10話
「現在避難所では、戦うことのできる調達班が不足しています。民間人のあなたがたにこんなことを頼むのは、警察官として不徳の致すところですが、良ければお力を貸していただけませんか? 勿論、強制ではありません」
「すみません。自分はやらなければいけないことがあるので、ここを出ていくつもりなんです。知り合いの2人も居るので、また顔を出させてもらうとは思いますが」
「私は初級回復魔法が使えるので、怪我人の治療などのお仕事をさせていただきたいです」
「僕は調達班で頑張りたいと思います。ゴブリンたち相手なら、そに君と力を合わせてなんとかなりそうですし」
後藤警部は自分の返答に、残念そうな顔をして、危険だ。調達班以外の仕事もあるので思い直せ。と説得してきたかと思うと、宮田さんの答えには、回復魔法?! 重傷者が助かるかもしれない。と興奮し、木下さんの答えには、そに君? となりながらも、力を合わせて頑張りましょう!と握手していた。
宮田さんは重傷者がいるとのことで医務室にいき、さっそく治療に取り掛かるらしい。木下さんは今日はまず調達班の説明を聞き、仕事は明日からということになった。宮田さんの割り振られた部屋にいき、荷物を取り出し渡す。
「佐藤さん、本当にお世話になりました。どうか、くれぐれもお気を付けて、たまには顔を見せにきてくださいね」
「いのちをだいじに、とそに君も言っています。絶対また会いに来てくださいね! 」
「あはは、ありがとうございます。お2人も頑張ってください。そに君もありがとうね」
「これからどちらに行かれるんですか?」
「そうですねぇ、最後の連絡では地元の避難所に家族が避難できているようなので、ゴブリン以外のモンスターを探しつつ、そこを目指したいと思います。あっそうだ」
育てるのに時間はかかるだろうけど、少しでも食料の足しになればと思い、ホームセンターで手に入れた野菜の種を鞄に入れて木下さんに渡す。
「自分はもう行くので、木下さんから後藤警部に渡してください」
「分かりました」
それじゃあまたと、再会を約束して別れ、校門まで戻ってきた。先程案内してくれた門番の2人が声を掛けてくる。
「ん? さっきの兄ちゃんか、どうした」
「用事が済んだので、出発しようかと。また来ると思うのでその時はよろしくお願いします」
「出発って、1人で行かれるんですか?! 」
「家族が地元の避難所に居るので、そこを訪ねようかと」
「家族が心配なのはわかるが、大丈夫なのか? 」
「大丈夫です」
「無理に引き留めることもできませんが、危ないと思ったらすぐに引き返してくださいね」
「ありがとうございます、気をつけます」
そんなやりとりの後、門を開けてくれた2人に見送られながら避難所を後にした。
(さて、図鑑を埋めながら久しぶりに両親に顔を見せにいきますかね)
道中、ゴブリンたちを蹴散らしながら進む。最近では慣れてきたので棍棒以外の武器も使い、スキルの取得を狙っている。ナイフから短剣術は取れたので今はゴブリンソードを使い戦っていた。
スキルが取得できていないかと、ステータスを時折確認しながら歩いていると、公園の芝生にポツポツと初見のモンスターを見つけた。長い耳が後ろに垂れており、後ろ足がかなり大きい、ウサギ型のモンスターだ。ようやく見つけたゴブリン以外のモンスターに嬉しくなる。
(さて、どうやって倒すか。結晶やレベルアップでかなり身体能力は上がってるから大丈夫だとは思うけど、とりあえず初見の相手だし遠距離攻撃でいくか)
木に隠れながら、一番近くでぴょんぴょんと跳ねているウサギが止まったところで頭上に鉄骨を出す。するとウサギは、丸っこい可愛いらしい姿からは、想像もできない素早い動きで鉄骨を躱し、耳を立て辺りをキョロキョロと警戒している。鉄骨の落ちた音に反応した他のウサギたちが集まってきて、鉄骨を囲い込み威嚇している。鉄骨を蹴ったり、齧りだしたウサギたち。鉄骨を収納してみると、突然消えたことに驚き散っていく。
(警戒されてしまったか、自由落下じゃ素早い相手には駄目だな。めちゃくちゃデカイ物でも落とせば避ける前に下敷きにできそうだけど、いや待てよ……)
しばらく木陰から様子を窺っていると、ウサギたちの耳が後ろに垂れる。どうやら警戒がとけたみたいだ。今度は先程思いついた作戦を試してみる。まずはウサギの四方を囲むように自動販売機を出現させ、その中に鉄骨を落とす。モンスター図鑑を確認すると、無事成功したようだ。
6番 キラーラビット アイテム1 ウサギの毛皮 アイテム2 ウサギの肉
アイテム欄はどちらも白字になっているので、自動販売機と鉄骨とドロップ品の回収をする。気になるウサギの肉の説明を読むと、美味しいウサギの肉と書かれている。食べられるのか……?





