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145話

 アレクセイさんを鍛え始めてから一週間。毎日ひたすら戦闘に明け暮れたアレクセイさんは、とうとう無傷でアイシクルベアを倒すまでに成長していた。


「アレクセイさん、やりましたね」


「あぁ、まだまだ佐藤には遠く及ばないがな。これならこの町で何とか暮らしていけそうだ」


「白熊たちも居ますからね。今夜はお祝いにご馳走にしましょう」


「ウォッカも頼む」


「ちょっとだけですよ」


「大丈夫。水みたいなものだ」


 ミニログハウスに戻り、食事の準備をする。ご馳走といっても大したものも作れないが、アレクセイさんも子供たちも美味しいと喜んで食べてくれた。調理スキルのおかげかもしれない。

 お腹がいっぱいになった子供たちがシュナイダーやお松さんと遊んでいる中、こちらはアレクセイさんとこれからの事を話す。


「自分はそろそろ移動しようと思います。探索しつつ死の谷って呼ばれているところを目指そうかと」


「そうか、佐藤には本当に世話になった。ありがとう」


 そう言って握手を求めてくるアレクセイさんと握手を交わす。


「困った時はお互い様ですよ」


「こちらはしてもらうばかりだったがな。何とか恩を返したいが……本当に珍しいモンスターを見つけたら教えるだけでいいのか?」


「それが一番ありがたいですね。大変なんですよ? モンスターにはレアポップだったり、特定の条件で湧くモンスターもいて……」


 アレクセイさんにモンスター図鑑を埋める楽しさ、大変さを語る。


「なるほど、わからん」


「えー、子供の頃図鑑とか見るとワクワクしませんでした?」


「俺は身体を動かす方が好きだったからな」


 しばらく出会ってから今日までの思い出話に花を咲かせ、子供たちがおねむになったところでお開きとなった。

 翌朝、別れの前にアレクセイさんと連絡先の交換をしようと話を切り出した。


「通信ができる……? それは本当か?」


「ええ、日本で電波塔を攻略した時そんなメッセージが流れて全国で使えるようになったとか」


「しかし作戦行動中だったし携帯は持ち歩いてないな。一応連絡先は教えておくが……そうだ、ちょっと待っていてくれ」


 そう言ってミニログハウスに入っていくアレクセイさん。荷物から無線機を取り出している。何やら電池? バッテリーを交換している。

 それからアレクセイさんは、しばらく無線機を使って何処かへ呼びかけていたが反応がなかったらしく肩を落としている。


「ダメだ、応答がない。もしかしたらと思ったんだが……」


「部隊の人たちへですか?」


「ああ……」


 落ち込むアレクセイさんへかける言葉が見つからない。相手側のバッテリーがないとか、無線機を手放したとかも考えられるがあまり無責任なことも言えない。


「すまない、大丈夫だ。引き止めてすまなかった」


「いえ、そんな。もし生き残っている人を見かけたら、この町のこととアレクセイさんのことを伝えますね」


「ありがとう」


 町には空き家が沢山あるので寝る場所には困らないだろうが、万一アレクセイさんたちが移動することになった場合も考えてミニログハウスは置いていくことにした。

 収納にはまだ沢山残っているし、持ち運びできる拠点は便利だからな。

 手を振るアレクセイさん、子供たち白熊に別れを告げて飛び立つ。次に目指すのは物騒な名前の観光地、死の谷だ。


「最後に微妙な空気にしちゃいましたよ……」


「んー? あれは仕方なかったんじゃないですか? お兄さんの責任ってわけでもないですし」


「そうなんですけどねぇ。他にも生き残っている人がいれば良いんですけど……」


 あの町のコミュニティはアレクセイさんと子供たち、それに白熊夫婦だけだ。白熊たちは協力的で子供たちにも優しいが、流石に大人の人間がアレクセイさん一人では大変だろし、生き残りがいたら合流できるように力になろう。

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