166話
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自分と消えた人達との違い……武器か。扉の外には突然姿を消した仲間たちの姿を探し、辺りに視線を巡らす軍人さんたちがいる。
「佐藤さん、これは一体……」
「よくある転移系の罠だと思います。えーっと、よくあると言ってもゲームの話で実際にこんな罠に遭遇するのは自分も初めてです」
恐らく武器を装備しているかどうかだとは思う。扉の外へ出てどこかにそれらしいヒントが無い探してみる。
よく見ると氷でできた扉の周りには精巧な彫刻がされており、植物のツタが剣や槍などの武器を絡め取るようなモチーフが彫られていた。
「ただの意匠かと気にしてませんでしたけど、これがヒントだったみたいですね」
「一応ヒントは配置されているのですね。ダンジョンというのは訳がわかりませんね……攻略されたいのかされたくないのか」
何にせよ罠が仕掛けられたダンジョンは自分も初めてだ。これまで以上に慎重に進む必要がある。
さらに罠にかかった人達を捜さなければならない。流石に即死していることはないと思いたい……何せシュナイダーも飛ばされてしまっているのだ。
話し合った結果、侵入者が捕らえられている場所と言えば牢獄。何があるかわからない城内よりも先ほど行った牢獄に行ってみることにした。
来た道を戻り牢獄に近づくと、生命感知に先ほどはなかった反応がある。未登録のモンスターだ。
牢獄の入り口を守るように、二体の全身鎧を身につけた兵士のようなモンスターが立っていた。
手には槍を持ち、腰に剣をさしている。
これはいかにも何かありますと言っているようなものだ。
そこまで強くないようなので、透明化をかけて近寄り一体を奇襲で倒す。
しかし二体目を仕留める前に、甲高い笛のような音が辺りに鳴り響いた。辺りの森に次々とモンスターの反応が現れ、近づいてくる。
軍人さんたちも慌てて集まり、牢獄を背にモンスターを待ち構える。
襲ってくるのは全身鎧のモンスターと、白い狼のようなモンスターだった。
モンスターの強さ自体は大したことがなく、特に苦戦せずに殲滅できた。
129番 氷城の兵士 アイテム1 救援の呼び笛 アイテム2 兵士の長槍
130番 ホワイトウルフ アイテム1 白狼の毛皮 アイテム2 スクロール(狼の嗅覚)
ドロップを回収して牢獄の中へ入り、奥へと進む。予想通り先ほど訪れた時は空だった牢に軍人さんたちとシュナイダーが囚われていた。
どうやらみんな怪我などは無いようで、一先ず安心する。しかし困ったことに牢の鍵らしき物が見当たらない、さっきのモンスターたちもドロップしなかったし牢獄の中にもそれらしい物は置いていなかったのだ。
「佐藤さんのスキルでどうにかなりませんか?」
「それがダンジョンを構成する物に対して無限収納は効果がないんですよ。ズルは許されないというか、ダンジョンは正攻法で攻略しないとダメみたいなんです」
「それじゃあみんなを助けるために鍵を探す必要がありますね」
ということで一旦牢獄を後にして鍵を探すことになった。何もなかった離れの塔に変化がないかと見に行くも、変わりはなかった。ここはまた別で何かあるのかもしれない。
こうなると牢獄の鍵は城内にある可能性が高い。どんな罠が待ち受けているのかわからないので全員で突入することはせず、自分と素手での戦闘が得意な数名が城内に侵入することにした。
残りは入り口前に拠点を建てる者と、大統領官邸に現状を報告しに行く者とで別れた。通信が使えないのが不便である。
「今のところここにモンスターは出ないようですが、城内の自分たちの行動次第ではどうなるかわかりません。拠点の維持が無理そうなら撤退してください」
テントや食料。暖を取るためのストーブなどを収納から出していく。一日で攻略するのは厳しそうなので、ある程度探索したら入り口に戻ってくる予定だ。
「了解しました。佐藤さんたちもお気をつけて」
拠点確保組と別れ城内へと侵入する。松明や電気なんかの光源は見当たらないが、城内は不思議な明かりで満たされており暗くない。
壁や柱、天井から吊り下げられたシャンデリアまで全ての物が氷で出来ている。
しばらく青白く光る幻想的な光景に目を奪われた。
城内に入ると大広間になっており正面には城の奥へと続いていそうな回廊が伸びている。他にも広間の左右に伸びる道があった。
本命っぽい真ん中は後回しにして右の方から探索する。先頭を行こうとすると止められる。
「佐藤の兄貴、あんたに何かあったらロシアばかりか世界がお終いだ。露払いは俺たちに任せてくれ」
「ニコライさん……わかりました。罠には気をつけてくださいね」
相撲好きのニコライさんが先頭をかってでてくれる。軍人さんたちに守るように周りを囲まれ、城内の探索が始まった。





