14話
広間に戻ると、扉が閉まっていく。パチパチと拍手の音がして振り向く。
「お見事ですにゃ」
「ありがとうございます」
「お花を守ろうとしている蜂さんを、容赦なく蹴ちらす姿は中々のもんでしたにゃ」
「まさか、蜂たちにあんな攻略法があるとは思いませんでしたよ。って、えっ、見てたんですか?」
「もちろんですにゃ。お客さんを応援し、見守るのも受付嬢の大切な仕事なんですにゃ」
腰に手を当て、得意げな表情をするねこさん。胸をそらして、長い尻尾をフリフリしている。
「それにですにゃぁ。お客さんは1人しか来ないので、案内が終わってしまうと暇なんですにゃ」
(確かに、自分1人しかここに来ないと言っていたな。あれ? )
「あのー、ねこさん」
「なんですにゃ?」
「自分の他に、モンスター図鑑のスキルを持った人が条件を満たしたら、どうなるのですか? 」
「それは、その人の追憶の広間に行きますにゃ。モンスターと戦った経験や記憶は人それぞれですから」
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
「どういたしましてですにゃ。それで、次はどうされますかにゃ?」
「今回はこれで帰ろうと思います。また来るので、その時はよろしくお願いします」
「またのお越しをおまちしておりますにゃ」
帰りは、中央の魔法陣に乗るらしい。
言われた通り魔法陣の中央に乗ると、来た時と同じ光に包まれる。手を振るねこさんに見送られながら、意識が途切れた。
気がつくと、漫画喫茶のファミリールームに戻ってきていた。時間を確認すると、4時間ほど経過していた。そういえば朝食も食べていなかったので、食事をとることにした。厨房に移動しガスコンロとフライパン、調味料とウサギの肉を取り出す。勇気を出して食べてみることにした。塊のままでは火が通りにくいので、まな板と包丁も取り出し、食べやすい大きさに切る。適当に塩胡椒して、油を引いたフライパンで炒めて食べてみる。
「ウサギって食べたことなかったけど、美味しいな」
朝食も食べていなかったため、あっという間になくなった。食後のコーヒーを飲みながら、闘技場での戦闘を思い出す。やはり厄介だったのは、モンスター同士の連携であった。今まではなるべく分断したり、奇襲でまとめて倒したり、武器を取り上げたり、レベルでごり押したりしていた。しかし、得るものもあった。ヒーリングフラワーを守ろうとする蜂たちの習性。ああいった行動を利用することで、昨日より楽に戦えた。初見では予期せぬ襲撃と、数にパニックになってしまったが。
魔法を使う時に杖を使うのも、もっと早く気付くべきだった。火球がかなり使いやすくなった。これからは剣と杖の二刀流も良いかもしれない。幸い無限収納のお陰で、装備の切り替えは楽チンだ。
(とは言え、このままじゃ行き詰まりそうだ)
もしかしたら、避難所で仲間を募れば、ついてきてくれる人もいたかも知れない。しかし、自分の目的のために危険に付き合わせるのも気が引けるし、命に責任が持てない。貴重な人手を奪うことにもなる。
(やっぱり欲しいな、テイムスキル。あと、防具と足止め系のスキルと、自販機が全滅したし、補充もしたいな。質量のあるものも欲しいな)
今日はこの後、物資の補給とまだ取得できていない武器スキルの取得を目指すことにした。出していた物を片付け、ゴブリンソードを装備して漫画喫茶を後にした。
自販機や事故で壊れた車を回収しながら街を進む。ドラッグストアやコンビニで食料も補充し、トラックの集積所でコンテナも何個か回収しておいた。今後のために、給油車も収納した。後は防具だが、バイクショップでライダースーツとヘルメットを拝借してきた。まだ動き慣れないが、肌の露出はなくなったので今までより大分マシになった。ウサギの尻尾が気になるが、いざとなったら直ぐにしまえるしヘルメットもあるのでまぁ良いだろう。
新スタイルでゴブリンを倒しながら進んでいると、展示販売されているコンテナハウスを見つけ、中に人が居ないのを確認してから回収した。
ある程度物資の補充も済み、そろそろ実家に向かうことにする。市街地を抜け、高速近くまで来ると自分の車を出し、乗り込む。ヘルメットを脱ぎ、エンジンを掛ける。道路を塞いでいる車を無限収納に入れながら走る。地元までは飛ばせば1時間くらいだ、スピードを出せばモンスターも振り切れるだろう。衝突だけ注意だな。





