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105話

 装備を収納にしまい、裸にパンツ一丁でまわしを片手に悩んでいると、土俵の方から視線を感じる。顔を上げると、こちらを行司と立派な体格のカッパが見ていた。


「かぱぁ? かぱぱ」


「かぱ」


「かぱ〜」


 こちらを見て二、三言葉をかわした二体。すると立派な体格のカッパが土俵から降りてこちらに近づいてきた。

 警戒して身構えるが、まぁまぁといった感じでカッパが両手でなだめてくる。すぐそばまでやってきたカッパは、まわしをこちらの手から取り上げると、身振り手振りでパンツを脱ぐように指示してきた。


「やっぱり脱がなきゃダメ?」


「かぱぱ」


 周囲に人が居ないのはわかっているが、一応辺りを見渡す。誰も居ないようなので、思い切ってパンツを脱ぐとカッパがこちらに手を伸ばしてきた。どうやらまわしを締めてくれるようだ。良いカッパなのかもしれない。


「へぇ〜、こうやるんだ」


「かぱ? かぱぁ」


「うーん、ちょっとキツイけど脱げても困るし大丈夫。ありがとう」


「かぱ!」


 まわしを締め終えたカッパはこちらの肩をポンポンと叩き、土俵に戻っていく。

 軽く身体を動かし、強化魔法で自身を強化していく。魔法に対しては物言いがつかなかったので、認められているようだ。


「よし、じゃあいくか」


 頑張れと応援の声をかけてくるゼロとシュナイダーに見守られながら、土俵に上がり立派な体格のカッパと対峙する。

 まわしの締め方を教えてくれる良いカッパだったが、遠慮はしない。相撲の技では負けるかもしれないが、上げまくったレベルと力の結晶のドーピングパワーで力押しだ。

 お互い位置について構えを取る。行司カッパの合図の声で戦いが始まった。


 合図と同時にお互いの張り手が頬に突き刺さる。岩石鎧がかかっているのにとんでもない衝撃だ。しかしこちらも成長しているのだ。これくらいではやられない。

 そこから激しい張り手の応酬をし、なんとかお互いのまわしに手をかけようと攻防を繰り広げる。

 身体全体で当たりにいき、なんとかカッパのまわしを掴むことに成功した。


(くそっ、重たい!)


 気持ちでは土俵の外まで投げ飛ばすくらいの勢いだったが、カッパの身体は地面に根を張ってるかのようにビクともしなかった。

 すかさずカッパもこちらのまわしに手をかけ、投げようとしてくる。渾身の力で踏ん張り、お互いの力が拮抗した。


(少しでも気を抜いたらやられる!)


 ゼロとシュナイダーの応援の声が、何処か遠く聞こえるほど集中力が高まっていく。相手の力を利用して体勢を崩そうとするが、カッパのテクニックはかなりのもので膠着状態が維持される。

 押してもダメなら引いてみろと言うが、実際中々上手くいかないものだ。


(これは組み合ったのは失敗だったか?)


 しかし今さら手を離すことも出来ない。その瞬間あっさりと投げられてお終いだ。カッパもカッパで決め手に欠けるようで、技を仕掛けようとしてくるのだが、こちらの方が若干力で上回っているようでなんとか踏ん張れている。

 押してもダメなら、さらに押してみるかとさらに力を込めてカッパを押してみる。つま先が固められた土俵にめり込み、カッパが少し後ろに下がった。

 少し焦った様子がカッパから伝わってくる。じわじわとカッパを土俵際まで押していき、ついに追い詰めた。


「フゥー」


「かぱぁ」


 もう周りの音など聞こえない、極限の状態だった。もう秋も半ばで季節は冬に差し掛かろうというのに、身体からは汗が吹き出し、真剣勝負の緊張に胸が張り裂けそうだ。

 そして決着は静かについた。ポンと肩を叩かれ我にかえると、カッパの足が土俵から外に出ていた。


(勝った?)


 土俵の中央に戻ると、行司カッパがこちらの勝ちを宣言をする。二体のカッパは負けたにもかかわらず、笑顔でドロップを残して消えていった。


 108番 行司カッパ アイテム1 スクロール(土俵召喚) アイテム2 行司の軍配


 109番 横綱カッパ 皿ノ川 アイテム1 スクロール(相撲) アイテム2 横綱のまわし アイテム3 ヨコヅナメダル


 ドロップを回収し土俵を降りると、スーっと土俵も消えていき元のデフォルメされたカッパの石像が現れた。ゼロとシュナイダーが寄ってきて祝福してくれる。


「ありがとう、なんとか勝てたよ」


 レベル上げをしておいて本当に良かった。感慨にふけっていると、シュナイダーに何か着ないと風邪ひくよ? と指摘されたので、ミニログハウスを取り出して汗を拭き服を着た。

 しかし危なかった、ミニログハウスに入ってから気づいたのだが二体のカッパが消えたせいか、借りていたまわしも消えて丸出しの状態だった。勝利の高揚で気づかなかった。平和な世界なら通報案件だったな。


 カッパたちのドロップは見事に相撲関連の物ばかりで、これでいつでも相撲が取れますよと言わんばかりだ。

 立派な体格のカッパはどうやら横綱だったようで、メダルも落としていった。どうりで強いわけだ。レベルを上げていなかったら負けていたかもしれない。

 相撲スキルを使用してみると相撲に関する知識が頭の中に流れ込んでくる。技なんかも自分が知らないものが色々あった。横綱のまわしは相撲を取る際に補正がかかるようで、土俵の上では大幅にステータスが上がるらしい。

 シュナイダーに相撲スキルが欲しいか聞いてみると、いらないとの答えが返ってきた。確かに相撲をとる機会もないか。

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