、よろしくお願いしますね」
「またですにゃ」
「お待ちしてますわん」
二人に別れの挨拶を告げ、ホテルに戻る。この後は中級水魔法を試しに海まで行ってみよう。





