133話
駅で合流したカツ君を先導し、山まで戻ってきた。出しっ放しにしていたミニログハウスの側へ降り立つと、中からふぶきさんが出てきた。どうやら到着して待っていたようだ。
挨拶と軽い自己紹介を済ませ、ミニログハウスの中へ入るとゆきさんとせつさんも居た。ふぶきさんが娘たちだと紹介すると驚くカツ君。
そういえばそこら辺の詳しい説明はしていなかった。ふぶきさんが娘だと思ったらしい。確かに、ふぶきさんは中学生くらいの大きさの子供がいるようには見えないもんな。せいぜい十代半ばにしか見えない。
「いや、びっくりしました。とてもお若く見えたので」
「うふふ、ありがとうございます。でも私だけでなく、雪女はみなこういうものなんですよ?」
ふぶきさんによると雪女は少しの差はあれど、ある程度成長した時点で見た目が変わらなくなってしまうそうだ。
そのせいで人間社会に完全に溶け込むことが難しいのだと言う。現代では戸籍の管理もしっかりされてるし、なおさらだろう。
「若い外見のままってのも楽じゃないんですね」
「やはり人は自分と違う物を恐れますから……」
ふぶきさんの顔が少し曇る。その表現からは色々と苦労が察することができた。暗くなった空気を感じたのかカツ君が話題を変える。
「ヒデ、俺は何をしたらいいんだ?」
「この間もふぶきさんたちと話したんだけど、雪女のひとたちと交流できる村を作ろうと思うんだ。ふぶきさん、里での話はまとまりましたか?」
「えぇ、みんな前向きに考えております。このままでは後がありませんし、幸か不幸かわかりませんが時代の変わり目のようなので、わたしたちも新しいことに挑戦してみようと」
「そこでカツ君に人間と雪女さんとの間をとりもってもらおうかなって、ダメかな?」
「しかし、ヒデが直接やったほうが早そうに思うんだが……顔もきくだろ?」
「もちろん最初は顔を出してお願いするよ。でも自分もずっとはいられないし、人任せにする以上、信頼できるカツ君に定期的に様子を見てもらえるほうが安心できるし……」
「わかった、軌道にのるまではこっちにいて、それ以降のことは様子を見ながらふぶきさんと相談するわ」
「ありがとうカツ君」
「ありがとうございます大原さん」
それから詳しく話を詰めていく。村を作る場所はこの山の近くにある町の小さな木造二階建ての小学校に決まった。
この町の生き残りは隣町の高校に避難しているので無人だし、あまり大きくなくて少人数でも管理しやすそうだったからだ。
それからカツ君とふぶきさんを連れて隣町の避難所まで村を作ることを説明したり、雪女さんたちを小学校に運んだりと数日ついやした。
説明しに行った避難所では最初驚かれたが、割とすんなり受け入れられた。どうやら自分が関わっていることと、こんな世界になったおかげで、またか。といった感じらしい。大分不思議なことに耐性がついているようだ。
慎重になり過ぎたかもしれない。でも実際交流が始まってみないとなんともいえないので、まだ安心はできなかった。やってみて見えてくる物もあるのだ。
雪女さんはふぶきさんたちも入れて十名程が小学校に来た。残りは里に居て万一に備えたり、交代要員として待機しているようだ。
寝具や衣服、生活に必要そうな物を提供する。あとの村の運営方針なんかはふぶきさんたちに任せる。こちらは人間と雪女さんたちとの間に揉め事が起きないように気を配るくらいだ。
とりあえず移動手段はあったほうが良いだろうとワイバーンのテイムを手伝い、小学校に来た全員がテイムに成功する。
それからモンスターを狩って食料を隣町の避難所へ持っていき交流を深めたり、お松さんの講演を通して人間以外の存在をアピールしたりしていった。
「結構大丈夫そうですね」
「はい、世の中変わるものですね」
感触は悪くない。みんなの不思議耐性が下がっていたおかげで思ったよりもスムーズにことが運んだ。後の種の存続なんかは人間と雪女さんたちとの問題なのでなり行き任せだ。
そしてカツ君はというと雪女さんたちに人気で非常に困っていた。よし、種の存続も問題ないな。
「いや、俺は他にも仕事があってそろそろ一回帰らないと……」





