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126話

 急いで最初に訪れた神社に戻ると、カツ君以外にも二人ワイバーン隊の人が増えていた。


「お、きたきた」


「カツ君、連絡ありがとう。それで、あれが……」


「あぁ。ヒデが行った後応援呼んでしばらくモチを狩ってたら、あれが湧いてきてな」


 普通のモチは白くて丸い。非常にシンプルな見た目をしている。しかし目の前にいる、おそらくモチのレアポップであろうモンスターは、モチが二段重ねになっている。さらに一番上には橙が乗っていた。

 どう見ても鏡餅だ。鑑定眼で確かめてみると、楽に勝てる相手と返ってくる。見た目が少し豪華になっても、モチはモチ。むしろ鏡餅はまったく動かないので、ノーマルのモチより弱いのでは?

 耐久力があったり、特別な倒し方があるのかな? まぁやってみればわかるか。とりあえずモチだし焼こう。蒼炎を鏡餅に向けて放ってみると、あっけなく燃えて消えていく。


「なんだ、あっけないな」


「楽に勝てる相手って出てたしね」


「まじか? こっちは手こずりそうな強さって出てたんだが……」


 カツ君やワイバーン隊の皆には、鑑定眼のスクロールを渡してあった。意外と鏡餅はレベルが高かったのかもしれない。図鑑の確認とドロップの回収を済ませる。


 115番 カガミモチ アイテム1 丸餅 アイテム2 鏡餅


 レアポップの割にドロップが微妙な感じがする……丸餅は普通のモチが落とすし、鏡餅はコレどうするんだ?


「鏡餅って神さまへのお供えものだっけ? 何に使うのかな」


「とりあえず飾るか? 正月が終わったら食べるんだろ、確か」


 レアなアイテムなことには間違いないので、収納にしまっておく。とりあえず避難所に帰ったら飾るか。二個目が出たら作法通り食べてみよう。

 その後は昼までモチを狩って丸餅を集めつつ、ごく稀にポップするカガミモチを倒していった。最終的に大量の丸餅と、三つの鏡餅を手に入れ予定通り昼前には避難所に戻ることになった。


「いやー、元旦の朝からこんなにモンスターを倒すことになるなんてな」


「本当だね。でもラッキーだったよ。もしかしたら年一でしか会えないモンスターかもしれないし、寝正月を過ごしてたら会えなかったかも」


「はは、ヒデ的にはそうだろうな。まぁ餅も大量に手に入ったし、少しは避難所も正月らしくなるんじゃないか?」


 そんな風に話しながら避難所の中庭でカツ君と焚き火にあたっていると、カツ君のお母さんがお盆を持ってこちらにやってきた。


「はいお待たせ。お雑煮よ」


「おばさん、ありがとうございます」


「サンキューおふくろ」


 ダシに餅と少な目の具が入った食べなれた地元の雑煮だ。シンプルながら寒い中で食べる熱々の雑煮が非常に美味しい。

 朝ごはんも食べずに餅集めに奔走していたので、あっと言う間に食べきってしまう。まだ足りないな。おかわりは出来るだろうか?


「足りないな。ちょっとおかわりできるか聞いてくる」


「ありがとう」


 カツ君が差し出す手にお椀を渡し、しばらく一人で火にあたりながらゼロと話していると、シュナイダーが何やらお洒落をしたお松さんを乗せて中庭にやってきた。どこかに行ったと思ったら、お松さんのところへ行っていたのか。


「お兄さーん! 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」


「明けましておめでとうございます。お松さん。こちらこそよろしくお願いします」


 なんだかそわそわした様子で、こちらをチラチラ見てくるお松さん。シュナイダーと目を合わせると、着物着物と訴えてくる。

 あぁ、やっぱりそれか。この柄は何となく見覚えがある。鬼ヶ島で手に入れた織物で母さんにお土産として渡したやつだ。

 そうか、あれでお松さんの着物を作ったのか。和風美少女といったお松さんに大変良く似合っている。

 うんうんと頷いていると、ゼロとシュナイダーから褒めろと突っ込みが入る。そっか、確かに似合ってるもんな。


「お松さん、着物良く似合ってますね」


「え?! 気づきました? えへへ、こんなに素敵な晴れ着は生きてる間着たことがなかったので凄く嬉しいです。お母さまに感謝です」


 微妙に重たいセリフを言うお松さんだが、表情に暗さはなく本当に嬉しそうにしている。良かった良かった。

 中庭にはお雑煮を貰いにきた人たちが増えてきて、その場で食べたり校舎内に戻る人たちもいる。


「皆何をもらっているんですか?」


「あぁ、それは……」


「おーい、ヒデ。今度はおしるこだぞ」


「ありがとうカツ君」


 カツ君からおしるこの入ったお椀を受け取りお礼を言う。せっかくの餅だしと、小豆やあんこの缶詰を渡しておいたのがおしるこになって出てきた。自分もカツ君も甘いものは平気なのでこれも美味しく頂こう。

 すると手に持ったお椀に視線を感じる。そうだ、お松さんも来たんだった。


「あれ、お松さん。明けましておめでとうございます。しまったな、二人分しかもらってきてないぞ。ちょっともう一回行ってくるわ」


「あ、カツ君。大丈夫だよ」


 収納からお松さん用の食器セットを取り出して、自分のおしるこを取り分ける。この食器セットはおもちゃ屋で見つけた物で、人形用なのだがお松さんにはちょうど良いサイズなのだ。


「お兄さん、ありがとうございます!」


「はは、食いしん坊のお松さんには足りないかもですけど」


「もう! お兄さんは一言余計ですよ。お、美味しいです!」


 事実を述べたら怒られてしまう。しかしその後お松さんはおしるこを二杯おかわりをした。やっぱり食いしん坊じゃないか。

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