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134話

 思ったよりも雪女さんたちが人間社会に受け入れられるのが早かったので、自分はそろそろ旅立つことにした。

 交流を深めるうちに今は見えない問題も出てくるかもしれないが、そこら辺はカツ君がうまくやってくれるはずだ。


「カツ君、ごめんね。そろそろ行くよ」


「おぅ、頑張れよ。男に二言はない。ここは俺に任せて、ヒデはヒデにしかできないことをしろ」


 なんだか大げさな別れの言葉をかけてくるカツ君。表情には悲壮感が漂っている。親友だからといって大変な役割を押し付けてしまっただろうか?


「佐藤さん。ありがとうございました。大原さんと協力して雪女の村を大きくできるよう頑張ります」


「いえ、中途半端になってすみません。カツ君も地元での仕事があるので、様子を見に来る日程なんかはお互い相談して調整してください。では」


 見送ってくれるカツ君とふぶきさんたちに手を振り別れ、空へと飛び立つ。しかし雪女が実在していたとは驚きだった。

 妖怪なんかとは違う人間に近い不思議な種族って感じだけど、他にもそんな存在が地球には存在するのだろうか?

 身近にもへんてこな存在がいるしなぁ。もっとたくさんいるかも。自分の膝の間に座るシュナイダーに跨ったお松さんを見る。気配を感じたのか、こちらを振り返ってお松さんが問いかけてきた。


「どうしたんですか? お兄さん」


「いえ、ちょっと。カツ君は雪女さんたちにモテてたなぁと思って」


 まさか本当のことは言えず、咄嗟に思いついた話題をふる。


「……あれは獲物を見る女の目ですよ。お兄さんは助かったんです……」


 何かを悟ったような遠い目をするお松さん。女性の視点からだとまた違って見えるのだろうか。


 一週間後、現在は九重さんたちと出会った北の大地を探索していた。夜景の有名な街と、時計台がある街でワープゲートを見つけて登録するまでは順調だった。

 両方ともダンジョンのようになってるでもなく、割と観光地として有名になっている場所に例の石板がポツンと置いてあった。

 こちらとしてはむしろダンジョン化していて、新しいモンスターの一体や二体いてほしかったのだが。そう、全然新しいモンスターがいなかったのである。

 これではもはやモンスターを倒しながら観光しているだけだ。まだまだこの北の大地は広大な面積を残している。


「よし、一旦新天地を目指します」


 追憶の広間でコタツに入りながら自分に言い聞かせるように宣言する。そしてチャボさんに剥いてもらったりんごを食べる。美味しい。


「んにゃ? 急にどうしたんですにゃ?」


「いや、最近全然図鑑が増えなくて……ちょっとモチベーションが」


「そういえば、追憶のダンジョンも闘技場もしばらく更新されてませんにゃ」


 最後にカガミモチを倒してから、なんだかんだで一ヶ月近くたつ。これほどの期間があって収穫はワープゲート二つだけだ。もちろん移動が便利になるので嬉しいのだが、やはり図鑑のページが増えないとニヤニヤできない。

 北の大地へはワープゲートを見つけたので、また来ようと思えば来られる。気分転換に新天地開拓を目指すことにした。


「厳しい移動になるかもしれないので、お松さんはここでりんごでも食べててください」


「お兄さんがいつになくやる気です。いってらっしゃい」


 誘惑のコタツから抜け出し、北を目指して飛ばす。生命感知で道中に未登録のモンスターがいないかだけ確認しながら飛んだ。

 朝出発して、その日のうちに北方にある島の一つにたどり着いた。残念ながらここまでは新しいモンスターがいなかったが、島伝いに更に北へ進むと待望の新モンスターが見つかった。


「やった。いたぞ……」


 島の周りに流れついた流氷の上に、白いもふもふの毛皮で覆われたモンスターがゴロゴロと湧いていた。見た目はアザラシの子供にそっくりだが、生命感知の反応からモンスターだと分かる。

 黒龍剣を取り出し、まだこちらに気づいていないモンスター目掛け走り寄り一体目を斬りつける。

 こちらの強襲に反応できなかったモンスターは一撃で消えていき、遅れて気がついた周りのモンスターたちがその形相を変えて襲いかかってきた。

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