19話
後ろを振り返り、道路に今まで収納してきた事故車やコンテナを出して障害物にする。減速までの時間を稼ぐ。安全に停車してから車を降りて収納し、迎撃の準備をする。
この前収納した給油車を取り出して、タンクからガソリンを出す。給油車から距離を取り、自身に小力、硬身、追風、防風を掛けていく。右手にゴブリンの棍棒、左手にはゴブリンロッドを持ち、待ち構える。障害物を蹴散らしながら追いかけてくる騎士は、すぐそこまで来ていた。
騎士が給油車に近づくタイミングを見計らって火球を放ち、バリケード用にコンテナを出し隠れ、耳を塞ぐ。激しい爆発音。爆発で飛ばされた車のパーツなどが飛び散る。バリケードのコンテナを収納して確認する。騎士は馬から放り出されて、離れた位置で片膝をつき、地面に槍を突き立てている。馬が再び立ち上がる様子はない。
(このチャンスを逃すか! )
騎士目掛け駆け出し、槍を収納で奪う。支えを失った騎士は、前によろけて地面に手をつきそうになる。膝をつき、体勢を崩した騎士の頭目掛けて棍棒を思い切り振り抜く。
手応えは感じたが、さすがに一撃とはいかないようだった。見かけの割に素早い動きで後退した騎士は、腰にある剣に手を抜きこちらを警戒している。
手に持った剣を奪おうとするが、収納できない。初めてのことに戸惑っていると、騎士がこちらに斬りかかってくる。強化のお陰もあり、余裕を持ってかわす。
(あの剣は騎士の身体の一部とかか? 馬は消えてないし、騎士とまとめて1体のモンスターなのだろう。ドロップ品判定が無いもの以外奪えないとかあるのか? )
再び仕掛けてくる騎士に、投石を飛ばしながら距離をとる。騎士の身長は、ざっと3mを超えておりその手に持った剣も巨大だ。奴からしてみれば片手剣なのだろうが、あんなもので斬られたらこちらはアッサリと身体が両断されてしまうだろう。硬身で耐えられるかもしれないが、試す気にはなれない。
攻撃を回避しながら魔法で攻撃していく。何度か剣で弾かれるも、捌ききれなかった魔法が騎士に襲いかかる。動きが鈍くなってきている。最初の爆発と、頭部への攻撃は大分効いているようだ。それから魔法も何度か当たり、隙を窺っては棍棒で攻撃していると、騎士が剣を手放し倒れ、霧になって消えていく。最初の爆発で倒れていた馬も同時に消えていった。中々タフな相手だった。
ドロップを回収しようとしたその時だった。落ちていた剣がものすごい勢いで、こちら目掛けて飛んでくる。間一髪で躱すが、肩を斬られてしまい血がアスファルトに飛び散る。慌てて治癒で傷をなおし、振り返る。
(騎士を倒しても消えていない! あの剣、身体の一部とかじゃなく、別のモンスターか! )
シンプルにモンスターだから収納できなかったようだ。いわゆるリビングウェポンという奴だろう。変に考え過ぎて、不意打ちを食らってしまった。こちらが放った魔法を躱し、再度突撃してくる剣。
(点じゃなく、面で攻撃できる魔法がほしいな)
素早い相手、飛び回る相手、小さい相手に現在所持している魔法は当てにくい。ヒットアンドアウェイで一撃離脱していくので近接攻撃も当てづらく、非常に戦い難い。
(動きを止めるしかない)
タイミングを見計らい、加速をつけて飛んでくる剣の前にコンテナを出す。ガギンっと金属同士がぶつかる音がする。すぐに回り込むと、剣の半ばまで突き刺さっている。芋虫から手に入れた粘着糸を投げつける。粘着糸は中々の粘着力があるようで、刃を抜こうとガタガタしているが、一向に抜ける気配はない。駆け寄り、棍棒で思い切り剣身を殴りつける。強化の乗った攻撃は、一撃で剣を真っ二つにした。霧となって消えていく。
「ふー、なんとかなったな」
ドロップを回収し、散らかした道路を片付けモンスター図鑑を確認する。
17番 追跡する騎士 アイテム1 スクロール(騎乗)アイテム2 ナイトランス
18番 リビングソード アイテム1 スクロール(鋭刃)アイテム2 スクロール(リビングソード召喚)
順番に確認していく。
スクロール(騎乗) 騎乗する物の扱いが上手くなる。また自身と騎乗する対象の能力も上昇する。
ナイトランス 突撃槍。騎乗時、攻撃力に補正がかかる。
スクロール(鋭刃)習得しているだけで全ての刃のある武器の攻撃力が上がる。
スクロール(リビングソード召喚)リビングソードを呼び出し使役できる。簡単な意思疎通、命令が可能。召喚時は常に魔力を消費していく。召喚スクロールは直接モンスターを倒して手に入れた者しか使用できない。
中々良い物が出た。特にリビングソード召喚が嬉しい。これで相手の気を引いたり、不意打ちができる。コンテナに突き刺さったところを見ると、攻撃力も期待できるだろう。
「くぁー、疲れた。強かったけどボスじゃなかったんだな。メダルも出なかったし」
休憩したかったが、道路の真ん中では落ち着かないので、安全に休憩できる場所を探しに移動することにした。





