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13話

 光がおさまり目を開けると、いつのまにか、大きな広間に立っていた。ポカンとしていると声を掛けられる。


「ようこそ追憶の広間に、ですにゃ。人間さん」


 いきなり声を掛けられ、ビクッとし辺りを見回すと巨大な扉の横に受付のようなものがあり、その中に猫耳? の女性が立っていた。セミロングの赤茶色の髪で、小さな帽子を頭にチョコンと乗せている。


「どうも、佐藤と言います。あの、貴女は……」


「わたしはこの追憶の広間の受付嬢をしている、ねこと申しますにゃ」


 ねこと呼んでくださいにゃ、と続ける女性に距離を取ったまま観察する。確かに受付嬢のような格好をしている。謎空間にいる猫耳を生やした女性、おそらくは今回の異変の原因側の人間だろう。警戒と緊張、異変について何か分かるかもしれないことで心臓がドキドキする。


「何故、今あのような異変が起きているんですか? 誰の、もしくはなんの仕業なんでしょう? 」


「わたしはただの受付嬢なので、ここのこと以外は分からないですにゃ」


「そうですか、分かりました。それではこの場所について説明していただけますか?」


 素直に教えてくれるとは思っていないが、聞かずにはいられなかった。あるいは、本当に知らないのかもしれない。ここのことを尋ねるとねこさんが説明を始めた。


 ここ、追憶の広間には追憶の闘技場と追憶のダンジョンに繋がる扉があり、今まで倒したことのあるモンスターと再戦できるらしい。闘技場は、ドロップやレベルアップ、スキルの取得がない代わりに、死ぬことが無くモンスターと戦闘訓練ができるようだ。致命傷を負うとこの広間に戻されるとのこと。逆にダンジョンの方は、外の世界と同じでアイテムも経験値もスキルも得られるが、普通に死んでしまうらしい。ただ、戦闘中でなければ、ダンジョン内どこからでもこの広間に戻れるという仕様だった。


「ここまでで、質問はありますかにゃ?」


「ここに、他の人を連れてくることは可能ですか?」


「それはできませんにゃ」


「駄目ですか……。だいたい把握はできました。ありがとうございます」


(完全にソロ専用の訓練所、取り逃がし回収用の施設って感じか。自分には願ってもない施設だな)


 一度登録してしまえば、倒したいモンスターをいつでもどこでも狩りに来られるというのはデカイ。例えば、キラーラビットを倒しにくればいつでもウサギの肉が手に入る。まだ食べたことは無いが、今後も食料を落とすモンスターが増えれば食料の調達が楽になるだろう。外で回収するにも限界があるし、いずれはつきあたる問題が解決したのは嬉しかった。


「それでは、どうされますかにゃ?」


「今回は、闘技場を試してみようと思います」


「現在参加可能なのは第1試合ですにゃ。ご武運を」


 そう、ねこさんが言うと巨大な扉が音を立てて開いていく。中に入ると反対側の扉から、ノーマルゴブリンが三体が出てきた。試しに、無限収納で棍棒を回収しようとしても何も起きない。


(まぁ、相手の武器を奪えるのはかなりズルいからな。何気に武器を持ったゴブリンと戦うのは初戦以来か?)


 しかし、レベルが上がった今、武器を持っていようともゴブリンは敵ではなかった。動きもよく見えるし、あえて攻撃を受けてみてもほとんどダメージをうけなかった。ゴブリンを刺突剣でサクっと片付ける。次の相手はゴブリンシーフ、ファイター、アーチャー、メイジが1匹ずつの編成だ。遠距離攻撃と連携して攻めてくるのに手間取り、何度か攻撃を受けてしまうがレベル差もあり苦戦まではいかない。ゴブリンパーティーを倒し、受けたダメージを回復しておく。


(順番的に次はアイツか)


 扉が開き、3匹のキラーラビットをお供に連れて、ラッキーラビットが出てきた。動きを封じられていないウサギたちは中々手強かった。素早い動きで連携をとり、連続攻撃を仕掛けてきたり、こちらを囲んで襲ってきたりと翻弄される。まずは数を減らすことにする。飛び掛かってきたキラーラビットにカウンターを当てていき、ラッキーラビットとのタイマンへと持ち込んだ。しばらく一進一退の攻防が続く。何度目かの攻撃をかわした時、ラッキーラビットが転倒した。その隙に刺突剣を連続で突き刺すと、光となって消えていった。


 少しのインターバルを挟み、ジャイアントワスプ5、クイーンワスプ1、ヒーリングフラワー2が出てくる。ヒーリングフラワーは歩けないからか、地面から生えてきた。


(まずはヒーラーから潰すのはお約束だな)


 クイーンワスプに牽制の火球を飛ばしながら、ヒーリングフラワーに駆け寄ると、ジャイアントワスプ3匹

が守るように前に出てくる。剣で薙ぎ払うと、アッサリ地面に落ちる。無防備になったヒーリングフラワーにとどめを刺し、もう1匹のヒーリングフラワーに火球を放つと、それを庇いジャイアントワスプが燃えていく。どうやらジャイアントワスプにはヒーリングフラワーを守る習性があるようだった。


 取り巻きを片付け、残りはクイーンワスプとヒーリングフラワーだけになる。ヒーリングフラワーを守るクイーンに火球を放つと、器用なことに針で火球をうちはらう。しかしノーダメージというわけではなさそうで、針は煙をあげボロボロになってきている。するとヒーリングフラワーが光り、クイーンの針が元に戻される。やはりヒーリングフラワーから倒すか、回復を上回るダメージを与え続ける必要がある。


 そういえば、今まで魔法を使う時杖を装備していなかったと、試しに左手にゴブリンロッドを装備して火球を放ってみると、今までより大きく速い火球が飛んでいった。これならと思い、連続で放つと火球を捌ききれなくなり弱ってきたクイーンの隙をつき、駆け寄ってヒーリングフラワーを切り捨てる。後は弱ったクイーンにとどめを刺すと、追憶の広間への扉が開く。


(戻ってご飯でも食べるか)


 こうして初めての闘技場での戦いに勝利し、ねこさんのいる広間へと戻るのだった。


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