22話
コーヒーチェーン店の事務所に戻ってきた。少し休憩してから、自身に強化魔法と透明化をかけ店の外に出る。アサシンリザードが襲ってこないか、ドキドキする。追憶のダンジョン第1階層には、アサシンリザードが出現しなかったので検証できなかった。もしかしたら透明化が通用しないかもしれない。そう思い、慎重に街を歩いていくが、市街地を抜けるまで襲われることはなかった。ついでに新たなモンスターも見つからなかった。
現在は港に来ている。そういえば海が近いことを思い出したので、水棲系のモンスターと遭遇できないかとやってきたのだった。
港には鞭を持ったサハギンと、初めて見る魚型のモンスターがセットで動き回っていた。どういう原理か、魚は空中を泳いでいる。物陰に隠れ、リビングソードを召喚する。透明化で近づいて背後から襲うことを伝え、透明化を自分とリビングソードにかける。そっと足音を忍ばせサハギンの後ろに近き、背中から女王の刺突剣で貫く。魚の方も、リビングソードに刻まれて消えていく。素早くドロップ回収し、透明化をかけ直しモンスター図鑑を確認する。
20番 サハギンテイマー アイテム1 調教鞭 アイテム2 スクロール(テイム)
21番 フライングフィッシュ アイテム1 白身魚(半身) アイテム2 スクロール(空中浮遊)
どちらもスクロールはドロップしていなかったのか、文字が灰色だった。テイムは以前から欲しかったし、空中浮遊も面白そうなので、港で狩りをすることにした。透明化で後ろから忍びより、後ろから刺す。そんなことを繰り返して、港に20セットほどいたサハギンと魚を狩った。ようやく2つのスクロールが落ちた。さっそく覚える。
「ここまでアイテムが落ちなかったのは初めてだな。ドロップ率アップもあるのに……物欲センサー発動したか? 」
中々落ちなかったアイテムだ。期待が高まる。さっそくスクロールを使用してスキルを覚える。テイムは現在のレベルだと、2体まで契約できるようだ。できれば移動用に便利なモンスターと契約したいので、温存しておくとしよう。空中浮遊の方は少しガッカリした。文字通り、空中に浮くことができるスキルだったのだが、上下の移動はそれなりの速度がでる。しかし横移動がもの凄くゆっくりだった。浮いている間は魔力も使用するらしいので、ずっとは浮いていられない。これでは空中戦は無理そうだ。
(でも高い所に行ったり、上空からモンスターを探したりで役立つかもしれないな。さて、テイムも手に入ったし移動用のモンスターを探しに行くか……)
できれば、盾役をこなせるモンスターと、騎乗できる飛行可能なモンスターと契約したい。今まで倒したモンスターには該当するものがいなかった。
(移動が楽になれば、図鑑埋めも捗るんだが……まぁ焦らず、レベル上げしながら探していくか。そのうちエンカウントするさ)
レベル上げするとは言ったが、アサシンリザードは戦い辛いので、海沿いを北上しつつ新たなモンスターを探していく。
「サハギン系と魚ばっかりだな」
海沿いはノーマルサハギンとサハギンテイマー、フライングフィッシュばかりだった。たまに陸地の方に行くと、オークやストレイドッグなどの登録済みのモンスターしかいない。
(ちまちま狩っても効率悪いな。まとめてやるか)
まず自分に強化魔法をかけ、リビングソードを召喚する。そして、モンスターを引き連れて走り回る。ある程度たまってきたら、収納に入っている事故車、コンテナ、鉄骨を落としてまとめて倒す。そんなことを繰り返しながら北上していった。
日も沈み始めたので、今日の宿を探すことにした。近くにお寺があったので、周りの探索をして安全を確認してから本堂の隅っこを間借りして休ませてもらう。完全に日も沈み夕食も済ませて、本日のレベル上げの成果を確認していた時だった。
「レベル32か、一日で結構上がったな」
シャン、シャンという音が聞こえてきた。先程までは聞こえなかった音だ。日が沈む前に周りを探索した際は、あたりに何もいなかったはずだ。
(人かモンスターか、どっちにせよ確認に行くか)
装備を整えて、強化魔法と透明化をかけ外に出る。境内を見渡すが、何もいない。音のする方へ向かっていくと裏手にある墓地にたどり着いた。するとそこには、周りに人魂を漂わせ錫杖を持った虚無僧がいた。他にもガイコツが歩き回り、大きなコウモリも飛んでいる。
(夜は墓場でなんとやらか。さっき確認した時は間違いなくいなかった……誰かが倒してリポップしたか、もしくは夜のみポップするかだな。おそらく後者だと思うが)
しかし、墓地とはスペース的にも心情的にも戦いづらい。境内まで引っ張っていき、そこで戦うことにした。





