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17話

 職員室に着き、詰めていた人に家族の安否確認にきただけなので長居はしないことを伝えた。1年1組に戻ると、父さんと母さんが居たので声を掛ける。


「父さん久しぶり。無事で良かったよ」


「秀一、お前もな。しかし、隣の県からここまで来るとは、無茶はするなよ」


「お父さん、もっと叱ってやってください。この子は昔から……」


 母さんのお説教を、まぁまぁと父さんがなだめるが、中々終わりそうにないため話題を変える。


「父さん母さん、それよりも夕食はまだなのかな?」


「あぁ、もうすぐ配給の時間だな。俺も今日の当番は終わりだし中庭に向かうか」


「久しぶりに家族3人で食事ね」


 家族3人で連れ立って中庭に向かうと、既に配給は始まっているらしく何人かの人が器を受け取り、校舎の中に戻っていく。列に並び、食事を受け取る。献立は具材の種類が少ない豚汁と、オニギリが1つだ。1年1組の教室へ戻り、3人で車座になって座り食べ始める。


「あら、今日はお肉が多いわね」


「本当だな、うまく外の豚たちを倒せたんだろう」


 状況が状況なので、質素な食事だったが、久しぶりの家族団欒にほっとした気持ちになった。しかし、どこの避難所も食料の調達に苦労している。流通もとまり、外にはモンスターたちがいる。町にある食料も限りがあるので、このままではいずれ、食料が行き渡らなくなり皆餓死してしまうだろう。肉ばかりで栄養は偏るだろうがせめて、オークを楽に倒せるように、レベル上げを手伝うか。


「父さん、この避難所には戦える人はどれだけいるの?」


「そうだな……今現在外に出て戦える調達班は30人くらいだな。その他には避難所の見回りと警備に10人ほどいるな。それがどうかしたのか? 」


 自分がそれなりに戦えること、今日の肉は自分が差し入れしたことを伝え、調達班のレベル上げを提案する。


「町にある食料もいつかは無くなるし、この先モンスターを倒していけないと、いつかは飢え死にしてしまうよ。俺も、ここをそのうち出ていくし、その前になんとかしたほうが良いと思う」


「うーむ、確かにそうだな。わかった、この後調達班に声を掛けて集めるから、計画を練ろう」


「秀一、本当に大丈夫なの? それに、ここを出ていくって、どこに行くつもりなの? 」


「そうだ、レベル上げはともかく、どうしてここを出ていく必要があるんだ?ここはお前の地元だし、せっかく家族が揃ったんだ、ずっと居れば良いじゃないか」


「どうしても、やらなきゃいけないことがあるんだ」


「秀一、それって……」


「お前、まさか……」


「絶対にモンスター図鑑を完成させたいんだ。まだまだ埋まってないからね、もしかしたら日本だけじゃ埋まらないかもだし。とりあえず日本をぐるっと回ってみるよ。あっモンスター図鑑ってのは俺のスキルで……」


 モンスター図鑑の説明と、図鑑コンプへの熱い思い、これからの攻略の展望を語っていると、呆れた顔した両親に怒られる。


「お前、良い歳して……ゲームじゃないんだ。命の危険があるんだぞ」


「大切な人を迎えに行くとかじゃないのね……あなた良い人はいないの? 」


「父さんだって、切手収集してたし。母さんも熊のぬいぐるみ集めてたじゃないか。これは遺伝なの、血が繋がってる証なの」


 佐藤家の収集癖は、遺伝なのだから仕方ない。命の危険もあるのは承知の上だ。この状況がいつまで続くかわからない以上、やりたいことをするべきだと思っている。モンスターを狩って食料を得れば、生きていけるかもしれないが、それなら図鑑を埋めるために色んなモンスターを狩りたい。母さんの言葉はスルーする。


「まぁ、お前の考えはわかった。もう子供でもないんだ。好きにしなさい」


「心配だけど、言い出したら聞かない子だものね……でも、たまには顔を出しに来るのよ」


 その後は、食器の片付けを母さんに任せて、父さんと調達班の詰め所に向かう。散らばっていたメンバーも集めてもらい、自分の考えを説明した。最初は半信半疑だった調達班メンバーも、魔法や無限収納、身体能力を見せると前向きになってきて、これならいけるかも的な空気になってきた。その後は、作戦を話し合い。さっそく明日の朝から始めることになり、今日は解散することにした。カツ君に声を掛けられ、2人で部屋の外に出る。


「しかし、改めてお前が無事で良かったぜ。佳恵も達也も、知ってる奴が何人も居なくなっちまったからな……」


「そっか……」


 高校時代の友人たち。他の避難所に居てくれたらと思ったが、既に亡くなっているようだ。ハッキリと知り合いの死を聞き、今回の異変の理不尽さを感じた。その理不尽さへの憤りをぶつける相手もモンスターくらいしかいない。憤りをぶつける先があるだけマシなのかもしれないが……奴らは倒しても倒しても再び湧いてくる。死んだ人は帰ってこないというのに、と気分が沈み込む。


「悪い、なんか湿っぽくなっちまったな。明日に備えて今日はもう寝ようぜ」


「そうだね。今は自分たちにできることをしていこう」


 それじゃあ、また明日とカツ君と別れて割り振られた部屋に向かい、亡くなった友人たちに黙祷をし、眠りについた。

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