124話
「まったく、無茶はするなと言っただろう」
「あれはしょうがなかったんだよ。それに図鑑を完成させるためには必要だったし……」
「まぁまぁおじさん。ヒデも無事だったんだし」
「勝志君。しかしだな」
暗くなる前に帰ってきたワイバーン隊も交えて西日本の旅の成果を話した後、ゼロとシュナイダーを回収し夕食の席で父さんに怒られていた。
特に竜宮城のくだりについては、そんなあからさまに危険そうな場所に行くやつがあるかと呆れられた。
そう言われても図鑑のためには何かありそうだったら行くしかない。まぁ、実際現状ではまったく歯が立たない相手が居たわけだが、こればっかりは常に初見プレイみたいなものなので仕方がない。
竜宮城の初回はお客扱いという仕様で助かったが、次に訪れる時はしっかりと対策が出来てからになるだろう。
「困った子ねぇ。お松ちゃん、息子が無茶しそうになったらお願いね?」
「はい、お母さま」
「シュナイダーも頼むぞ」
何やら母さんと仲良くなったお松さんが頼まれているが、お松さんは特に何の能力もない。いや、人形に乗り移っているのは能力なのかな? それとも人形の隠された効果なのか……
シュナイダーも父さんに何か言われているが、止めても無駄だしなぁ、と困った表情でこちらを見てくる。
「しかし、各地で困った人たちを助けているというのは親として誇らしいぞ」
「そうです、お兄さんは苦手な幽霊の私にも付き合ってくれたとっても良い人です」
「あら、そういえばお松ちゃんは幽霊さんだったわね。秀一、あなた怖いのは平気になったの?」
「いや、無理。お松さんは話してたら怖くなくなったんだ」
「昔っから怖いのはダメだもんなヒデは」
その後もしばらく団欒の時間を過ごしていると、カツ君に今後の予定を聞かれる。
「それで、次はどこに行くんだ?」
「そろそろお正月だし、年末年始くらいはゆっくりしようかな」
「おお、そうしろそうしろ。寒くなってきたし、無理することはない」
「そうね、いつも通りとはいかないけど家族でお正月を過ごしましょう」
年末年始は大体実家に帰って過ごしていたので、今年も実家ではないが地元の避難所で過ごすことにする。両親も喜んだ表情でそうしろと言っている。
日本は大体見てまわったので、後は各地の避難所からの情報を待ちつつ、細かいところをロバさんにフォローしてもらいつつ探索していこう。
また、海外に行くことも考えないといけない。マップスキルはあるが、土地勘がないし海外で生き残っている人たちとのコミュニケーションなんかはどうするか……簡単な英単語とボディランゲージで何とかなるかな?
ゼロの飛行速度があるとはいえ、一度海外に出たらワープゲートでも見つけない限り、そう簡単に日本へ帰ってくることはできないだろう。
最近移動しっぱなしだったし、お正月くらいはゆっくりと過ごそう。
数日近所のモンスターを狩ったり、避難所の環境改善を手伝ったりしてまったり過ごしていると、あっと言う間に大晦日だ。
ここ数日自分の参加で食料調達が捗ったらしく、三が日の間は避難所の皆もゆっくりできそうとのことだ。
避難所ではまだまだ厳しい状況ではあるものの、新年を迎えられたことを喜ぶささやかな宴が催され、自分も収納に入っている蕎麦を年越しそば用に提供した。
「うー、ちょっと飲み過ぎた」
「カツ君あんまり強くないのに……」
翌朝二日酔いに苦しむカツ君と避難所をまわり新年の挨拶を済ませ、現在歩いて近所の神社へと初詣に向かっていた。
自分もそれほどお酒は強くないのだが、セーブして飲んだので残ってはいなかった。冬の冷たい空気が気持ちいい。
寄ってくるモンスターはシュナイダーが無双して片付けてくれる。神社は地元の小さな物で、小さな拝殿とお賽銭箱が設置してあるだけだ。それほど遠くないのですぐに到着する。
鳥居をくぐると、境内に白くて丸い奇妙なモンスターがポップしていた。なんだろう? 雪玉?





